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第六章 【二つの世界】
6-1 変化1
しおりを挟む「おい、その荷物はこっちに……エレン何してるんだ!?」
「え_?何って?見ての通りよ……荷物運ぶの手伝ってるんじゃないの」
「エレーナさん……もう一人の身体じゃないんですから……お腹の子供のためにもジッとしててください!」
「そうは言うけどね……じっとしてるのって結構辛いんだよ。オリーブ!」
「それは判りますが、エレーナさん……あ!いつまでも、昔のままではいけませんね……申し訳ありませんエレーナ”様”」
「ちょっとぉ!そういうの止めてっていってるでしょ?今までどおりで……ね?お願い、オリーブ」
「……そういうな、エレーナ。オリーブはお前の新しい立場を慮ったうえでの発言だ。お前も母親からその役職を受け継いだのだろ?……であれば、それらしく振舞うことは決して悪いことではない。むしろ、統率をとるためには必要なことだぞ。エレーナ・フリーマス……っと、二人は籍を入れたのだったな。すまなかったな、”エレーナ・カミュ”」
「ステイビル王子……いえ、ステイビル様。私ごときに詫びる必要はありません。アルとの結婚式のことだって……ステイビル様がほとんど出してくれたというじゃないですか!」
「そうですよ……ステイビル様……我々はあなたを、王の座に導くことは出来ませんでした。今回のエレーナの大臣の件にしても、キャスメル王への働きかけをしていただいたと聞いております。そこまでしていただくことは……」
「それは違うぞ、アルベルト。今回の大臣の件は、キャスメル王からエレーナへの正当な評価だ。それに……私の要望は受け入れられてはいないからな」
「ステイビル様……」
「で……でも!?ソイランドも立派な王国の重要な拠点ですし!……そ、それにエレーナ様のお母様も、王宮精霊使いの中に入れて頂いたのもキャスメル王とクリエ王女の……」
「……それが、”あいつ”からの恩情とでもいうのか?オリーブよ。あれはただの人質だ!エレーナが反逆を起こさせないためのな!アルベルトにしてもそうだろ?同じ王宮騎士団の資格を受けながら、アリルビートと……”あの”シュクルスでさえ、王宮騎士団として採用されたのだぞ!ソルベティも、精霊騎士として……あれは私の……ゴホッ!ゴホッ!」
「ステイビル様!……瘴気に侵されたお身体に触りますので、気をお静めください」
「ありがとうございます、ステイビル様……いえ、いまはステイビル王子と呼ばせてください。私たちはあなたと一緒に旅をすることができ、本当に幸せでした」
「そうです、王子。王選の結果はキャスメル様の方に軍配があがりましたが、あの時間は私たちにとってはかけがえのないものです。これはエレーナとの間に生まれてくる子にも、話して聞かせたいと思っております」
「やめてくれ……アルベルト。私は……兄弟喧嘩に負けたのだ。あいつがあんなにも俺を恨んでいたなんて……思ってもみなかった」
「ステイビル王子……」
「すまない……お前たちの旅立ちの時にこんなに湿った話になってしまったことを詫びよう。それではエレーナもアルベルトも元気でな。元気な子が生まれることを願っているぞ」
「ステイビル様も……お元気で。王家ではなくなったのですから、いつでもいらっしゃて来てください。我が子の顔もぜひ見に来てください」
「あぁ、エレーナ……きっと、そうさせてもらおう。では、私たちも行くか……オリーブ」
「はい、ステイビル様」
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