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第六章 【二つの世界】
6-380 国王の命令
しおりを挟む「……そんなことが、本当に起きているのですか!?
「あぁ、信じたくはないだろうけどね。本当のことだね」
アーテリアは、王国内で緊急な事態が起きているであろうことは、これまでのエレーナとのやり取りで感じ取ってはいた。だが、実際に何が起きているかまではアーテリアには知らされてなかった。
自分自身も王国の役職として働く中で、扱われる情報の重要性や機密性によって伝えられる範囲と連絡手段が決まっていることは知っている。
とはいえ、自分も王国内にある重要な領土の一つを任されている身であり、そんな地位を持つ自分にも知らされない情報があるということを腹立たしくも感じていた。
”なぜ、自分に秘密にしている情報があるのか……”と。
そこから考えられることは、自分に関するものではないかという不安も頭の片隅に浮かんでいた。
それとは別な考えもあった。
キャスメルが統治していた頃の混乱は、国王がステイビルが変わったことにより落ち着きを取り戻していた。しかし、表に出てこないところで、以前の体制に戻そうと企んでいる者もいるという。そう言った者たちが情報を操作し、地方へ重要な情報はいかないようにしているという”線”もアーテリアは考えていた。
「……その様子だとやっぱり、アンタでも知らなかったみたいだね」
「えぇ。この情報は私が想像していたよりも、取り扱いが危険……いえ、外に漏らしてはならない情報のようですね。ですから、いまサヤ様から直接お話をお聞きして、ステイビル王がこのような扱いにされている意図が分かりました。このことが知られたら、この国……それどころか、この世界は混乱に陥ってしまうでしょう。信じられないですが」
「まぁそうだよね?自分たちの世界が、崩壊するってこと考えるやつがいたならそれは異常なヤツだよ」
「……そうですね。それと」
アーテリアは、サヤの後ろにいる二人のメイドに視線を移動させた。じっくりと見ることは失礼に当たるため、数秒確認をして再びサヤの顔を視界に入れる。
「……それと、後ろの方が今回精霊と契約をさせたいというお方ですか?」
「そう。王宮ではアタシのメイドだったんだけど、こいつらも役に立ちたいって言ってさ。あ、何があっても責任はアタシがとることになってんだ。念のために確認するけど、飛び入りだけど参加させてもらえるんだよね?」
「えぇ、問題ございませんが……他の者の目が……いえ!?サヤ様がよろしければ、わたくしたちには何の問題もございません」
「あー、言いたいことはわかるよ。確かその日のために施設で努力をして選ばれた奴だけが行けるんだっけか?……まぁ、そこは何とか”やりよう”があるからさ?」
「で、であれば……こちらとしては問題ございません、はい」
「よし、じゃあ決まりだね。アンタたちもわかったね?」
「はい!」
「ありがとうございます!アーテリア様」
こうして契約の話しは落ち着き、サヤたちはフリーマスの屋敷の部屋を借りることになった。
契約の日は今日から二日後で、それまではラヴィーネの町を楽しむことにした。
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