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26a:信じていたものが壊れた時
しおりを挟むフーリーに殴られたミアは、勢いよく床に倒れた。
信じられない思いで、殴ったフーリーを見上げる。
「お前!俺を外で寝かせておきながら、自分はベッドで寝ていたのか!?」
フーリーは肩で息をするほど興奮し、ミアを怒鳴りつける。
「夜中に訪ねて来る方が非常識じゃない!」
ミアも負けじと怒鳴り返す。
昨夜の恐怖と、寝不足と、今殴られた事による怒りが合わさっていた。
「色々やる事があったのだ!」
「色々?それはおねえ様に復縁を迫って、王族に戻すように懇願する事?」
ミアは当てずっぽうで言ったのだが、どうやら図星だったようで、フーリーは悔しそうに顔を背けた。
あれだけハッキリ言われたのに、まだ諦めずに縋ったのか。
ミアの中で、何かが崩れて消えていった。
「応接室の荷物、何とかしてくださいね」
ミアはメイドの手を借り立ち上がると、居間を出た。
「アンダーソン子爵、よろしいですか?」
廊下に出たミアは、執事に声を掛けられ足を止めた。
執事に連れられ執務室へ来たミアは、机の上に積み上がっている紙に気付いた。
領地が無くても、やはり当主になると仕事があるのか……と机に近付く。
「そちらは、今までの領収書になります」
「え?」
ミアは慌てて1番上の紙を手に取る。
『ドレス 1着 色/ピンク 型/ベルライン ピンクトルマリンを首元に使用』
1番最近、謝恩パーティーに着る為に、義母に買って貰ったはずの物だった。
実際にはドレスはフーリーから贈られた為、一度も袖を通していない。
ミアは金額を見て驚いた。
このお金が手元にあれば、1年は働かずに済んだ事だろう。
「こちらが収支報告書、所謂帳簿です。本日、財産管理人から届きました」
引ったくるように受け取り、中身を確認する。
両親が残してくれた遺産が1番最初に書いてあり、そこから段々と金額が減っていく。
屋敷の維持費や修繕費も引かれていたが、そんな物は微々たる金額だった。
殆どがミアのドレスと宝飾品である。
フーリーとのデート時、公爵家への請求とした食事代も、しっかりと引かれていた。
「こんな金額じゃ、この先生きていけない」
残高を見て、ミアは今までで1番本気で、公爵家での2年を後悔した。
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