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第2章
ルナイス2歳、ノヴァ14歳のとある日【番外編】
しおりを挟むアーバスノイヤー家に呼ばれ、屋敷に辿り着いたが当主が急用の為しばらく待っていて欲しいと言われ折角だからと綺麗に整えられた庭を見て回ることにした。
アーバスノイヤー家の庭は広範囲が短く整えられた芝生の庭と、遊具の置かれた庭、色とりどりの花が咲き誇る庭、噴水のある庭の4つの庭がある。
今は亡き奥様がこれから生まれてくる我が子の為にと手を入れた美しく優しい庭だ。
素晴らしいこの庭を見てみたいと手紙を送る者もいた様だが、奥様が亡くなってからは他者がこの庭を歩くことは許されていない。
どうやら奥様が大切に育てた庭を汚されたくないという当主の思いと、時たま庭で遊ぶルナイスの邪魔をする者を許せないというアドルファス様の思いからそうなったようだ。
私は昔からの知り合いで、当主が言うのは家族のような存在だから庭を歩いても良いと許可を頂いている。
美しいと思うものを眺める時間はとても有意義なものであると思うので、有難くお言葉に甘えて偶に散歩をさせてもらっている。
しばらく歩いているとヘレナさんがキョロキョロとしながら焦った様子で歩き回っている所へ遭遇した。
「どうされましたか?」
「あぁ!ノヴァ様!坊っちゃまが居ないのです!先程までここで遊んでおられましたのに!!」
声を掛けると涙目になっているヘレナさんがそう言い力を貸してくれと頼んできた。
取り乱すヘレナさんを宥めて少し周りの魔力を探るとすぐによく知る魔力を近くに見つけた。
ヘレナさんと共に魔力の感じる場所まで行くと声を上げそうになったヘレナさんの口を魔法で閉じさせた。
辿り着いた場所にあったのはケテに包まれて穏やかな表情で眠るルナイスの姿であった。
ケテというのは精霊獣で、滅多に人前に姿を現すことは無く、個体数も少ないと言われている珍獣。
とても利口で魔力も戦闘力も強い生き物だ。
個体数が少ないと言われているが、只確認できていないだけで把握している数よりももっと存在している可能性はある。
種族関係なく弱い幼子を守ることから子供の安全を祈願する物に描かれることの多い獣である。
普段は温厚な性格の獣であるが、子供や自分を害す人間には容赦がなく攻撃をしてくるので注意が必要だ。
少しずつそっと近づいていくと私達の存在に気が付いたケテが片目を開いてこちらに視線を向けてきた。
怒ってはいないが、こちらを警戒している様子。
「ケテ…その子は此処の子供であり、彼女はその子の乳母だ。行方の分からなくなっていたその子を探していた。私はその子の不安定な魔力を安定させるため呼ばれているノヴァというものだ。」
許されるギリギリとラインまで近づいてからケテへ自分達がルナイスにとってどういう人物であるかを説明する。
賢いケテは人の言葉を理解するので、きちんと話し、ケテが納得してくれれば何事もなく子を返してくれる。
しかし、目の前のケテはしばらく喉をキュルキュルと鳴らし私達とルナイスを交互に見比べ、そして長くふさふさの尻尾を更にルナイスの体に巻き付け自身の方へと寄せた。
反応からして、私達に警戒心を強めたわけではなさそうだが…
それにケテのあのキュルキュルという鳴き声は寂しい時や、甘えている時なんかに出す鳴き声のはず。
もしかして…ケテはルナイスと離れたくない?
「んぅ…ふわ…ふわ……きもひぃ。」
どうすればっと悩んでいるとケテに包まれて眠るルナイスがふっと寝言を呟いた。
涎を垂らして本当に気持ちよさそうにケテの毛に埋まり眠るルナイスを見て、私もヘレナさんもルナイスが起きるまではこのままでっとその場で待つことにした。
ヘレナさんには自分が見ているから戻ってもいいと言われたが、何となく目の前の平和で穏やかな光景を見ていたくてその場に留まった。
どれくらい経ったか、グググーっと伸びをしたルナイスは目を覚ますと自分を包み込むケテの毛にびっくりして、そしてケテと見つめあい、「おはよ~」と呑気に挨拶をした。
すぐにそんな光景を見守っていた私とヘレナさんに気が付いてあわあわしていたのは面白かった。
その後ケテはしばらくの間アーバスノイヤー家の近くに滞在し、そしてその後自身の子が産まれるから人里からは離れると言って去って行ってしまった。
ちなみにケテの言葉を理解し教えてくれたのはルナイスで、どうしてケテの思いが伝わったのかは本人にも分からないようだが、もしかしてケテは気に入った相手に思念を伝えることができるのではないだろうか?
またケテと会う機会があれば、ぜひ確かめてみたいと思った。
※ケテ…雪豹に似た精霊獣。雪豹の倍でかく、尻尾は長毛。
(作者の空想の生き物です)
____________
【雑談】
そういえば今何ページ目なんだろう?と思って見てみたらここで140Pでした。
いつの間にやら100Pを超えてました(笑)
2章が長い。
戦闘シーンの表現が難しい。
早くほのぼの甘々なお話を描きたいと思い、ちょっと寄り道。
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