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暗闇からの脱出

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 ユウトがその場を離れて程なくだった。

「う……ん」

 微かなその声に、キャシーが素早く反応する。

「アキラちゃん! 気分はどう?」

「あれ……キャシーさん? ここ……どこ?」

 アキラはまだはっきりしない目を、ゆっくりと巡らせた。
 陽の光が眩しい――木の葉の間から高い青空が見える。

「外に出たのよ、もう大丈夫。ユウちゃんがアキラちゃんを助け出してくれたの」

「ユウト……?」

 そういえば、自分はさっきまでユウトの背中にいたような気がする。
 ユウトの鼓動とその温もりの中に、自分はずっと甘えていた。だが……

「あ……」

 そんなぼんやりとした記憶から、アキラは突然我に返った。
 目を見開いてその記憶の向こう側を辿る。
 そこにユウトはいなかった筈。けれど……

「え、なに? まさか……ユウトはオレのこのカッコ、見たの……?」

 自分の肩を抱いてガクガクと震え出す。
 そして気付く。
 いま自分が着せられているこの服、これは確かにユウトが着ていた物。

「じゃあ、オレがあいつにされたことも、ユウトは知ってる……? そんな、どうしよう……ねえ、どうしたらいいの!?」 

 アキラは完全にパニックになっていた。

「や、やだ! あ……あああああ!!」

「ア、アキラちゃん大丈夫よ! ユウちゃんは……」

 取り乱すアキラを懸命に抑えるキャシーの腕が傷に触れた、

「……っ!」

「だ、大丈夫?」

 痛みで少し冷静になり、アキラはふと顔を上げた。
 陽の光を反射してきらきらと光る水面がアキラの目に入って来る。

「オレは汚れてる……嫌だこんな身体……早く、洗わなきゃ……」


 その頃のユウトは重い足取りで車に向かっていた。

 取り乱すアキラの声が聞こえたが、わざと耳を閉ざした。
 アキラの心情を考えると、自分の胸も押し潰されそうになる。
 この先アキラにどう接すればいいのか……正直このまま逃げ出したい気分だ。


「ち、ちょっとアキラちゃん! ダメ! 何する気なの!」

 突然キャシーの慌てるような叫び声が聞こえて、ユウトは現実に引き戻された。

「アキラ……?」

 そうだ、今のアキラはきっと何をしでかすか分からない。
 自分が現実逃避をしている場合では無かった。

 ユウトはバッと踵を返すと、元来た道を大急ぎで駆け戻って行った。 
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