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04 理由
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「なんと……素晴らしい。なんて、素敵な女性なんだ。ティルダ様……もし、よろしければそちらに行っても?」
……え?
ゴートンには、私の言葉は……そのままで伝わったんだ。
あまりない事態に戸惑いながら私が頷くと、彼は準備動作なく飛び上がり、バルコニーの手すりを乗り越え、私の隣へとやって来た。
すっ……すごい。ゲームの世界補正があるとは言え、ゴートンは素晴らしい運動能力を持っているようだ。
「にっ……忍者?」
「ニンジャ?」
不思議そうに、ゴートンは首を傾げた。
私はこれで、ゴートンには乙女ゲームの強制力が働いていないことを確信した。身のこなしが軽すぎて、忍者に思えるくらい素晴らしい身体能力は置いておいて……。
やっぱり……本来なら伝わらないはずの私の言葉が、ゴートンにはそのまま通じている。
これまでは転生した私が現代日本特有の言葉をうっかり発してしまっても、そのままには取られないし、何かしら変換されて相手には聞こえているようだった。
だから、これもきっとこうなると思って居たんだけど、ゴートンには、私の発した声の音が、そのままで伝わっている。
今までにないことであまりに驚き過ぎて無言で彼の事を見て居たんだけど、ゴートンは私が何か言葉を発するのを待っているようだった。
……そうだ。私には転生してから初めてのことでとても驚いたけど、ゴートンには一切関係ないことだったわ。
「ごっ……ごめんなさい。変なことを言ってしまって。えっと……あんまりにも、そう……貴方が素敵だったから、びっくりしたの」
これは、嘘でもなく紛れもない真実。今まで遠目でしか見たことのないゴートンは、こうして間近で見るとより素敵な男性だった。
「ありがとうございます。光栄です……ティルダ様は、婚約者の王太子殿下とは、あまり上手くいっていないのですか?」
「ええ。アーサー様は、可愛い男爵令嬢に恋をして、彼女に夢中なようなの。けれど、私よりも彼女の方が可愛いし、仕方な……」
ヒロインは女の私から見ても、どこからどう見ても、可愛いという奇跡のビジュアルだ。乙女ゲームでイケメンヒーローが入れ食いになってしまっても、何の不思議もない。
「そんなことは、絶対にありません!」
卑屈にも聞こえそうな私の言葉を遮って、それを否定してくれたゴートンに言葉に苦笑してしまった。
ただそれだけなのに、彼の持つ誠実さや優しさが垣間見えて、なんだか嬉しくなった。
そう。転生してから三年、初めてとも言えるくらいにそのままの言葉が通じて、私はとても嬉しくなった。
「ありがとうございます。リッター様は、優しいんですね」
「ティルダ様。僕のことはどうか、ゴートンと……そうですね。殿下との婚約は、このままであれば解消されるんですか? 件の彼女と結婚されるにしても、王家に仕える臣下として現在の婚約者であるティルダ様には誠意ある行動を取っていただきたいと思います」
ゴートン……何なの。こんな出鱈目とも言える乙女ゲームの世界で、すごくまともな人なんだわ……ゲーム展開に必要な会話しかしない周囲より、彼に好感を持ってしまう。
……え?
ゴートンには、私の言葉は……そのままで伝わったんだ。
あまりない事態に戸惑いながら私が頷くと、彼は準備動作なく飛び上がり、バルコニーの手すりを乗り越え、私の隣へとやって来た。
すっ……すごい。ゲームの世界補正があるとは言え、ゴートンは素晴らしい運動能力を持っているようだ。
「にっ……忍者?」
「ニンジャ?」
不思議そうに、ゴートンは首を傾げた。
私はこれで、ゴートンには乙女ゲームの強制力が働いていないことを確信した。身のこなしが軽すぎて、忍者に思えるくらい素晴らしい身体能力は置いておいて……。
やっぱり……本来なら伝わらないはずの私の言葉が、ゴートンにはそのまま通じている。
これまでは転生した私が現代日本特有の言葉をうっかり発してしまっても、そのままには取られないし、何かしら変換されて相手には聞こえているようだった。
だから、これもきっとこうなると思って居たんだけど、ゴートンには、私の発した声の音が、そのままで伝わっている。
今までにないことであまりに驚き過ぎて無言で彼の事を見て居たんだけど、ゴートンは私が何か言葉を発するのを待っているようだった。
……そうだ。私には転生してから初めてのことでとても驚いたけど、ゴートンには一切関係ないことだったわ。
「ごっ……ごめんなさい。変なことを言ってしまって。えっと……あんまりにも、そう……貴方が素敵だったから、びっくりしたの」
これは、嘘でもなく紛れもない真実。今まで遠目でしか見たことのないゴートンは、こうして間近で見るとより素敵な男性だった。
「ありがとうございます。光栄です……ティルダ様は、婚約者の王太子殿下とは、あまり上手くいっていないのですか?」
「ええ。アーサー様は、可愛い男爵令嬢に恋をして、彼女に夢中なようなの。けれど、私よりも彼女の方が可愛いし、仕方な……」
ヒロインは女の私から見ても、どこからどう見ても、可愛いという奇跡のビジュアルだ。乙女ゲームでイケメンヒーローが入れ食いになってしまっても、何の不思議もない。
「そんなことは、絶対にありません!」
卑屈にも聞こえそうな私の言葉を遮って、それを否定してくれたゴートンに言葉に苦笑してしまった。
ただそれだけなのに、彼の持つ誠実さや優しさが垣間見えて、なんだか嬉しくなった。
そう。転生してから三年、初めてとも言えるくらいにそのままの言葉が通じて、私はとても嬉しくなった。
「ありがとうございます。リッター様は、優しいんですね」
「ティルダ様。僕のことはどうか、ゴートンと……そうですね。殿下との婚約は、このままであれば解消されるんですか? 件の彼女と結婚されるにしても、王家に仕える臣下として現在の婚約者であるティルダ様には誠意ある行動を取っていただきたいと思います」
ゴートン……何なの。こんな出鱈目とも言える乙女ゲームの世界で、すごくまともな人なんだわ……ゲーム展開に必要な会話しかしない周囲より、彼に好感を持ってしまう。
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