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ズボラには修羅の国
しおりを挟む「プリンは売ってるかしら? 固めの!」
「甘味は……売ってないかと」
「……市場なのに?」
「市場だからです」
まじか。市場には何でもあるものだと思ってた。
生まれて初めて訪れた市場の活気に興奮しながら、今日私はギルバートと共にあちこちを探索していた。ちなみにギルバートもどこかの貴族の三男で、市場に来たことなんてない筈なのに落ち着いてるし物知りだ。
なんだかんだ解雇した使用人たちが、「ちょっと忘れ物を」「近くに用事が」「恋模様が気になって」などと色んな理由をつけては差し入れなんかをしてくれていて、我が屋敷の食料事情は意外と良かったりするのだけれど、いつまでも彼女たちの好意に甘えてはならぬ。自分で衣食住を整えなければ。
そう思ってまずは買い物のため市場にきた私は、回っている内にだんだんと、この世界の過酷さを知り始めた。
「ねえギルバート。巨大な塊肉と、大きなまるごと野菜しかないのだけど」
「ええ。あれを自分で切って料理します。食べきれない分は保存用に塩漬けにするそうですよ」
衝撃だった。
人の顔くらい巨大な塊肉を、切るところから料理が始まる……?
あの丸々とした大きな野菜を食べるために、切って皮を剥いて下茹でをして水にさらしてから調理する……?
今世では箱入り娘、前世はコンビニとデリバリーとテイクアウトと外食しか勝たん精神で生き抜いていた私にとって、その言葉はあまりに衝撃だった。
料理のハードル高ぁ……。
やる気がしゅるしゅると音を立てて消えていく。
私は今後、コンビニも宅食もウーバーもないこの世界で平民として生きていけるのだろうか……。いや、生きて行かねばならないけれども……。
せめて弁当屋があれば良いのに。毎日行くのに。
そこまで思った時に「あ」と閃いた。
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