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33 嫉妬

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「えっと……かっちゃんは、今は藤大生で。私の幼馴染だったんだ。高校の時に、一年くらい付き合ってたんだけど……浮気されて、別れたの」

「……そっか。俺は……優鷹法学部は……法律の解釈とか、教授陣とかで選んだ。尊敬してる教授のゼミに、絶対入りたかったし。自分が司法試験合格を目指すのに、一番良い環境だと思って」

「え……うん?」

 待って……待って。芹沢くんが、今めちゃくちゃ気に入らないって表情になってる。

 え。なんで? かっちゃんが、藤大生だったから……? 張り合ってるのかな。藤大生も確かにすごいけど、芹沢くんだって優鷹の首席合格で、入学生代表なのに……? 藤大だって、受ければ入れていたけど、自分なりの理由があってこっちを選んだだけだよね?

 私の元彼が藤大だということが頭の良い彼のどこか、プライドに障ったのかもしれない。

 ちょっと……ちょっと、待って。待って待って待って。これって、もしかして……これって芹沢くんが、私の元彼のかっちゃんに対して嫉妬してる? 嘘。

「え。待って。芹沢くんの方が……えっと、うん。絶対、イケメンだけど。それは、絶対。だって、ミスター優鷹だし……」

「止めて。外見なんかで、比較されたくない」

 いやいやいや、外見なんかっていうか……むしろ、何もかもが私の中ですべて、芹沢くんの圧勝だけど。

 こんなこと言ってしまうのも、なんだけど……かっちゃんの話を聞いてむっとした表情で、とても気に入らない様子になってしまった芹沢くん。

 可愛い可愛い可愛いかわいぃぃぃぃぃ。むってして拗ねてぷりぷりしてるの、萌えしんじゃう。やばいやばい。推しの嫉妬が尊い。もうダメ。キュンキュンが止まらな過ぎて、甘すぎる気持ちが身体中を全速力で駆け抜けていった。

「え……私……芹沢くんが、好きなんだけど」

 ついつい、頭の中からぽろっと口から出てしまった言葉に、芹沢くんは大袈裟なくらい大きな反応をした。ぱっと勢い良く顔を上げて、身体全体をこちらに近付けて囁いた。

「じゃあ、なんで……いつも、水無瀬さん俺に対して素っ気ないの?」

「私が、いつも素っ気ない? どういうこと?」

 常に芹沢くん大好きな空気を醸し出しているという自覚のある私が首を傾げたら、芹沢くんは不思議そうに言った。

「水無瀬さん、自覚ないの? メッセージとか? いつも、開始は俺からだし。返信だって、短くて素っ気ない……」

「え……嘘。そんなこと、思ってたの? 芹沢くんは、大変な法学部だし。司法試験の勉強で、忙しいと思って……私。それに、友達から付き合った人とは、頻度とか返信の長さは相手に合わせるものだって、聞いてたし……」

 芹沢くんは私が言っていることが、良くわからないという顔になった。

 え。なんで……これは、恋愛マスターによる、付き合いはじめた男性に対しての完璧な対応方法のはずなのに。だからこそ、私だって彼と延々と時間をかけて連絡を取り合うのを、とても我慢していたのだ。

「何それ……その、良く出来た恋愛テクニック……結果的に、的は射てる。誰から、聞いたの?」

「えっと、友達の美穂ちゃん。芹沢くんは彼女のことを知らないと思うけど、ずっとモテモテなんだよ。恋愛上手な恋愛マスターなの」

 ゆうくんは美穂ちゃんのことを知っていたけど、多分あれは彼氏の高橋くんが同じ学部だし、彼ら二人は実はそこそこ親しいらしい。

 なので、ゆうくんは私のことを知っていてもおかしくないだろうとは、美穂ちゃん談。
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