王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第4章

怒るホルス様

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突如ガーネットを包み込んだ黒い炎と苦しむレッドドラゴンの姿。


救助しようにも黒い炎とガーネット自身から放たれる熱波で近づけないどころか、ノヴァに抱えられて僕達はククちゃんが再び造ってくれた氷壁の後ろに下がることしかできない。



「一体何が…」

「あの黒い炎…あれは…」


『ノワールが怒ったのよ。』



戸惑う僕達と黒い炎を冷静に分析するラプラス様にククちゃんが黒い炎の正体を教えてくれた。

ぱっと遥か上にあるククちゃんの顔を見上げると鼻からプスーっと深いため息を吐き出していてあきれ果てた様子。



『ノワール様が怒った!怖い怖い!!』


パタパタと半泣きで飛んできたパンがククちゃんのお腹の内側に隠れる。





改めてガーネットが居る所へ視線を向けると丁度ホルス様が人型からドラゴンの姿へと変わったところで、ドラゴンの姿となったホルス様からは強い怒りの圧を感じる。

耐性のなかった数名の護衛が立っていられなくて地面に片膝をつくくらいの強い圧だ。


こんなに怒っているホルス様を始めて見たけれど、僕は不思議とホルス様から放たれる圧に恐怖は抱かず、むしろ珍しく怒っているホルス様の姿に見惚れている。




だって黒い鱗が爛々と輝き、低く唸る素敵な鳴き声、それからホルス様から放たれる黒い色の炎はユラユラと揺れていて格好いい!の一言につきる!






「ルナイス、見惚れているところ悪いがこのままではあのレッドドラゴンと子供が消し炭になるどころか此処ら一体が火の海と化しそうだ。」


「っは!」



見惚れてうっとりとしていた僕は、ノヴァに両頬を掌で挟まれて現状のやばさを理解した。

しかし何がきっかけでホルス様があのように激怒されているのか分からない為、ホルス様を宥める言葉が見つからない。


ホルス様の言葉を聞こうにも怒っているホルス様からは皆と同じような唸り声しか聞こない。





『恐らくルナイスに怪我を負わせたうえに、ルナイスに怒鳴ったことで堪忍袋の緒が切れたのだろう。危ないからそこから出ない方がいいわ。』


ククちゃんの言葉になるほどっと頷く僕の心は舞い上がっている。

龍神の愛子であることを覗いてもホルス様は僕をすごく大切に思ってくれていると感じていたけれど、こうして僕の為に怒っている姿を見ると胸がきゅんっとするのと同時に凄く安心する。



性格悪いなって自分でも思うけれど、嬉しいって思う気持ちがどうしても湧いてくるんだから仕方ない。

僕はそういう人間なのだ。




それにそういう人間であっても、そんな僕の感情を美しいと言ってくれた方だっている。

そういう人間って分かっていても僕を愛してくれる夫がいる。






僕の為に怒るホルス様を見ていたい気持ちはあるのだけど、そろそろ止めないと本当にやばい。

ククちゃんはどうでもいいって感じですけど僕達はそうはいかない。

ラプラス様はドラゴン同士の争いに夢中で土地への被害に目がいってないようだけど…




『ホルス様…ホルス様…ホルス様?』


『………どうしたルナイス。』



いつもなら直ぐに呼びかけに答えてくれるんだけど、今は中々答えてくれなくて不安になってきた3回目の呼びかけでやっとホルス様から言葉が返ってきてほっとする。




『怒ってくれてるのはすごく嬉しいんです。けど、このままだとここら辺の地が炭になっちゃってちょっと困ったことになりそうです。』


『……少し冷静になって来よう。』




僕の呼びかけにホルス様はそう言って、空高く飛んで行ってしまった。


地にはペタリと横たわる弱った紅いドラゴンと無傷な卵が見えて、怒っていて理性が少し飛んでいても子供を傷つけなかったホルス様の優しさにほっこりとする。






「ホルス様、大丈夫かなぁ?」


「ホルス様よりレッドドラゴンが弱り切っているが…ルナイス、ホルス様はどこへ?」


「なんか冷静になって来るって。」


「なら大丈夫だろう。落ち着いた頃に戻ってきてくれる。」




心配でホルス様が飛んで行った方をじっと見つめる僕の頭を励ますようにぽんぽんとノヴァが撫でてくれて、ククちゃんも心配はいらないと言ってくれたので、気持ちを現場に戻します。



弱ったガーネットをこのままにはしておけないし、卵もこのままではいけない。

どうにか火山付近へ戻ってもらわないと。






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