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第六章 【二つの世界】
6-226 遠くの縁
しおりを挟む「カステオ……それはやめてくれ。それをされると、これから先の話がし辛くなるじゃないか。さ、顔を上げてくれ」
その声に反応しをして、カステオは嬉しそうに顔を上げる。
「ということは……ステイビル、お前!」
「ちょっと待ってくれ!そういう意味ではない!!」
「……ではどういう意味なのだ?」
煮え切らず、不機嫌そうなステイビルに苛立ちすら感じている。
隣で見ていたエレーナも、はっきりと言えばいいのにと思っているが、公式な場ではいとはいえ今は当事者同士が話す時間だと判断し口を閉じていた。
「私が言いたいのは、既に”決まった相手がいる”ということだ!」
「そのことなのだが……」
カステオはステイビルから一旦視線を外し、キャスメルのことを確認し、再びステイビルを視界の中に戻す。
「ハルナは……本当にお前のことを愛しているのか?」
「カステオっ!!お前!?」
ステイビルの顔は真っ赤に染まり、テーブルを両手で叩きつけた勢いで席を立つ。
その動作により、座っていた椅子は後ろへと倒れ、もう少しで後ろにいたエレーナに当たるところだった。
「まぁ待て!?最後まで話を聞け!!お前に対して失礼なことを言っていることも充分承知しているつもりだ。ステイビル……それとキャスメル。私たちは、”遠くで血がつながっている”だろう?」
「カステオ……知っていたのか!?」
ステイビルは驚いた、この話はモイスの加護を受けた際に聞いていたが、西の王国側にも残されていたという。
その話を聞き、ステイビルの怒りの感情はどこかに消えてしまっていた。
エレーナがそっと椅子を戻し、ステイビルに席付くように促し、ステイビルもそのまま腰を下ろした。
「もちろんだとも……エレーナ。そういう意味だと、お前もだ……な?」
「……」
カステオの言葉に、エレーナは反応を見せず、ただ黙ったまま視線を受け止めていた。
その視線を辛く感じていると判断したステイビルは、自分を取り戻しカステオに返した。
「それで、その血縁という話が、一体どうというのだ?」
「そうだったな……すまない。そういう意味では近い者として、腹を割って話がしたい」
「わかった……それで、お前の言いたいこととは、一体なんだったんだ?」
「最終的なことから言おう……先ほども言ったが、ニーナをお前の傍においてくれ。ここまで来たら分からないはずもないだろ?ニーナはお前と一緒になりたいのだ。だが、”今のまま”のお前はそれを断るだろう?だから、ハルナのことを聞いたのだ。」
「それは……は、ハルナが私との結婚を望んでいなかったならば……に、ニーナと一緒になれと?」
「それも違う。正直なところ、ハルナと一緒になろうが、そうでなかろうが俺には一切関係がない。ただ、ニーナを幸せにして欲しい……ニーナをお前の傍に置いておいて欲しいそれだけだ」
「だ、だが!?ニーナ殿は、ハルナと一緒で……も、いいというのか?」
「それはもう確認済みだ……ステイビル。ハルナと一緒でも、正妻でなくともいいと言っているのだ、ニーナは」
そう言われ、ステイビルはその先の言葉を失ってしまった。
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