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第六章 【二つの世界】

6-476 不安定な感情

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「え?……サヤちゃん、何かしたっけ?」

「……ハルナ、アンタさぁ!?」

「ご、ごめん!?」


ハルナのとぼけたような態度にも惑わされず、サヤはしっかりと膝の上で手を握りしめていた。
これまでの話しの中で”このタイミングで”と意を決したサヤに反して、ハルナのふざけたような言葉がサヤをイラつかせた。
しかし、ハルナが自分の誤った態度を詫びると同時に、サヤ自身もこれから自分がお詫びする対象の人物に威圧してしまったことに対しすぐに反省する。


「いや……うん、いいんだけどさぁ……アタシも覚悟を決めて……いや、なんでもない……と、とにかく!アタシはアンタに謝りたいんだってば!?」

「う、うん!わかったよ!?」


サヤの勢いに飲まれたハルナは、謝られるのか責められるのかわからなくなりそうな状況の中で、サヤの機嫌を損ねないように、とにかく肯定する態度をとった。


「ったく……アンタはアタシのこと乱暴でガサツで自分勝手な奴だって思ってるだろ?」

「え!?い、いや……そんな……こと?」

「……」


ハルナのはっきりしない返答に、サヤは目をやや閉じてハルナにちゃんと答えるようにと無言で催促した。


「ちょっと……だけ、そう思ってたことも……あるかなぁ……って」


ハルナは恐る恐る正直に答え終ると、サヤの反応を待つ。いつ大声で怒鳴られてもいいように、ハルナはお腹に力を入れた。
しかし、その準備は全く無意味なものとなった。ほんのわずかな沈黙のあと、サヤはハルナの顔を見て深い息を吐いて感情をコントロールした。


「まぁ、いいや……別に怒ってるわけじゃないし、アンタもはっきり言ってくれて……逆に嬉しくもあるんだけどね」


サヤにそう告げられたハルナは驚いたが、また変な反応をするとサヤの言いたいことが遅れてしまうだろうと考え我慢をした。


「さっきのことだけど、今思えばあの時のアタシは自分勝手だったよ……うん。改めて思い出すとちょっと恥ずかしいね……そ、それでも今はやっと落ち着いてきたんだよ、アタシにとってはさ……で、何が言いたいかというと……さ。”あんな”ことになって申し訳ないってこと。あんなことがあって、この世界で長い間考える時間もあったから気付けたんだよね。結構遅すぎたんだけど……っていうか、遅いのはアンタもこの世界に来るのが遅かったんだからどうしようもないだろ!?」

「ちょっとサヤちゃん……怒ってんの?誤ってんの?どっちなの!?……本当にもう!?」

「――あ」


ハルナはサヤの態度に困った顔を見せる。だが不思議とその口元には笑みが浮かんでしまう。
そんなハルナの可笑しな顔につられて、サヤも思わず吹き出してしまっていた。
それがきっかけで、二人はお互いの顔を見つめ合い笑いが止まらなくなった。
笑いか、心が触れ合い感情が溢れてきたせいなのか、二人の目からは涙が流れ出ていた。
その笑い声もいつしか、泣き声へと変わっていった。

そして、二人は思いっきり笑って泣き、スッキリとしていた。今までずっと、誰にも言えずにらえてきたものを全て吐き出した。




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