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06 国外追放
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◇◆◇
「……罪によって、ティルダ・トリエステとは婚約破棄し彼女を貴族の身分剥奪の上、国外追放とする!」
私は婚約者アーサーが言った『国外追放』の言葉を聞いて、ほっと安心して胸を撫で下ろした。良かったわ。だって、そうだったら良いなと思っていた刑だったから。
「殿下のお言葉通り……お受けいたします」
また、この言葉も何か良くない言葉に変換されたのか、周囲からは失笑と嘲笑が聞こえた。
もう良いわ。話した言葉がそのままの意味で通じないなんて、これでもう終わりだもの。悪役令嬢の断罪を以てハッピーエンド。乙女ゲームはすべて終わり。
こういう時のために財産を隠していた場所へ、どうにか移動しないと……。
腐っても貴族令嬢の私は、作法通りお辞儀をして、この場から下がるために背後を振り返った。
……そこに居たのは、あの時以来姿を見なかったゴートン? どうして、彼がここに居るの?
ここまで急ぎ走って来たのか、肩を揺らした彼は荒い息を何度も吐いていた。そして、ゴートンは騎士らしくひざまづき、許しを乞うようにアーサーへと言った。
「お待ちください! アーサー殿下。ティルダ様はそちらの女性を、一度も虐めた事などございません」
「……なんだと?」
「何らかの理解し難い力が働き、ティルダ様の言葉が何故か悪意ある言葉に入れ替わるのです……そんなティルダ様を断罪するなど、殿下のため……いいえ。この国の損失になります。どうか、僕の話を今一度お聞きください」
ゴートンはそう言い、顔を上げた。私へ意味ありげに目配せしたけど、それがどういう意味かわからない。
確かにゴートンにはゲームの強制力は、働いてないようだった。
以前会った時に、私だってそれは思った……けど、ここから彼が何をしようとしているかなんて、全然わからない。
「……何を言っている? リッター卿。お前が父上のお気に入りだろうが、関係ない。そこに居るティルダは何度もこちらに居るか弱き女性を虐め、命の危険にも晒そうとした。許し難い蛮行だ」
アーサーは隣で震えているヒロインの腰を抱き、事態が飲み込めぬまま呆然としている私を指差して言った。
「いいえ。僕は知っているんです。先ほどだって、ティルダ様は粛々と罪の罰を受けると言った。ですが、ここに居る皆さんには、口汚くそちらの彼女を罵り、自分は無実だとみっともなく喚いているように見えた……違いますか?」
「その通りだろう……いや、待て。ティルダの言葉が変換されて聞こえるだと?」
アーサーは頭を押さえて、苦しそうに呻いた。それは、周囲に居る人たちもそうだ。ヒロインだけはガタガタと震えていた。
「……罪によって、ティルダ・トリエステとは婚約破棄し彼女を貴族の身分剥奪の上、国外追放とする!」
私は婚約者アーサーが言った『国外追放』の言葉を聞いて、ほっと安心して胸を撫で下ろした。良かったわ。だって、そうだったら良いなと思っていた刑だったから。
「殿下のお言葉通り……お受けいたします」
また、この言葉も何か良くない言葉に変換されたのか、周囲からは失笑と嘲笑が聞こえた。
もう良いわ。話した言葉がそのままの意味で通じないなんて、これでもう終わりだもの。悪役令嬢の断罪を以てハッピーエンド。乙女ゲームはすべて終わり。
こういう時のために財産を隠していた場所へ、どうにか移動しないと……。
腐っても貴族令嬢の私は、作法通りお辞儀をして、この場から下がるために背後を振り返った。
……そこに居たのは、あの時以来姿を見なかったゴートン? どうして、彼がここに居るの?
ここまで急ぎ走って来たのか、肩を揺らした彼は荒い息を何度も吐いていた。そして、ゴートンは騎士らしくひざまづき、許しを乞うようにアーサーへと言った。
「お待ちください! アーサー殿下。ティルダ様はそちらの女性を、一度も虐めた事などございません」
「……なんだと?」
「何らかの理解し難い力が働き、ティルダ様の言葉が何故か悪意ある言葉に入れ替わるのです……そんなティルダ様を断罪するなど、殿下のため……いいえ。この国の損失になります。どうか、僕の話を今一度お聞きください」
ゴートンはそう言い、顔を上げた。私へ意味ありげに目配せしたけど、それがどういう意味かわからない。
確かにゴートンにはゲームの強制力は、働いてないようだった。
以前会った時に、私だってそれは思った……けど、ここから彼が何をしようとしているかなんて、全然わからない。
「……何を言っている? リッター卿。お前が父上のお気に入りだろうが、関係ない。そこに居るティルダは何度もこちらに居るか弱き女性を虐め、命の危険にも晒そうとした。許し難い蛮行だ」
アーサーは隣で震えているヒロインの腰を抱き、事態が飲み込めぬまま呆然としている私を指差して言った。
「いいえ。僕は知っているんです。先ほどだって、ティルダ様は粛々と罪の罰を受けると言った。ですが、ここに居る皆さんには、口汚くそちらの彼女を罵り、自分は無実だとみっともなく喚いているように見えた……違いますか?」
「その通りだろう……いや、待て。ティルダの言葉が変換されて聞こえるだと?」
アーサーは頭を押さえて、苦しそうに呻いた。それは、周囲に居る人たちもそうだ。ヒロインだけはガタガタと震えていた。
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