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第六章 【二つの世界】

6-332 反応

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ある程度の期間が過ぎ、二人は城内での行いが認められようになり、以前のような理不尽な批判を受けることがなくなった。
そして、二人の前に再び大きな壁が立ちはだかった。


メイドの立場として、大きく二つの立場がある。



”――命令をする者とされる者”




今までの二人は、される側としての立場だった。
反対に言えば、自らの判断で何かをしてはいけないということ。

城内において、重要な人物の対応で不快感を与えてしまえば、その者だけでなく命令した側にも責任が課せられる。


だからこそ、命令を与える側の人材も慎重に選ばなければならない。
自身の下に付く者たちの命を守るためにも。



そのために、命令を与える者たちはある試験が課されている。
その試験の内容とは要人の接客を行い、相手に満足してもらうという課題。要人は男性だけに限らず、場合によっては青年の場合もある。
切羽詰まったメイドの中には”様々”な手段を用いる者もいるが、そういった場合はすぐにばれてしまい、城内のメイドにはふさわしくないと王都を追放されている。

特に気に入られた場合、本人同士が了承した際には引き抜かれることもありえる。
そういうこともあるため、王都のメイドになりたがる者も多い。


ただヴァスティーユとヴェスティーユの二人には、その機会がなかなか回ってこなかった。
指導役のメイドは、二人の技術には何ら問題を感じておらず、ただその時が来るのを待っていた。
しかし、最終決定権はその当時の”王”にあり、キャスメルの際にはなかなかその機会が回ってこなかった。
ステイビルに王が変わってからはっきりしたことだが、キャスメル派のメイドがその機会をことごとく潰していたと知った。


今回、こうしてサヤのお世話をすることになり、ようやくその機会が回ってきたのだった。




「……ふーん。アタシはてっきりアンタたちが”厄介な相手”を押し付けられたものだと思ってたよ」



そのサヤの言葉に、二人は不思議そうな表情を浮かべる。その反応が気に食わなかったサヤは、二人に今思っていることを正直に述べるように命令する。


「え?さ、サヤ様は……この国を変えていただいた、凄いお方なのですよね?」

「そうです!わたくしたちは、サヤ様にお会いする前に、ステイビル王から直々にそのようにお伺いしております」


「……は?」



キラキラと輝く――以前の二人にも見たことの無い輝き――視線を向けられたサヤは、自分が想像していたソレとは正反対の反応に戸惑ってしまった。


「それだけではありませんよ?サヤ様がステイビル王に意見を述べることができる唯一のお方だと聞いております」


「私たちが遠い町で聞いていたステイビル様の噂は、少々頼り甲斐が無いという評価が広まっておりました。ですが、今回サヤ様たちのおかげで、前王の政治を変えて下さり多くの民は喜んでおります。それだけステイビル様もサヤ様と出会ったことにより何かが変わられたようですから」


「まだまだございます!この王都では……」


「……ちょ……ちょっと待って!?」





二人はサヤの少し照れているその反応を楽しむように、自分たちがサヤに感謝していることを次々と挙げていった。







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