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2:第一王子、フーリー
しおりを挟む「初めまして。アメリアと申します」
第一王子との顔合わせの時、アメリアは完璧なカーテシーで挨拶をした。
柔らかな微笑みを浮かべているアメリアを見て、第一王子のフーリーは頬を染める。
「お前、公爵家の娘だろ?何で名乗らない」
相手に見惚れた事が悔しかったのか、フーリーはアメリアが名前しか言わなかった事を責めた。
人の失敗を論い、マウントを取る気なのだ。
「ワタクシは、公爵家令嬢であり、王家の物です。公爵家を名乗らないよう言われております」
アメリアが教育係から言われた通りに答える。
アメリアが公爵家に里心がつかないように、王妃教育が始まった時には公爵家の名を捨てさせていた。
アメリアは、王家に嫁ぐまではただの「アメリア」なのである。
「まだ婚約も成立していないのに、王家の者だと!?ふざけるな!」
フーリーは目の前のアメリアを睨みつけた。
王子達には婚約者がまだ居ない。
第一王子と第二王子が同い年で、どちらを立太子するのか決めかねていたからだ。
第一王子は正妃の子であり、第二王子は側妃の子だった。
正妃は隣国の王女だったが、小国の為に政治的利点は少ない。
側妃は国内の侯爵家令嬢だったが、その侯爵家が元々力のある家だった。
どちら選んでも良い代わりに、どちらも決め手に欠けた。
その為に、12歳まで婚約が先延ばしになってしまったのだ。
さすがにこれ以上は国内に混乱を来すと、年功序列で一応第一王子が婚約者に決まった。
しかし、第二王子に婚約者は居ない。
「アメリア嬢を大切にしなさい」
正妃も側妃も、自分の息子にそう言い聞かせた。
結婚するまでは、どちらが王太子になってもおかしくないのだ。
しかし第一王子のフーリーは、勘違いをしていた。
王太子の自分の婚約者がアメリアなのだと。
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