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25a:無くしたものは愛か信頼か

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 夜。ミアが邸に一人でおり、不安で眠れないでいると、玄関の扉を激しく叩く音が聞こえてきた。
 何か叫んでいるが、一人暮らしの女性の家を訪ねる時間では無い。
 一人暮らしだと知らないとしても、他人の屋敷を訪ねるには、非常識な時間だった。

 ミアはベッドで頭からスッポリと布団を被り、ガタガタと震えていた。
「なんで、なんで私ばかりがこんな目に!」
 人の話を聞かず、子爵邸の準備をしていなかったのは、全てミア自身である。

 屋敷の掃除をして住めるようにし、1ヶ月とはいえ使用人も手配してくれたのは、アンダーソン公爵家の厚意である。
 その事にも気付かず、馬車の中で反省したのにやはり根本は変わらない。

 与えられて当たり前、それがミアだった。



 朝早く、いつの間にか寝てしまっていたミアは、メイドに起こされた。
 まだ太陽も完全に昇りきっていない時間である。
「何よ!昨夜は怖くて眠れなかったのに!」
 寝起きのミアは、不機嫌さを隠そうともせずメイドに当たり散らす。

「おはようございます。婚約者の方が呼んでいらっしゃいます」
 ミアの怒りはサラリと無視し、メイドはミアを起こした理由を告げる。

「婚約者?」
「はい。出勤して参りましたら、玄関扉の前で寝ていらっしゃいました」
 昨夜の音の理由が判り、ホッとしたミアは服を着替えて階下へ降りた。


「フーリー!」
 応接室が使えないので居間に通されたフーリーを見て、ミアは笑顔を浮かべる。
 しかしミアを見たフーリーは、怒りの形相で近寄って来て、何も言わずにミアの頬を殴った。

 
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