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第六章 【二つの世界】

6-415 包囲

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「――お止めください!」


アルベルトは、その相手に対して何を言っても無駄だとわかっていながらも叫んだ。




ここは、王都の城の広場の中。


ハルナの姿をした盾の創造者は、多くの警備兵、騎士団と王宮精霊使いたちに囲まれていた。
その距離は物理的な攻撃が届かない距離を保ち、前線には1:3の割合で騎士団と警備兵が並び、精霊使いたちはその後ろで状況を見守っていた。
警備兵と騎士団たちは、距離を稼ぐために、防御のために長い盾で守られた間から長槍を突き出して警戒する。

この距離と陣形を取ったのは、アルベルトの指示だった。


盾の創造者がこの場に現れ、ハルナの姿に油断した警備兵たちは次々とその姿を消されてしまっていた。
警備兵たちは消された存在の者たちへの記憶は消えていたが、先にサヤから注意を受けていたためその対策を取っていた。
警備兵は数名で隊を構成しており、その人数は隊長の腕に常に付けていた”数字”が掛かれたプレートで確認していた。
万が一、この場にこの数字と違う隊員がいた場合にはすぐにアルベルトへ報告するように指示を出されていたため、すぐに対応することができた。


念のために精霊使いたちは、空中に無数のそれぞれの属性の塊を浮かべて合図が出るまで待機する。
目の前の存在には元素による攻撃は無意味だと予めサヤから知らされていたが、物理的な攻撃に対しては通用する可能性があった。
そうなればハルナの身体も傷をつけてしまうことになるであろうし、”できるならばそうしたくはない”というのが対策会議の時にステイビルがくだした判断だった。
ただ、兵を含めた王国の民に甚大な被害をもたらした場合には、それすらもやむを得ないと付け加えた。

そのため、エレーナからの依頼でモイスを通じて生物の水の流れを制御できる水の大精霊のガブリエルとヒールの魔法が使用できるサナにも待機してもらっていた。しかし、その二つの存在は、兵たちのためではなかった。とくにサナのヒールは一日の使用回数も決まっているため、ハルナの身に何か起きた場合のみ力を貸してもらうこととした。




盾の創造者は、その事前に用意されていたことに対して不快感を抱いてた。
保たれた距離は、気分が悪いくらいに自分のやりたいことができない距離を保たれていることに、自分への対策がされていることに気付いた。


(まったく……面倒な生き物たちね。脆弱な存在が、この私に歯向かってくるなんて)


今回盾の創造者が王都に来た理由は、敵に回ったハルナの力を削いでおこうと考えたためだった。
それと同時に、自分に歯向かえる――程の力があるとは思ってはいないが、その芽を摘んでおく必要があると判断し、よく知っているこの国の機能を破壊してしまおうと考えた。

しかし、自分が考えていたよりも思い通りに進まないことが、盾の創造者にとってストレスが溜まっていく状況となっていた。


『もう面倒だわ……あなた達には何の価値もないし……そろそろ消えてもらうわね?』


「……な、なんだあれは!?」


騎士団の一人が、盾の創造者の行動を見てそう呟く。
両手を掲げ、その上には決して良いものとは思えない黒い球体が膨れ上がっていった。







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