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「諒くん、食べよう。もう怖くないよ」
 届いたものを全てテーブルに並べていく。諒はもう不安げな様子はなく、うきうきと目を輝かせていた。
「いただきます」
 きちんと手を合わせている。躾をされているとは思えないから恐らくこれもテレビで覚えたものなのだろう。
 しかし挨拶を終えても諒は手を伸ばそうとはしない。見たこともない食べ物だからなのか、それとも――。
「諒くん、お皿を貸してごらん、取ってあげよう」
 手を伸ばせばおずおずと皿を渡される。やはり、まだ食べていいのか躊躇してしまうのだろう。
「ほら、ピザとポテト。あぁ、アイスは冷凍庫に入れておくから後で食べよう」
「ありがとう」
 席を立ち冷凍庫に片付ける。諒はきちんと食べ始めていた。
「どうだ」
「美味しい!」
「そうか、よかった」
 栄養はないだろうが、諒の心の栄養にはなるだろう。
「篠崎は食べないの」
「あぁ、諒くんが食べているところが可愛くてな。食べるよ、いただきます」
 ピザもポテトも次々となくなっていく。中身が子供であっても胃袋は大人なので沢山食べられるのだろう。
「あぁ、諒、飲みながら食べなさい」
 お茶を出してやると素直に受け取る。本当はジュースも買ったのだが、脂っぽい食事なのでお茶の方がいいだろうと思ったのだ。もし諒がジュースをねだるようなら出してやろうと思ったが、やはり諒は何も言わなかった。もしかしたらお茶でさえ珍しいのかもしれない。
「ん……」
「諒くん?おねむかな」
「んん……」
 満腹になったからか、眠そうにし始めた。
「ご馳走様してお布団行こうか」
「ん」
 ご馳走様と手を合わせ、うつらうつらしてる諒の手を洗わせてうがいだけさせる。
「ほら、ベッドに行こう」
「あ、や、てでぃ」
「あぁ、ほら連れてきてあげるから」
「や!」
 ごねるのは珍しい。可愛い。
「うん、じゃあ一緒にテディのところに行こう」
 手を繋いでソファのテディを迎えに行く。ぎゅう、と抱きしめる様子が可愛い。
「じゃあテディとお昼寝しような」
 寝転がった諒の身体とテディに布団を掛ける。何も言わずじっと見上げられた。
「ん?」
「……篠崎はおねむない?」
 遠回しなおねだり。いかに遠慮して生きてきたのか。
「……あぁ、少し眠いな。諒くん一緒に寝てくれるか」
「うん、テディも一緒に寝てあげる」
「ありがとう」
 ベッドに入り、肘で身体を支えるようにして諒を見下ろす。
「しのざき、起きても一緒?」
「一緒だよ。ずっと一緒」
 胸をとんとんと叩くとすっと眠る。眠りに落ちる早さも普段の諒とほとんど変わらない。
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