143 / 187
暗闇からの脱出
3
しおりを挟む
ユウトがその場を離れて程なくだった。
「う……ん」
微かなその声に、キャシーが素早く反応する。
「アキラちゃん! 気分はどう?」
「あれ……キャシーさん? ここ……どこ?」
アキラはまだはっきりしない目を、ゆっくりと巡らせた。
陽の光が眩しい――木の葉の間から高い青空が見える。
「外に出たのよ、もう大丈夫。ユウちゃんがアキラちゃんを助け出してくれたの」
「ユウト……?」
そういえば、自分はさっきまでユウトの背中にいたような気がする。
ユウトの鼓動とその温もりの中に、自分はずっと甘えていた。だが……
「あ……」
そんなぼんやりとした記憶から、アキラは突然我に返った。
目を見開いてその記憶の向こう側を辿る。
そこにユウトはいなかった筈。けれど……
「え、なに? まさか……ユウトはオレのこのカッコ、見たの……?」
自分の肩を抱いてガクガクと震え出す。
そして気付く。
いま自分が着せられているこの服、これは確かにユウトが着ていた物。
「じゃあ、オレがあいつにされたことも、ユウトは知ってる……? そんな、どうしよう……ねえ、どうしたらいいの!?」
アキラは完全にパニックになっていた。
「や、やだ! あ……あああああ!!」
「ア、アキラちゃん大丈夫よ! ユウちゃんは……」
取り乱すアキラを懸命に抑えるキャシーの腕が傷に触れた、
「……っ!」
「だ、大丈夫?」
痛みで少し冷静になり、アキラはふと顔を上げた。
陽の光を反射してきらきらと光る水面がアキラの目に入って来る。
「オレは汚れてる……嫌だこんな身体……早く、洗わなきゃ……」
その頃のユウトは重い足取りで車に向かっていた。
取り乱すアキラの声が聞こえたが、わざと耳を閉ざした。
アキラの心情を考えると、自分の胸も押し潰されそうになる。
この先アキラにどう接すればいいのか……正直このまま逃げ出したい気分だ。
「ち、ちょっとアキラちゃん! ダメ! 何する気なの!」
突然キャシーの慌てるような叫び声が聞こえて、ユウトは現実に引き戻された。
「アキラ……?」
そうだ、今のアキラはきっと何をしでかすか分からない。
自分が現実逃避をしている場合では無かった。
ユウトはバッと踵を返すと、元来た道を大急ぎで駆け戻って行った。
「う……ん」
微かなその声に、キャシーが素早く反応する。
「アキラちゃん! 気分はどう?」
「あれ……キャシーさん? ここ……どこ?」
アキラはまだはっきりしない目を、ゆっくりと巡らせた。
陽の光が眩しい――木の葉の間から高い青空が見える。
「外に出たのよ、もう大丈夫。ユウちゃんがアキラちゃんを助け出してくれたの」
「ユウト……?」
そういえば、自分はさっきまでユウトの背中にいたような気がする。
ユウトの鼓動とその温もりの中に、自分はずっと甘えていた。だが……
「あ……」
そんなぼんやりとした記憶から、アキラは突然我に返った。
目を見開いてその記憶の向こう側を辿る。
そこにユウトはいなかった筈。けれど……
「え、なに? まさか……ユウトはオレのこのカッコ、見たの……?」
自分の肩を抱いてガクガクと震え出す。
そして気付く。
いま自分が着せられているこの服、これは確かにユウトが着ていた物。
「じゃあ、オレがあいつにされたことも、ユウトは知ってる……? そんな、どうしよう……ねえ、どうしたらいいの!?」
アキラは完全にパニックになっていた。
「や、やだ! あ……あああああ!!」
「ア、アキラちゃん大丈夫よ! ユウちゃんは……」
取り乱すアキラを懸命に抑えるキャシーの腕が傷に触れた、
「……っ!」
「だ、大丈夫?」
痛みで少し冷静になり、アキラはふと顔を上げた。
陽の光を反射してきらきらと光る水面がアキラの目に入って来る。
「オレは汚れてる……嫌だこんな身体……早く、洗わなきゃ……」
その頃のユウトは重い足取りで車に向かっていた。
取り乱すアキラの声が聞こえたが、わざと耳を閉ざした。
アキラの心情を考えると、自分の胸も押し潰されそうになる。
この先アキラにどう接すればいいのか……正直このまま逃げ出したい気分だ。
「ち、ちょっとアキラちゃん! ダメ! 何する気なの!」
突然キャシーの慌てるような叫び声が聞こえて、ユウトは現実に引き戻された。
「アキラ……?」
そうだ、今のアキラはきっと何をしでかすか分からない。
自分が現実逃避をしている場合では無かった。
ユウトはバッと踵を返すと、元来た道を大急ぎで駆け戻って行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる