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天文28年

第四十六話 異聞・野呂田の戦い  下巻

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 私はお市。
 学院生徒の浅井 鞠さんに招待されて、今は近江国の野呂田にいる。

 そしてその弟である白豚こと浅井賢政が参戦する合戦の観戦中だ。
 彼の乗る守護豚オークの強さもさる事ながら、兵の動かし方も上手い。
 もうほぼ決着ついたみたいだし、さあ帰ろうかなと思っていたら。

「愛染さま!
 来てると言うなら、なぜ一言かけてくださらない
 水臭いですぞ!」

 あっちゃあ、白豚くんに見つかっちゃったかあ。
 気が付かれる前に、こっそり消えるつもりでいたんだけど。

「で、どうでしたか拙者の活躍は?」

 あーうん、頑張ったんじゃないかな?

「そうでしょう、そうでしょう。
 何しろあの宿敵、六角を追い返したのです。
 いずれは六角側に侵攻していつかは天下を……痛っ」

 煩わしいので蹴りを入れた。

 だから、そういうとこだぞ。
 調子に乗るな、というかうざい。

「あらあら、戦は終わってしまったのですかー」

 不意に背後から声がして振り返ると、なかなかに立派なものをお持ちだが見た目の幼いロリ巨乳の女性が。
 ええと、あなたは?

「はじめましてー。私は北条氏康が娘で今は今川氏真が妻、糸と申しますー」
 今川……って事は駿河からか、遠路はるばるようこそだな。

「尾張に行ったらあなたが外出中と言うのでー、こちらまで会いに来ましたー」

 えっ私のファンてことかな。
 ひょっとして愛染学院に興味が?

「糸はー、ちょっとあなたと1戦交えたいと思いましてー」

 うわそっちかー!

「ふん、愛染様のお手を煩わせるまでもございません」
 と、話に割り込んでくる白豚くん

「この浅井賢政が、お相手しよう」
「ああ、さっきまで戦場で戦ってた人ですねー。
 結構がんばったと思いますけど、私に言わせればまだまだですねー」

 えっあの動きがまだまだ、だって?
 本気で言ってるのかただの挑発なのかは読めないが。

「その減らず口がいつまでも叩けますかな?!」
 
 ほーらプライド高い白豚くんはお怒りだ。
 ズンズンと地響きが立ちそうな足取りで守護豚オークに乗る。

 糸さんはやれやれ、という顔をすると、

「お市さん、守護猫ケットシーを借りますねー」
 と、やはり近くに留めていた私の守護猫に乗り込む。


 そして勝負は一瞬でついた。

「そ、そんな馬鹿な」
 と白豚くんが動揺するが。

 いや私が言いたいよ。さっきまでの勇姿は何だったの。

「さあ、お市さん始めましょうか」

 えーと守護者の勝負なら私が勝てる気しないんですが。
 かと言って私が絡繰人形で戦うのは……

「それなら心配ないですー。糸も用意してますよ、絡繰人形ー」 

 な、ナンデスト!?

「召喚、王大猿キングコング
 糸さんがそういうと、そこには巨大な猿の絡繰人形。
 そしてキラキラした球体を両手に抱えていた。
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