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天文18年
第十八話 虫料理と本気の拳
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私ことお市と上洛一行は現在、葛尾城の村上 義清の居城に停泊中。ここは信濃国の北部に位置し、越後に近い。
ちなみに信濃南部は、あの武田信玄の支配地。
敵の敵は味方理論で、現在村上家は長尾家と軽く同盟関係にあるという訳だ。
で、その千代と私が今何をしているかといえば。
「まいり、ましたっ……」
と私は息切れし、その場に尻もちをつく。
木の棒を持って千代に剣の稽古をつけてもらってたんだけど、まあ想像の十倍くらい強かった。
自分が今二歳児なのを差し引いて、更に手加減までされてても全然勝てる気がしない。
「でも筋は悪くないでござるよ。
今から鍛えれば、拙者の年ぐらいにはそこそこ強くなってるでござる」
うう、お世辞かどうか分からないけど、まあ頑張るよ。
「さて、そろそろ朝餉が出来てる頃でござるよ」
信濃は米をはじめとする作物が育ちにくく、なので食べ物は主食蕎麦、そして貴重なタンパク質摂取は……虫料理。
※注:日本の肉食文化は明治以降で、戦国時代は仏教の観点から禁忌だった。
「いやあ、いつ来てもここの食事は美味しいでござるなあ」
バクバク食べる千代とは対照的に、私は箸がほとんど進んでない。
とは言えお腹も空くので、とりあえず蕎麦と蜂蜜をもらっておくが、考えたら凄い組み合わせだな。
「ねーねー銀、プラチナ!」
「どうしましたの、翠玉様?」
ふらっと食卓に入ってくる人間体のエメラルドちゃんに、プラチナちゃんが声をかける。
「君達のお館さま?じきにやってくるよー」
そう言えばこの子、軽い予知能力があったっけ。来るっていつ?
「んー、二、三十年くらい後かなあ」
と言う言葉に私はずっこけた。
だから時間感覚!
もうすぐ来るみたいな雰囲気で言うのやめてくれるかなあ!!
っと……待てよ。
ねえエメラルドちゃん、君の予知能力って短い時間もいけたりする?
「やろうと思えば瞬きの瞬間位までいけるよー」
予想以上に振れ幅大きかった!
でも、それなら。
「チヨ!
ごはんたべたら、もうひとショウブしよう!」
私は千代にそう声をかけるのだった。
「本当に大丈夫でござるか?」
心配そうに尋ねる千代。向かい合う私たち。
私の手には消灯した天叢雲剣、そして千代は愛用の薙刀。
真剣での勝負だから大怪我するって?
そりゃ当たったら痛いだろう、けど!
「ふっ、無策の突進でござるか。
その思い切りは感心するでござるがなっ!」
相手は武器の長さを応用し薙刀で、下からの掬い上げ!
しかし。
ひょい、っと。
2歳児の体の軽さを利用し、紙一重で薙刀の刃の上に乗る。
「なあっ!?」
そりゃ驚くよねえ、薙刀が動く方向を予測でもしてなきゃ出来ない芸当だ。
しかし流石は戦上手、薙刀が封じられたと見るや懐から短刀を取り出して。
ブンッ、ブンッ!
と振り回して攻撃するも、私はそれを全て躱す。
「ふっ、イチも人が悪い……これは翠玉殿の予知能力でござるな」
『そーだよー、大正解』
千代の言葉に答える、エメラルドちゃんこと天叢雲剣。
そう、私はエメラルドちゃんにお願いして相手の太刀筋を予測してるのだ。
どこから来れば分かれば、相手の攻撃なんて……
「……では、拙者も本気でいかせてもらうでござる」
言うなり、千代は短剣を捨てて拳法のような構えをした。
あれこの気迫、ひょっとして怒ってます?
で、でも剣より素手の方が強いとか、ある訳が……
『無理だー』
え?今何とおっしゃいましたエメラルドさん。
『ボクの予測では今から全方位で攻撃が来るよー。
イチの身体能力じゃ逃げられない』
ま・じ・で・す・か!
