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第六章 【二つの世界】
6-255 資源
しおりを挟む『あなたへこの世界を救って頂きたいのですが、手を貸していただけませんか?』
「また、世界が……」
”こんなにピンチが多く訪れる世界って……”と、ハルナの頭の中に浮かんできた。
だが、それはこの場で口にしてはいけない言葉であると、ハルナはぐっとその言葉を飲み込んだ。
『まぁ……あなたが今飲み込んだ言葉の気持ちもわかります。ですが、あなた以外にこの世界を救えないというのも事実なのです』
「それは一体……なぜなのですか?」
ステイビルはハルナに変わり、創造主に質問を投げかける。
自分が何かをできるとは思わないが、ハルナ一人に責任を背負わせるわけには行かないと、ステイビルは何とか絡んでいこうとした。
『そうね……ステイビル。あなた方は、この世界の人物であり、一つの”資源”なのです』
「資源……」
「私たちが?」
資源と言う言葉に違和感を感じるステイビルとエレーナは、素直にその言葉に対して不快感を示した。
『気に障ったかしら?でも、それは間違いではないので、否定や訂正はしません。ですが、あなた方がハルナに変わり、直接この問題に介入することはできないのです』
「あの……その理由は?」
創造者からはっきりと、ステイビルたちでは世界の崩壊を阻止する人員としては役に立たないと言われて落ち込んでいる。
その空気を感じ、ハルナはそのことに対して主役となる人物として、その理由を問い質した。
『その理由は、先ほどお伝えした通り、”この世界に生きている生き物”たちは、全てこの世界の資源なのです。それは、今回の世界の崩壊につながる理由となります……』
そうして創造者は、ハルナたちに世界が崩壊する理由を告げた。
この世界は創造者が創った世界であり、この世界は複数のルールによって造られている。
精霊の四元素や、魔素、自然の営み……など、ある規定に基づいてこの世界のありとあらゆる生き物たちは生活をしていた。
しかし、それらの素材は全て無限にあるかのように思えるが、その量は有限だった。
一つの世界という箱庭の中に百の量の素材で、全てが構築されているとする。
今までは、その資源という素材が枯渇することなど考えられなかった。
例えば元素で作り上げた物質も、元素に還してしまえば、精霊の力の元なる元素が増えていく。
魔素や草木、生き物たちの数も同様にして、自然のサイクルの中で回されていっていた。
しかし、ここで問題が発生した。
それは、ハルナが体験したもう一つの世界だった。
創造者の一人が、この世界の情報をもとに、全く別な世界を用意してしまった。
それにより、この世界で使える資源――いくぶんかは余裕がある―――が、そちらの世界と二つに分かれてしまっていたため、資源がこのままでは枯渇してしまうという。
「それで……資源がなくなると……どうなるのですか?」
『資源が足りなくなると、この世界が動かなくなってしまう可能性が高いのです』
「可能性_?……本当になくなってしまうのですか?」
『それは今まで経験したことのない状況ですので、何とも言えません……ですが、最悪どちらの世界も消えてなくなる可能性が充分にあります』
創造者はステイビルたちの緊張した表情とは異なり、柔らかい表情でそう告げた。
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