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第六章 【二つの世界】
6-4 変化4
しおりを挟むステイビルはそこから、体調を崩していくことになる。
その原因は何なのかは、誰もわからずその症状を改善させることは誰もできなかった。
抵抗力をなくした身体は、さらにステイビルの身体を弱らせていく。
そして、その原因が瘴気によるものだと判ったのは、ステイビルの背中にそのシミが浮かび上がったときだった。
「私のせいなのだ……私が行かなければ……」
この言葉も、オリーブは幾度となく聞いていた。
夜眠っているとき、夢の中で同じことをつぶやいていたのだろう。
その寝言を聞くたびに、オリーブの胸は締め付けられるように痛んだ。
だからこそ、エレーナたちのことが一段落付いたこのタイミングで、ステイビルはグラキースの山を目指すと口にした。
初めは一人で向かうと言ったが、オリーブが止めて無理やりにでもついていくとステイビルに食い下がった。
ステイビル自身も、単独で旅をするにはこの身体では不安があった。
それはたどり着くこともできないのではないかという不安……
身体を蝕んでいく瘴気が皮膚表面に現れ始めてから、黒い不気味なシミを作っていく。
次第に大きさを増していき、その度に自分の身体が言うことを聞かなくなっていく気がする。
ステイビルはオリーブの申し出を受けて、協力してもらうことにした。
報酬は出せないが、旅の途中の費用は王家を出ていく際に与えられた王国金貨二袋から出していくことを約束した。
枚数までは数えていないが、普通の国民が生活するうえで他に仕事をしながら報酬を得ているのであれば、一生困らない金額であろう。
もしも、旅の途中でこの命が絶えた時……ステイビルは僅かばかりのお詫びにこの袋をオリーブに渡してもらう気でいた。
それがせめてもの、自分に対してオリーブの気持ちに応えることができないお詫びとして……
結局、ラヴィーネでエレーナを見送ってから二日経ったが、目的地に全く近付くことができなかった。
ステイビルの容体の波も悪い方向に沈む時間が長くなってきている。
背中に出ていた瘴気のシミも既に前に回ってきており、そろそろ腕や足に出てきて人の目に付く位置まで到達しそうだった。
オリーブは、体調を整えることが重要と考えモイスティアの町で休むことを提案した。
ステイビルは、その提案を飲み込めないような雰囲気があったが、その原因も自分にあることを理解し承諾した。
「……ふーん。ここがモイスティアってとこ?」
「そう、その裏道を出たところに布を扱っているお店があるはずだから、そこで調達しようっか」
「調達って……盗むの?アタシこの世界のお金持ってないよ?」
「大丈夫!王選はお給料が出てたから、少しは手持ちがあるよ。お金が変わって無ければだけど」
「なら、早く行こうよ。こんなボロボロ格好じゃ、こんなきれいな街の表通り歩くと目立ちすぎるからさ」
二人は、なるべく人目に付かない様に店の間の細い場所や、裏通りを通りながらようやく店の前に辿り着くことができた。
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