土下座でもして降参しなk……ぶへらっ!
ちなみに信濃南部は、あの武田信玄の支配地。
敵の敵は味方理論で、現在村上家は長尾家と軽く同盟関係にあるという訳だ。
で、その千代と私が今何をしているかといえば。
「まいり、ましたっ……」
と私は息切れし、その場に尻もちをつく。
木の棒を持って千代に剣の稽古をつけてもらってたんだけど、まあ想像の十倍くらい強かった。
自分が今二歳児なのを差し引いて、更に手加減までされてても全然勝てる気がしない。
「でも筋は悪くないでござるよ。
今から鍛えれば、拙者の年ぐらいにはそこそこ強くなってるでござる」
うう、お世辞かどうか分からないけど、まあ頑張るよ。
「さて、そろそろ朝餉が出来てる頃でござるよ」
信濃は米をはじめとする作物が育ちにくく、なので食べ物は主食蕎麦、そして貴重なタンパク質摂取は……虫料理。
※注:日本の肉食文化は明治以降で、戦国時代は仏教の観点から禁忌だった。
「いやあ、いつ来てもここの食事は美味しいでござるなあ」
バクバク食べる千代とは対照的に、私は箸がほとんど進んでない。
とは言えお腹も空くので、とりあえず蕎麦と蜂蜜をもらっておくが、考えたら凄い組み合わせだな。
「ねーねー銀、プラチナ!」
「どうしましたの、翠玉様?」
ふらっと食卓に入ってくる人間体のエメラルドちゃんに、プラチナちゃんが声をかける。
「君達のお館さま?じきにやってくるよー」
そう言えばこの子、軽い予知能力があったっけ。来るっていつ?
「んー、二、三十年くらい後かなあ」
と言う言葉に私はずっこけた。
だから時間感覚!
もうすぐ来るみたいな雰囲気で言うのやめてくれるかなあ!!
っと……待てよ。
ねえエメラルドちゃん、君の予知能力って短い時間もいけたりする?
「やろうと思えば瞬きの瞬間位までいけるよー」
予想以上に振れ幅大きかった!
でも、それなら。
「チヨ!
ごはんたべたら、もうひとショウブしよう!」
私は千代にそう声をかけるのだった。
「本当に大丈夫でござるか?」
心配そうに尋ねる千代。向かい合う私たち。
私の手には消灯した天叢雲剣、そして千代は愛用の薙刀。
真剣での勝負だから大怪我するって?
そりゃ当たったら痛いだろう、けど!
「ふっ、無策の突進でござるか。
その思い切りは感心するでござるがなっ!」
相手は武器の長さを応用し薙刀で、下からの掬い上げ!
しかし。
ひょい、っと。
2歳児の体の軽さを利用し、紙一重で薙刀の刃の上に乗る。
「なあっ!?」
そりゃ驚くよねえ、薙刀が動く方向を予測でもしてなきゃ出来ない芸当だ。
しかし流石は戦上手、薙刀が封じられたと見るや懐から短刀を取り出して。
ブンッ、ブンッ!
と振り回して攻撃するも、私はそれを全て躱す。
「ふっ、イチも人が悪い……これは翠玉殿の予知能力でござるな」
『そーだよー、大正解』
千代の言葉に答える、エメラルドちゃんこと天叢雲剣。
そう、私はエメラルドちゃんにお願いして相手の太刀筋を予測してるのだ。
どこから来れば分かれば、相手の攻撃なんて……
「……では、拙者も本気でいかせてもらうでござる」
言うなり、千代は短剣を捨てて拳法のような構えをした。
あれこの気迫、ひょっとして怒ってます?
で、でも剣より素手の方が強いとか、ある訳が……
『無理だー』
え?今何とおっしゃいましたエメラルドさん。
『ボクの予測では今から全方位で攻撃が来るよー。
イチの身体能力じゃ逃げられない』
ま・じ・で・す・か!
土下座でもして降参しなk……ぶへらっ!
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