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第三章 性欲と嫉妬に汚れた食卓
20 魔王城を出発
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◇◇
寝られないかと思っていた夜は気持ちよく爆睡出来た。それは魔王も同じだったらしく、久々に朝から機嫌良さそうだ。それだけ彼も俺とここから逃げたいのだろう。
俺達はまだ太陽が上がる前に着替えてあの性欲の押し付けみたいな朝食を飛ばす事にする。
魔王城の門が開かれると、冷たく生暖かい風が一気に吹き込んだ。魔物の森を吹き抜けてくるその臭い空気は湿っている。だがやっと二人で遊べるという興奮でそれすらも気持ちよく感じる。
「……未練たらたらだな、お前の部下」
魔王を見送るモンスター達は名残惜しそうに彼を囲んでいる。長くうねる尻尾で彼を拘束しようとする者、足にしがみ付いて泣く者、露骨に彼の性器を最後の機会だからと撫で回す者。彼は彼等全員を強く押し退ける。
「お前、マジでモテモテだよな」
俺は彼を見上げて少し意地悪そうに笑う。
「いっそお前のザーメンを容器に詰めて置いてったらどうだ?」
「……愚か者共はそれすらも汁を滴らせて喜ぶぞ」
魔王は皮肉になっていない答えと一緒に溜息を吐く。足にしがみ付いているモンスター達を無造作に蹴り飛ばす。悲鳴が上がり、骨の折れる音が響く。それでもモンスター達は彼にしがみ付く。
俺はその様子を呆れたように見ながらも、口元にうっすら笑みを浮かべて苛々した様子の彼を見る。
「お前はこれから俺としか遊ばねぇから諦めろって宣言してやろうか?」
「……君が言うと冗談ではなくなってしまうぞ」
――――だったら事実にしちまえばいいんだよ
魔王は無理矢理モンスター達を引き剥がすと俺の背中を押す。
「魔王様ァ……魔王様ァ……ァアァァア」
背後から泣き声が上がったが、俺達はそれを完全に無視する。
「……お前の家は面倒だったな」
「そうだな。だがこれで暫くは帰らないで済む。私は……君と歩いていると気分が凄く良い」
「……俺もだ」
俺は隣の男を見て笑う。
「どっちに向かう?」
「最近近くに廃村になった村がある。そこで異様な気配がするけれど行ってみるか? 面白いかも知れないぞ」
彼が『面白い』と言うのならばそれなりの気配があるのだろう。俺は少し自分の鼓動が速くなるのを感じる。
「だったら寄ってみようぜ」
――――さぁ、俺達の最悪な遊びの始まりだ
◇◇◇
俺達は魔王城の周囲の森を通る細道を歩いている。魔王城を出発したのはまだ数時間前なのに、覆い重なるように生えている木々の隙間から射す光は限られてまるで夕暮れのように暗い。
「そういえばモンスターに襲われたら殺さない方がいいのか?」
「私がいる事に気付かずに襲ってくるような雑魚はいくらでも殺していい。見守ってやろう」
「なんだ、お前は手伝わないのかよ」
「必要か? 腕の自信はどうした、セイン」
彼は目を細めて笑う。
「必要ねぇが大人数だったら面倒なのは変わらねぇだろ」
「私の助けが必要になれば言え。交換条件次第では助けるぞ」
「その交換条件ってのが怖くって余計頼めねぇよ」
「命は取らん」
彼は笑いながら俺の横を歩く。物凄く魔王の掌で転がされている気がして少しムカつく。だがやっとあの城から抜け出し、二人でいられる事が嬉しくってそれすらもそこまで気にならない。転がされていても楽しければそれでいいとも思い始めてきた。
密度の高い森を抜けると寂びて朽ちた村跡へと出る。
所々炭のような残骸が転がり、焼け落ちた家々は骨組みだけ残っている。全てに幾十にも蔦が巻き付いて覆い隠している。
人の気配は感じれない。あるのは黒ずんだ地面と、血と腐臭の入り混じった戦の残り香。
「お前んところの仕業か?」
「下っ端の粋がっている奴等がしそうな事だが……これは人間同士のいざこざだろうな。モンスターの匂いがしない」
「人間もモンスターも結局は同じって事だよな」
俺達は廃村の中を歩く。
「なぁ……『異様な気配』はするか? 俺には分からん」
「私もこれだけ近いと逆に特定しにくい」
「お前もか。……なんか腐ったような匂いはするけどな」
