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乙女ゲーム本編突入です。
第81話:愛の天使
しおりを挟む突然。そう、なんの前触れもなく突然、鳴った。
いつも通り、バカ殿下とチョコアのわざとらしいイチャイチャを食堂で見せられて、若干イライラしながら図書室のいつもの席に4人で座った。
その瞬間である。
**ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<設定ページ一部閲覧可能になりました>
え?今?
今日、あの2人、何か特別な事してた?
同じく音が聞こえたであろうミリフィールが固まっていた。
「どうしたの?2人とも」
様子のおかしい私達を見て、サラが声を潜めて聞いてくる。
何となくの予想はついているようだ。
「池に落ちてから2ヶ月……3ヶ月近いか?」
ジェラールがポツリと呟く。
それを聞いて、ミリフィールが立ち上がって叫ぶ。
「それよ!!」
珍しく貴族令嬢である事を忘れた行動に、司書さんから「静かに!」と怒られてた。
「早く、早く!」
見えないくせに、人を急かすサラ。
私の手の中には『甘王公式本』。
パラパラとページをめくり、目的のイベントページを見開いて机に置いた。
「読むね」
私の言葉に、3人が頷く。
「水のあまりの冷たさに、一瞬でショコラの身体は硬直する。
水に頭の天辺まで浸かる。
3人の人影が見えた。
嫉妬に狂った女性に、ショコラは池に突き落とされた」
ミリフィールがうんうんと頷く。
おそらくゲームを思い出しているのだろう。
イラストは、水中で手を伸ばしている可憐なショコラ。この子なら、庇護欲を誘う。
「あら、誰が犯人かは書いてないのね」
サラが小首を傾げる。
「そうなのよね。犯人だと確定してないのに、悪役令嬢としてシフォンティーヌが婚約破棄されるのよ」
なんですと!?
とりあえず続きを読もう。
「この時に、助けてくれるのは好感度やルートに関係なく全てビタール先生になります。
その後、介抱してくれるのが、その時一番好感度が高い攻略者だよ!」
うわ、ジェラールの顔怖っ!
実際にはビゼタールは連絡係くらいしかしてないんだから、別に良いじゃん。
もう、嫉妬しないの!
ペラリとページを捲ると、マカディーアルートのページになる。
前にミリフィールが説明してくれたように、ボカシと淡いピンク色のスチルイラストがババーンと載っていた。
でも、ここまでなら今まで待たなくても良かったじゃん?
んんんんん?
ミリフィールを見る。
目が合うと、頷かれた。
「何、2人だけで納得してるのよ。私達にも教えてよ」
サラが焦れて机を指でトントンする。
ジェラールも身を乗り出して来た。
大きく息を吸い込んで、でも声は潜める。
「お互いの大切さを知り、愛を確かめ合った2人。
そんな2人は、幸せの愛の天使を授かる」
私の台詞に、こちらの世界の2人は首を傾げる。
意味が解らないらしい。
「完全に着床したのね。もしくは、安定期に入った?
私達のいた国では、赤ちゃんの事を『天使』って比喩するのよ」
ミリフィールがいつものように、指を1本立ててみせた。
********
いつものように食堂へと皆で向かっていると、後ろから突然腕を掴まれた。
「痛っ!」
思わず令嬢らしからぬ声が出る。
振り返ると、なぜかドヤ顔のバカ殿下がいた。
「お前は俺の婚約者なんだから、これからは俺と昼を食え」
意味が解りません。
「サプ……チョコア様とご一緒にお食べください」
バカ殿下の手を振り払おうとするが、予想以上にガッツリ掴まれている。
「チョコアは、今日から休学してる」
あら、あのイベント解放から2ヶ月か……そろそろ腹が目立ち始めたか?
「そうなのですね。復習して、来年からやり直すのもチョコア様には良いかもしれませんね」
本当の理由を知っている事など噯気にも出さず、笑顔で告げる。
「チョコアを馬鹿にするな。どうしてお前はそうなんだ。
チョコアに嫉妬しているのか?
かまって欲しいなら、素直に言えば俺も少しは考えてやるぞ」
はぁ?ちょっと、誰か、この馬鹿を黙らせてください。
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