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1章 投げる冒険者

5話 父さんが帰ってきた

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 次の日、朝日と共に父は帰ってきた。黒く濁った返り血と、あちこち欠けた鎧を身に纏って。

「ファルコ、良い子にしてたか?」

「うん!それよりもお父さん、今回はどんな魔物を倒してきたの!?」

 まだ肉体的に幼いからか、俺はまだ村の外からは出してもらえない。更に、ここら辺は魔物も生息していない。故に魔物の情報を得るには父と本しか方法が無いのだ。

 俺がこの世界に生まれ落ちた理由、しっかりと理解している。魔族との戦いを終わらせる事。魔族は、多くの魔物を使役している。それ即ち、魔物を退治は魔族の勢いを抑えるというわけだ。

「リザードマンという魔物・・・いや、亜人と言った方がいいかな?槍を使う種族だったが、矛先が届く前に俺の剣で喉を掻っ切ってやったさ」

「すごーい!!」

 父は、剣と盾を駆使して戦う剣士。みたことはないけれども、その腕は確からしく、若い頃は王国騎士になる話もおったのだが素行不良で話が流れてしまったらしい。

 そんな、近接戦士の間に生まれた俺は、果たしてどちらの武器に適しているのだろうか。幼いという理由で持たせて貰っていないけれども、浪漫的に考えるなら剣が良いなと思ってる。

「イーグル、朝ごはんにするから、まずその鎧を脱いできちゃって。服にも血が付いてるなら服も取り替えてきて」

「水浴びを先にしたいんだが、駄目か?」

「冷めたスープを飲みたいならね。季節関係なく、暖かいスープが好きでしょう」

「冷たいスープはスープじゃない。仕方ないな、鎧脱いでくる」

 毎日家に帰ってくるわけではない故か、両親の仲はとても良好。夫婦というのは、時間経過と共に関係が冷めていくのだが、2人は今でもそれなりに熱々だ。

 いつものようにパンとスープの朝食を済ませると、父親の武器と防具のメンテナンスを手伝うことにする。冒険者になる事はこの世界を救う為に必須事項。その為にも、若い頃から技術を身につけておきたい。

「うわぁ・・・べっとり付いてるね。流石は近接系・・・」

「血への耐性っていうのは遺伝するのか?6歳にしては驚きも動揺もしないな」

「分かんないや」

「だろうな」

 いや、理解してる。それは恐らく俺が人生2周目だからだ。前世で嫌という程に血は見てきたし。なんなら、最期は血を流して死んだし。

「あれ?手袋が無いな・・・ファルコ、知ってるか?」

「父さん、あれじゃないかな・・・」

 ファルコが指差す先。そこには、血に濡れた手袋を加えた血のように赤い目と雪のように白い毛で覆われた小さなウサギ。

 魔物図鑑で見た事がある。あのウサギは人の血を好んで飲むブラッドウサギという魔物だ。

 ブラッドウサギは俺達にバレた事に気づくと、慌てて森の中へと逃げていった。

「待て!!」

「あ、おい!ファルコ!!お前が待ちなさい!!」

 立っていた俺は、すぐさまブラッドウサギを追いかけた。
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