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1:アメリア
しおりを挟む「貴女は公爵家の娘ではありますが、その身は王家の物です。その意味がわかりますね?」
いつものように公爵家へとやって来た教育係が、幼いアメリアへと冷たい声で告げる。
「はい。私は王妃になるために生まれてきました。そのための努力は惜しみません」
いつものように言わされる言葉。
しかし毎日、毎日、物心ついてからずっと言わされ続けると、それが自分の意志だと思い込んでいた。
「いいですか?王妃は国の象徴です。貴女が失敗すれば、それは国の恥になるのです」
「はい。解っております」
「それでは勉強を始めましょう」
洗脳のように毎日行われる、授業の前の儀式。
アメリアは、不満や苦痛を覚える事無く、王妃教育を受けていた。
何せそれは当たり前の事だから。
友達と遊ぶ事が無くても、友達などいた事が無いので淋しくなど無い。
教えられた事が出来ない時に叩かれる事も、当たり前の事だから辛くは無い。
母親に抱きしめられた事が無くても、それがおかしな事だと知らない。
父親に話し掛けられた事が殆ど無くても、それが普通なのである。
使用人は、アメリアに声を掛ける事を禁止されている。
「失礼いたします」
アメリアがメイドから掛けられる声はそれだけである。
アメリアは、常に微笑みを浮かべている。
なぜなら、それが当たり前だから。
嬉しい、悲しい、辛い、楽しい、悔しい。
何も感じないのだ。
感情というのは、生まれながらに持っているものではない。
周りに刺激され、成長する過程で培うものなのだ。
王妃になるには、余計な感情は無い方が良い。
生まれた瞬間に王妃になる事が決まったアメリアは、完璧な王妃になる為の教育を施された。
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