転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。

皐月めい

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没落寸前

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今世での私の名前は、ミア・オルブライトという。

 伯爵家の一人娘に生まれて蝶よ花よと育てられたラッキーガール……だったけれど、先日父が亡くなった。

 不運は重なるものだ。
 なんとそれまで上手くいっていた父の事業が一気に悪化し破綻した。我がオルブライト伯爵家にはとんでもない金額の借金が残り、伯爵位を継いだ母は重なる心労に倒れてしまった。

 元々我が伯爵家は税収も少ない。母の生家とは折り合いが悪く、援助も頼めないそうだ。
 それゆえ借金を返せる可能性は現時点ではゼロに近い。この屋敷を売り払えば返せるが、そうなれば貴族としての品位を保つこともできないため、爵位は王家に返上となる。 

 そんなわけで一年後に結婚が予定されていたアビントン伯爵家の次男、オークリー様との婚約は当然ながら破棄となった。

 幸いなことに借金先は我が家に同情的で、返済は一年後まで待つと約束してくれた。多分その間に行く当てを見つけなさいと、そういうことなのだろうと思う。

 というわけで、今は没落の準備をしている。
 装飾品やドレスは一部を除いて全部売り、使用人はほぼ全員退職金を渡して解雇している。ありとあらゆる伝手を頼って就職先は斡旋済みだ。

 今我が家に残っているのは執事のセバスチャンと、ギルバートだけである。

 もう数十年我が家に勤めている老齢のセバスチャンは、最後まで我が家に勤めたあとは引退するらしい。母が倒れた今、今の私では把握しきれていない伯爵の仕事の補佐もしてくれている。

 ギルバートには、頑張って見つけてきたとびきり良い騎士団への就職を斡旋したにも関わらず『私はミア・オルブライト様に生涯忠誠を誓っていますので』の一点張りだ。
 解雇を告げても頑として頷かず、最終的には言い争いにまで発展して、結局渋々私が折れた。

 一年後、私が平民になってオルブライトの姓をなくしてもついていくと言い出しかねずにヒヤヒヤしている。平民を守る騎士など後にも先にも聞いたことがない。
 きっと私たち母娘が心配なのだろう。セバスチャンもギルバートも、いい奴すぎて涙が出てくる。

 ……貧乏でもいいから、爵位さえあれば、迷惑をかけずにすむのにな。
 だけどそんな簡単に億万長者になることなんて、できるわけがない。

 しかしながら転機は、初めて訪れた活気あふれる市場で訪れた。
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