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第六章 【二つの世界】

6-344 アーリスの案内

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モイスはやや身体を小さくして、ゆっくりと地表に降り立った。



「よっ……と」



モイスの身体がさらに小さくなるタイミングを見計らい、サヤはその背中から飛び降りた。
その場所はマギーが運営している宿の場所から、徒歩で数分ほどの離れた場所に降り立った。

モイスは小さくなり、サヤの肩の上で落ち着いている。
最初は命令されて乗っていたが、今では普通に自分の居場所として落ち着いていた。


サヤはそこから宿に向かって歩き始めると、遠くに建物を見付けた。
それと同時に、反対側からこちらに向かって歩いてくる女性の姿が見えた。



「ようこそいらっしゃいました、モイス様!」


『アーリスよ……無事であったか』


「へー、アンタモイスに気付いたんだ」


「あの……そちらの方は?あ、もしかしてサヤ様でいらっしゃいます?」


「そうだけど……なんでアタシのこと知ってんの?」


「はい。サヤ様のことはハルナさんから名前はお伺いしていました……確か、ハルナさんと同じ世界からいらっしゃった方ですよね?」


「ふーん、アイツそんなこと話してたんだ」





サヤは、アーリスという女性が”いつ”自分の話を聞いていたのかが気になっていた。
この世界の複製が創られるまでは、ハルナたちは自分のことを”敵”と認識していたはずだと。
しかし、この時点で警戒する態度を取らないということは、そういう認識が無いとも考えられる。
どちらにせよ、何かあったときの仲裁と説明はモイスに任せているので、問題ないであろうとサヤは考え、一つだけそれに関連して質問を返した。


「あいつ……アタシのことどんなふうに言ってた?」


「そうですねぇ、確か……そうだ!サヤ様はハルナさんは、サヤ様のことをお友達だっておっしゃってました!」


「とも……だち?」


「えぇ、そうです。サヤ様はハルナ様のお友達なので、当時はサヤ様のことをすごく気にしていらっしゃる様子でした。マギーさんから聞いたお話でもあるんですけど、サヤ様もフユミさんとお知り合いだったのですね?だからフェルノールの……」




サヤはアーリスの言葉を遮り、それ以上の言葉を口にさせなかった。



「わかったから、そろそろ宿に案内してもらっていい?」


「は、はい。失礼しました……どうぞ、こちらへ」




アーリスは振り返り、サヤの前を歩いて宿までの短い距離を先導していく。
その途中で、アーリスは今日の来訪者がサヤだけでないことを告げた。



「偶然にも、実はハルナさんもいらっしゃってるんですよ」


「え?」


『サヤ様……』




その言葉から、元西の王国の警備兵であったアーリスは何かを感じ取る。
そして、その原因は自分の発した言葉であると推測した。



「……ハルナは今、どこにいるの?」


「はい、いまは裏山の……フユミさんのお墓におられるはずですが」




いまの状況を聞いたサヤの周りの空気が、一段と張りつめたものへと変わっていった。
アーリスもそこから、線上に向かう様な空気に変わっていき、これからどう判断して行動するべきかを頭の中で計算していった。








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