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第六章 【二つの世界】
6-76 投獄
しおりを挟む薄暗い階段の中、左右交互の壁に付けられたろうそくだけの灯りを頼りに進んでいく。
壁も階段も、とても歩きやすいようにその表面は整えられている。
階段も通路の壁も、外から岩を持ち込んだのではなく、この地面をそのまま生かしたような造りになっていた。
きっとこれは、この場所を作った時代の精霊使いの力によるものだとハルナは判断した。
そんなことを考えているうちに、階段の一番下の場所までたどり着いた。
警備兵は壺の中にある木の棒を一本引き抜いた。その先には布がまかれており、その布は壺の中の油がしみこませてあった。
その先を壁に刺さっているろうそくの炎に近付けると、火は導かれるままに布の油の方に伝わっていった。
火の点いた松明を後ろのサヤに渡し、もう一本の松明を抜き取り同じようにして火を点し、次はハルナに手渡した。
「……よし、進むぞ」
その言葉と共に、警備兵は前に振り向いて進み始めた。
牢屋が左右に並んではいるが、その配置は珍しい配置をしていた。
通常ならば、二つの部屋が向かい合って並んでいる配置を想像するが、ここはひとつの部屋の向かい側は壁となっていた。
中からみれば、斜め前の様子は見ることができないのだろうし、部屋と部屋の間隔をあけていた。
きっとこれは、収監されている亜人たちがそれぞれの目の前のや隣の者と無駄な話をさせないためであると判断した。
(……あれ?)
ハルナは口には出さなかったが、この状況に違和感をおぼえる。
牢屋の中には誰も入っていない空間が多く、入っていたとしても暗闇と横になった姿で生きているのかそうでないのかも見分けがつかない程だった。
「お前たちが入るところは……こことここだ」
警備兵はそう言って、地下道の一番端にある同じ側面の二部屋に入るように指示した。
「……」
「何をしている?早く二人をそれぞれの牢屋にいれるんだ」
「え?……あ、はい!?」
ハルナが何もせず、警備
兵が行動を起こすのを待っていると、怒ったように警備兵はハルナとサヤの二人にそれぞれの場所にいれるように指示した。
まさか”自分たちも一緒に閉じ込められるのではないか”と一瞬心配したが、隠したローブの袖の中で石の粒を創り出せることを確認し、いざとなれば精霊の力で抜け出せばいいと安心してイナを牢屋の中に連れて入った。
――ガシャン……カチャ
最後にデイムを入れたサヤの牢屋の扉が閉じられ、警備兵は鍵をかけ中の二人に話しかける。
「お前たちは、今後取り調べを受けてもらう。我々に協力すると誓うならば、悪いようにはしない……だが、お前たちの同僚を裏切ることになるのも確かだ。どちらがいいか、まずはゆっくりとこの中で考えるがいい」
そう言って、再び地上に向かってハルナたちを連れて歩き始めた。
後で聞けば、二人がそれぞれ牢屋に入れてもらったのは、警備兵では太刀打ちできない能力を持つ者がいるためだという。
実際に捕まえて連れてきた者たちは、それなりの実力者が多いため、ここで暴れたとしても取り押さえることができる。
そのため、警備兵ではなく連れてきた本人たちによって入れてもらうようになっているとのことだった。
「では……報酬だな。この手形を持って城内の受付に渡すがいい。そうすれば、報酬を準備してくれるだろうよ」
「え!?……えぇ、ありがとうございます!」
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