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18 脅し
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美しい金色の目は、真剣だ。彼の手は私の両手を強く握っている。
これからジークが明かしてくれるだろう事実が、私と彼二人にとってあまり歓迎すべきことではないというのは……確かみたい。
「レティシア。どうか、落ち着いて聞いて欲しい。先に言っておくが、これはすべて犯人のせいだ。これは、僕たちにとっては絶対に許し難いことだ。僕と君。どちらにも、何の非もない。それを、どうか……理解してほしい」
「わかったわ」
前置きの理由が、良くわからないけど。話が進まないので、私は頷いた。
ジークは溜め息をついて、私がずっとどういうことなのかと思っていた事の次第を話し始めた。
「まず……この話をしないと、何も始まらないんだけど。僕と君との婚約が正式に決まる直前に、ある人間から……僕は、というか父が脅されていた。色んな方法で、手紙が来てね。そういう能力を持っている人物だということは、わかっていた。アヴェルラーク家の令嬢と、次男を婚約させるなと。僕たちも調査はしていたんだが、その人物の特定は難しかった」
「っえ……」
私は思わぬ話の始まりに、思わず声を漏らしてしまった。だって、それは……それだと……もしかして……。
「うん。僕も、最初は何も知らなかったんだ。だけど、父と話したアヴェルラーク侯爵から娘も乗り気だからと聞いた父は、僕本人にどうしたいか聞いたんだ。もしかしたら、レティシアと婚約したいと強く思っている誰かが居て。君と婚約すれば、誰かから、酷く恨まれるかもしれないと」
「嘘……」
ジークがこれまで浮かない顔をしていた理由を知り、あまりの驚きに目を見開いてしまった私は、絶句していた。だって、そんなの……私と婚約したせいでジークが、あんな辛い目に遭ったって言うの?
「うん。けど、これは僕の婚約者が魅力的過ぎるということだけだから。可愛過ぎるという罪は、確かにあるだろうけどね……どうか、わかって欲しいんだけど。君は、何も悪くない」
真面目なジークが珍しくふざけてそんな風に言ってくれたけど、私はとてもそれでいつものように笑えるような気持ちにはなれなかった。
「……ジーク。ごめんなさい。私が貴方じゃないとダメって言ったから……お父様は、マックール侯爵に強く出たのかもしれない」
私の父親であるアヴェルラーク侯爵は、娘っていうか兄二人居る上での末っ子の私を溺愛していることは、この国の貴族社会では有名な話だ。
そんな娘の希望だからと、かなり無理を言ってジークとの婚約を願い出て、マックール侯爵はそれを断り切れなかったのではないかと思ったのだ。
「そんなことは、ない。違うよ。僕がそれでも良いからって、父に言ったんだ。僕の未来に危険があろうが、それでも良いから。あの子と婚約したいって、そう父に言った。君のアヴェルラーク家は名家だから、爵位を持つ条件の良い嫡男のところにだっていくらでも引く手あまただっただろうに。レティシアが、スペアの僕でも良いと選んでくれたのが、嬉しかったんだ」
「私。初対面の顔合わせの後。ジークじゃないと結婚しないって、暴れたの……引く?」
そう言えば、この話はまだしていなかったとジークを上目遣いに見れば、彼は首を横に振って優しく微笑んでくれた。
これからジークが明かしてくれるだろう事実が、私と彼二人にとってあまり歓迎すべきことではないというのは……確かみたい。
「レティシア。どうか、落ち着いて聞いて欲しい。先に言っておくが、これはすべて犯人のせいだ。これは、僕たちにとっては絶対に許し難いことだ。僕と君。どちらにも、何の非もない。それを、どうか……理解してほしい」
「わかったわ」
前置きの理由が、良くわからないけど。話が進まないので、私は頷いた。
ジークは溜め息をついて、私がずっとどういうことなのかと思っていた事の次第を話し始めた。
「まず……この話をしないと、何も始まらないんだけど。僕と君との婚約が正式に決まる直前に、ある人間から……僕は、というか父が脅されていた。色んな方法で、手紙が来てね。そういう能力を持っている人物だということは、わかっていた。アヴェルラーク家の令嬢と、次男を婚約させるなと。僕たちも調査はしていたんだが、その人物の特定は難しかった」
「っえ……」
私は思わぬ話の始まりに、思わず声を漏らしてしまった。だって、それは……それだと……もしかして……。
「うん。僕も、最初は何も知らなかったんだ。だけど、父と話したアヴェルラーク侯爵から娘も乗り気だからと聞いた父は、僕本人にどうしたいか聞いたんだ。もしかしたら、レティシアと婚約したいと強く思っている誰かが居て。君と婚約すれば、誰かから、酷く恨まれるかもしれないと」
「嘘……」
ジークがこれまで浮かない顔をしていた理由を知り、あまりの驚きに目を見開いてしまった私は、絶句していた。だって、そんなの……私と婚約したせいでジークが、あんな辛い目に遭ったって言うの?
「うん。けど、これは僕の婚約者が魅力的過ぎるということだけだから。可愛過ぎるという罪は、確かにあるだろうけどね……どうか、わかって欲しいんだけど。君は、何も悪くない」
真面目なジークが珍しくふざけてそんな風に言ってくれたけど、私はとてもそれでいつものように笑えるような気持ちにはなれなかった。
「……ジーク。ごめんなさい。私が貴方じゃないとダメって言ったから……お父様は、マックール侯爵に強く出たのかもしれない」
私の父親であるアヴェルラーク侯爵は、娘っていうか兄二人居る上での末っ子の私を溺愛していることは、この国の貴族社会では有名な話だ。
そんな娘の希望だからと、かなり無理を言ってジークとの婚約を願い出て、マックール侯爵はそれを断り切れなかったのではないかと思ったのだ。
「そんなことは、ない。違うよ。僕がそれでも良いからって、父に言ったんだ。僕の未来に危険があろうが、それでも良いから。あの子と婚約したいって、そう父に言った。君のアヴェルラーク家は名家だから、爵位を持つ条件の良い嫡男のところにだっていくらでも引く手あまただっただろうに。レティシアが、スペアの僕でも良いと選んでくれたのが、嬉しかったんだ」
「私。初対面の顔合わせの後。ジークじゃないと結婚しないって、暴れたの……引く?」
そう言えば、この話はまだしていなかったとジークを上目遣いに見れば、彼は首を横に振って優しく微笑んでくれた。
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