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42 理由②
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「あの時は……どうして、僕がレニエラに結婚を申し込んだのかを、どう説明して良いものかと、わからなくなり……だとしても、今の今まで説明を怠り、本当に申し訳ありません」
ジョサイアはこれまでの自分の行動何もかもを、悔いるようにして言った。
「いいえ。なんだか、今思い出すと、本当に自分のした事が恥ずかしくなります。きっとこうだろうと思い込み、私が貴方に話す時間を与えなかったと思うわ。何もかも、私が悪いんです」
これまでに悩んだことすべてが、何もかもが、私が自分勝手にしていた誤解からだった。
ジョサイアが俯いた私の手を握り、真剣な顔をして首を横に振った。
「まず、レニエラは何も悪くありません。僕がどこかタイミングを見つけて、ちゃんと説明すれば良かったんですが……傷付いている君には時間をかけて、ゆっくりとわかってもらうべきだと思いました」
「ふふ……傷ついてはいないです。それって、婚約破棄のことでしょう? 一年も前のことだもの。私は大丈夫です……ジョサイア」
私は微笑んでそう言ったけど、ジョサイアは握っていた手に力を込めた。
「……本当に?」
彼の水色の目があまりに真剣だったから、私はここでどう言うべきか迷った。
ここでは、嘘はつけない。二人の関係を、先へ進めたいと思うなら、彼と向き合わなければ。
私は……傷ついている?
ええ。きっと彼の言う通り、私は傷ついているだろう。けど、それは彼の想像しているようなことではなくって……。
「私が傷ついたのは、別に元婚約者に婚約破棄されたことではなくて……その時に当たり前に持っていたものを、すべて失ってしまったから。けど、今は代わりのものを、この手に既に持っている。けど、たまに思い出すの……何も知らずに居た、あの頃の自分を」
いまだに消せない想いがこぼれるようにして涙があふれたけど、それは切ない表情になったジョサイアが、さりげなくハンカチを出して拭ってくれた。
「……彼のことは、好きだった?」
ジョサイアは確認するように聞いたので、私は慌てて首を横に振った。
「まさか! 全然、好きではなかったわ。大嫌いだった。けれど、彼と結婚するとは思って居た。だって……私たち何年も一緒にいた、婚約者同士だったもの」
そして、そこまで言った私は、すぐ近くにあるジョサイアの顔が、薄暗い馬車の中でもわかるくらいに赤くなってしまっているのに気がついた。
今までずっと、お酒に弱かったり赤面症なのかと思っていたけど……これって、彼が私のことが、好きだから?
そうやって意識してしまうと、急にこの状況が恥ずかしくなった。握られている手も、息がかかるくらいに間近にある綺麗な顔も。
逃げ出したいくらいに、恥ずかしい。
「僕はレニエラが僕に心を開いてくれるには、恐らく長い時間がかかると思いました。だから、とりあえずでも結婚してくれるなら、それだけで満足だと……貴族離婚には両者の同意が、必要ですし」
「それって、私の弟もジョサイアと結婚する前に何度も暗示にかけるくらいに言ってましたわ。一度結婚したら、なかなか離婚出来ないんだからって」
アメデオからも口を酸っぱくして似たようなことを何度も言われていたけど、まさかジョサイアがそんなことを考えていたなんて。
今まで思ってもいなかった。
ジョサイアはこれまでの自分の行動何もかもを、悔いるようにして言った。
「いいえ。なんだか、今思い出すと、本当に自分のした事が恥ずかしくなります。きっとこうだろうと思い込み、私が貴方に話す時間を与えなかったと思うわ。何もかも、私が悪いんです」
これまでに悩んだことすべてが、何もかもが、私が自分勝手にしていた誤解からだった。
ジョサイアが俯いた私の手を握り、真剣な顔をして首を横に振った。
「まず、レニエラは何も悪くありません。僕がどこかタイミングを見つけて、ちゃんと説明すれば良かったんですが……傷付いている君には時間をかけて、ゆっくりとわかってもらうべきだと思いました」
「ふふ……傷ついてはいないです。それって、婚約破棄のことでしょう? 一年も前のことだもの。私は大丈夫です……ジョサイア」
私は微笑んでそう言ったけど、ジョサイアは握っていた手に力を込めた。
「……本当に?」
彼の水色の目があまりに真剣だったから、私はここでどう言うべきか迷った。
ここでは、嘘はつけない。二人の関係を、先へ進めたいと思うなら、彼と向き合わなければ。
私は……傷ついている?
ええ。きっと彼の言う通り、私は傷ついているだろう。けど、それは彼の想像しているようなことではなくって……。
「私が傷ついたのは、別に元婚約者に婚約破棄されたことではなくて……その時に当たり前に持っていたものを、すべて失ってしまったから。けど、今は代わりのものを、この手に既に持っている。けど、たまに思い出すの……何も知らずに居た、あの頃の自分を」
いまだに消せない想いがこぼれるようにして涙があふれたけど、それは切ない表情になったジョサイアが、さりげなくハンカチを出して拭ってくれた。
「……彼のことは、好きだった?」
ジョサイアは確認するように聞いたので、私は慌てて首を横に振った。
「まさか! 全然、好きではなかったわ。大嫌いだった。けれど、彼と結婚するとは思って居た。だって……私たち何年も一緒にいた、婚約者同士だったもの」
そして、そこまで言った私は、すぐ近くにあるジョサイアの顔が、薄暗い馬車の中でもわかるくらいに赤くなってしまっているのに気がついた。
今までずっと、お酒に弱かったり赤面症なのかと思っていたけど……これって、彼が私のことが、好きだから?
そうやって意識してしまうと、急にこの状況が恥ずかしくなった。握られている手も、息がかかるくらいに間近にある綺麗な顔も。
逃げ出したいくらいに、恥ずかしい。
「僕はレニエラが僕に心を開いてくれるには、恐らく長い時間がかかると思いました。だから、とりあえずでも結婚してくれるなら、それだけで満足だと……貴族離婚には両者の同意が、必要ですし」
「それって、私の弟もジョサイアと結婚する前に何度も暗示にかけるくらいに言ってましたわ。一度結婚したら、なかなか離婚出来ないんだからって」
アメデオからも口を酸っぱくして似たようなことを何度も言われていたけど、まさかジョサイアがそんなことを考えていたなんて。
今まで思ってもいなかった。
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