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14 枯れた花
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◇◆◇
「……ジュリアスにこの世界に残りたいし好きだと告白したら、避けられるようになりました。どうしたら良いでしょう」
「そうですか……私にはそれをどう言って良いのか、わかりませんが……」
深刻な顔をした私に呼び出され、もしかしたらとんでもないことがあったのかと思って居たらしいハミルトンさんは、何十も違う私の恋愛相談を受け目が完全に泳いでしまっている。
「えー! なんでですかー! 私、元の世界に戻るより、それが良いと思ったんですけど!」
好きになったから迫り過ぎて避けられるという、最悪な事態に悶え苦しむしかない。
それまではなるべく私と一緒に居たジュリアスは告白した次の日から、騎士団の人たちと一緒に馬に乗るようになったし、食事の時も姿を見せなくなってしまった。
どう考えても、わかりやすく避けられている。
「まあ、二人の気持ちあっての恋愛ですからね。どちらかが嫌がると、成立しません」
無表情のハミルトンさんは、ごもっともなことを言った。それは確かに、そうなんだけど!
「少しの間……泣いて来て良いですか……」
「ここは安全なので大丈夫だと思いますが、何かあったら大声で呼んでください」
そう言ってハミルトンさんは、今日の野営地の近くにある小さな森を指し示した。
無表情で事務的だけど、彼だって忙しいし団長代理しなきゃいけなくて大変なんだと思う……きっと、薄情ではなくて。
私はハミルトンさんにお礼を言って、森の中で小さな切り株に座り込んだ。
このシチュエーション、落ち込む。泣きそう。好きな人に好きだと言って、避けられた。これって、もう諦めるしかない状況じゃない?
その時に、ふと目に付いた。いくつかより集まって咲いているうちの一輪の枯れた花に、私は目を留めた。
発動条件が少し問題あるせいで、無用の長物になってしまった私の『祝福』だけど、人を若返るなら、枯れた花だって出来るのかな?
私はプツリと枯れた花を取って、ほんの好奇心のつもりでそれに唇を押し当てた。
「っ……わっ」
小さな光が瞬いて、枯れていたはずなのに瑞々しい花へと戻った。やっぱり私の『祝福』は、そういう能力で合っていたみたい。
なんとなく実験するつもりで二回目のキスをしても、それは想像通りの蕾には戻らなかった。
「あれ? どうして? これは……若返るだけって訳じゃ、ないのかな?」
「そのようです」
「わっ……! ど、どうして?」
聞き覚えのある声に振り向けば、私を避けていたはずのジュリアスがすぐ後ろに居た。
「ハミルトンに聞きました。聖女様。申し訳ありませんが、ご自分の御身の尊さを理解していらっしゃいますか?」
子どもを叱るような口調に、私は思わず息をのんだ。
そうだった……聖女が居ないと、倒すべき魔物に攻撃が通らなくなるんだよね。楽過ぎるし世界が滅びるかもっていう緊迫感は一切ないけど、これは救世の旅で……危機感がなさすぎると言われても無理はない。
「ごめんなさい。すぐに戻ります」
私は慌てて立ち上がろうと思ったんだけど、ジュリアスは逆に私の隣に座って「なんで?」と固まってしまった。
「……ジュリアスにこの世界に残りたいし好きだと告白したら、避けられるようになりました。どうしたら良いでしょう」
「そうですか……私にはそれをどう言って良いのか、わかりませんが……」
深刻な顔をした私に呼び出され、もしかしたらとんでもないことがあったのかと思って居たらしいハミルトンさんは、何十も違う私の恋愛相談を受け目が完全に泳いでしまっている。
「えー! なんでですかー! 私、元の世界に戻るより、それが良いと思ったんですけど!」
好きになったから迫り過ぎて避けられるという、最悪な事態に悶え苦しむしかない。
それまではなるべく私と一緒に居たジュリアスは告白した次の日から、騎士団の人たちと一緒に馬に乗るようになったし、食事の時も姿を見せなくなってしまった。
どう考えても、わかりやすく避けられている。
「まあ、二人の気持ちあっての恋愛ですからね。どちらかが嫌がると、成立しません」
無表情のハミルトンさんは、ごもっともなことを言った。それは確かに、そうなんだけど!
「少しの間……泣いて来て良いですか……」
「ここは安全なので大丈夫だと思いますが、何かあったら大声で呼んでください」
そう言ってハミルトンさんは、今日の野営地の近くにある小さな森を指し示した。
無表情で事務的だけど、彼だって忙しいし団長代理しなきゃいけなくて大変なんだと思う……きっと、薄情ではなくて。
私はハミルトンさんにお礼を言って、森の中で小さな切り株に座り込んだ。
このシチュエーション、落ち込む。泣きそう。好きな人に好きだと言って、避けられた。これって、もう諦めるしかない状況じゃない?
その時に、ふと目に付いた。いくつかより集まって咲いているうちの一輪の枯れた花に、私は目を留めた。
発動条件が少し問題あるせいで、無用の長物になってしまった私の『祝福』だけど、人を若返るなら、枯れた花だって出来るのかな?
私はプツリと枯れた花を取って、ほんの好奇心のつもりでそれに唇を押し当てた。
「っ……わっ」
小さな光が瞬いて、枯れていたはずなのに瑞々しい花へと戻った。やっぱり私の『祝福』は、そういう能力で合っていたみたい。
なんとなく実験するつもりで二回目のキスをしても、それは想像通りの蕾には戻らなかった。
「あれ? どうして? これは……若返るだけって訳じゃ、ないのかな?」
「そのようです」
「わっ……! ど、どうして?」
聞き覚えのある声に振り向けば、私を避けていたはずのジュリアスがすぐ後ろに居た。
「ハミルトンに聞きました。聖女様。申し訳ありませんが、ご自分の御身の尊さを理解していらっしゃいますか?」
子どもを叱るような口調に、私は思わず息をのんだ。
そうだった……聖女が居ないと、倒すべき魔物に攻撃が通らなくなるんだよね。楽過ぎるし世界が滅びるかもっていう緊迫感は一切ないけど、これは救世の旅で……危機感がなさすぎると言われても無理はない。
「ごめんなさい。すぐに戻ります」
私は慌てて立ち上がろうと思ったんだけど、ジュリアスは逆に私の隣に座って「なんで?」と固まってしまった。
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