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36話  陽向の言葉

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数日雨が降り続いた日


俺は、体調を崩してしまった。



朝、目が覚めると体が重たくて…

起き上がれない


頭も痛いし…

静かに降る雨さえも頭に響いているそんな感じだった


熱っぽくて


マネに連絡して寝ていることにした。


しばらく寝ていれば治るだろうと思っていたから。
そんな、俺の思惑とは裏腹に、昼を過ぎても全くよくなる気配はなかった。


トイレに起きるのがやっとで、カラダが全然いう事を聞いてくれなくて


大袈裟かもしれないけど


このまま死んでしまうのではないかってくらいに辛かった


市販薬くらい飲んでおけばよかったなんて
今更後悔しても…


もう、動く事すらできない


そんな時、電話が鳴った


『…はい…ごふぉっ…』

手元に置いてあった、電話に出て



『ひーくん?大丈夫?なんか欲しいのある?…ちゃんと食べてる?』

聞こえたのは、陽向の声だった。


『…食べられ…ない…。…つらくて…』

力が出なくて、そのまま電話をベッドの下に落としてしまった。


もちろん拾いあげる体力も残されていなかった。


しばらく、遠くで陽向の声がしていた

俺は、微睡む意識の中、その声を聞いていた。



なにも考えられないし

動けない…


遠くで

『ひーくんっ!ひーくんっ!…ひーくんっ!大丈夫?』

陽向の声が聞こえた。


俺、死んだ?

朦朧とする意識の中

陽向が俺を呼んでいた


いよいよ幻聴が聞こえて

うっすら幻覚まで見えて来たと思った瞬間


抱き起こされて、スポーツ飲料が流し込まれた


ゴクンっ



カラカラに乾いた体が潤っていくのがわかった

続けてゴクゴクと飲み干す


『どれだけ飲んでなかったの?なんか食べられる?』



俺を抱きかかえているのは幻覚でも幻でもなくて


本物の陽向!



『…なんで…?』


『電話の途中で声聞こえなくなって…。何回呼んでも返事しないしっ!ほんとに焦った!!そんで、マネに言ってひーくんちの鍵借りた』


すでに準備されたお粥を口に運ばれて


小さく口に含んだ


もぐもぐ
と咀嚼して


ゴクンとのみ込んだ


一口食べれば、次が欲しくなって

ゆっくりと
食べ始めた


『…自分で…食べるから…』


『もっとあ~んってしたかったのに♡』


『しなくていいっ!』



『いつものひーくんに戻ったみたいっ!良かった。来た時すごく顔色悪くて…ほんとに…、』


少し俯いて悲しそうな顔をする陽向が苦しそうで

俺を本気で心配していたことがうかがえた


そして、次の言葉に耳を疑った…



『俺…もう…ひーくんが…死んでいくとこ見たくないっ!何回俺を置いていけば気が済むの?』


え?


もう…死んでいくところを?


見たくない?


置いていく?



ってことは…?



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