「匂い? やっぱり嗅覚は鋭いな。どっち?」
寝られないかと思っていた夜は気持ちよく爆睡出来た。それは魔王も同じだったらしく、久々に朝から機嫌良さそうだ。それだけ彼も俺とここから逃げたいのだろう。
俺達はまだ太陽が上がる前に着替えてあの性欲の押し付けみたいな朝食を飛ばす事にする。
魔王城の門が開かれると、冷たく生暖かい風が一気に吹き込んだ。魔物の森を吹き抜けてくるその臭い空気は湿っている。だがやっと二人で遊べるという興奮でそれすらも気持ちよく感じる。
「……未練たらたらだな、お前の部下」
魔王を見送るモンスター達は名残惜しそうに彼を囲んでいる。長くうねる尻尾で彼を拘束しようとする者、足にしがみ付いて泣く者、露骨に彼の性器を最後の機会だからと撫で回す者。彼は彼等全員を強く押し退ける。
「お前、マジでモテモテだよな」
俺は彼を見上げて少し意地悪そうに笑う。
「いっそお前のザーメンを容器に詰めて置いてったらどうだ?」
「……愚か者共はそれすらも汁を滴らせて喜ぶぞ」
魔王は皮肉になっていない答えと一緒に溜息を吐く。足にしがみ付いているモンスター達を無造作に蹴り飛ばす。悲鳴が上がり、骨の折れる音が響く。それでもモンスター達は彼にしがみ付く。
俺はその様子を呆れたように見ながらも、口元にうっすら笑みを浮かべて苛々した様子の彼を見る。
「お前はこれから俺としか遊ばねぇから諦めろって宣言してやろうか?」
「……君が言うと冗談ではなくなってしまうぞ」
――――だったら事実にしちまえばいいんだよ
魔王は無理矢理モンスター達を引き剥がすと俺の背中を押す。
「魔王様ァ……魔王様ァ……ァアァァア」
背後から泣き声が上がったが、俺達はそれを完全に無視する。
「……お前の家は面倒だったな」
「そうだな。だがこれで暫くは帰らないで済む。私は……君と歩いていると気分が凄く良い」
「……俺もだ」
俺は隣の男を見て笑う。
「どっちに向かう?」
「最近近くに廃村になった村がある。そこで異様な気配がするけれど行ってみるか? 面白いかも知れないぞ」
彼が『面白い』と言うのならばそれなりの気配があるのだろう。俺は少し自分の鼓動が速くなるのを感じる。
「だったら寄ってみようぜ」
――――さぁ、俺達の最悪な遊びの始まりだ
◇◇◇
俺達は魔王城の周囲の森を通る細道を歩いている。魔王城を出発したのはまだ数時間前なのに、覆い重なるように生えている木々の隙間から射す光は限られてまるで夕暮れのように暗い。
「そういえばモンスターに襲われたら殺さない方がいいのか?」
「私がいる事に気付かずに襲ってくるような雑魚はいくらでも殺していい。見守ってやろう」
「なんだ、お前は手伝わないのかよ」
「必要か? 腕の自信はどうした、セイン」
彼は目を細めて笑う。
「必要ねぇが大人数だったら面倒なのは変わらねぇだろ」
「私の助けが必要になれば言え。交換条件次第では助けるぞ」
「その交換条件ってのが怖くって余計頼めねぇよ」
「命は取らん」
彼は笑いながら俺の横を歩く。物凄く魔王の掌で転がされている気がして少しムカつく。だがやっとあの城から抜け出し、二人でいられる事が嬉しくってそれすらもそこまで気にならない。転がされていても楽しければそれでいいとも思い始めてきた。
密度の高い森を抜けると寂びて朽ちた村跡へと出る。
所々炭のような残骸が転がり、焼け落ちた家々は骨組みだけ残っている。全てに幾十にも蔦が巻き付いて覆い隠している。
人の気配は感じれない。あるのは黒ずんだ地面と、血と腐臭の入り混じった戦の残り香。
「お前んところの仕業か?」
「下っ端の粋がっている奴等がしそうな事だが……これは人間同士のいざこざだろうな。モンスターの匂いがしない」
「人間もモンスターも結局は同じって事だよな」
俺達は廃村の中を歩く。
「なぁ……『異様な気配』はするか? 俺には分からん」
「私もこれだけ近いと逆に特定しにくい」
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「匂い? やっぱり嗅覚は鋭いな。どっち?」
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