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天正3年

第七十二話 長い物には長い物

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♪どんぐりコロコロ、私はお市ー
 城から逃げたら、さあ大変。

 七尋女房ななひろにょうぼうが出てきて、こんにちはー
 嬢ちゃん一緒に戦闘あそびましょ!

「歌ってる場合じゃないよ、お市!
 しかも何その語呂の悪すぎる替え歌!」

 うんいや、何となくな?
 
 城の主の娘、ええと綾木大方あやぎのおおかた?が妖怪に変化して襲いかかってきた。

 全体的な姿は4歳ぐらいの幼児だが、胴体に対して恐ろしく首が長い。

 そしてその首を極限まで伸ばして、お犬の地獄番犬ケルベロスの三つある口を全て一瞬で紐のように縛って閉じてしまった。
 こうなってしまえば、得意の口からの放出攻撃を繰り出す事が出来ない。

「……!……!」

 地獄番犬はもがいて前足で外そうとするが、ゴムのように首が伸びて外すことが出来ない。
 それどころか鼻も塞がれて息も出来ない有様である。

「!……!!……(ガクッ)」

 お犬はそのまま気を失い、元の人間姿に戻ったのだった。

 うーむ伸びるだけでなく柔らかくもあるのは厄介だが、どうしたら。
 と思っていると。

「ワシを忘れるとは酷いのじゃ!」
 と声がして振り向くと、そこには一匹のしゃべる狐の姿が。
 いやこの狐は……

生駒いこま吉乃きつの?」
 と声をあげる銀ちゃん。

「そうなのじゃ!
 気づいたら豊後から居なくなっていたので慌てて追いかけてきたのじゃ!」

 あーうん色々バタバタしてたし……というかごめん、完全に存在すら忘れてたわ。

「酷いのじゃ!」

 それは後で謝るけど……今それどころじゃ無くて。

「ふむ、確かに苦戦しておるようじゃなが、ワシの敵ではない」

 え、吉乃ならなんとかなるの?

「ワシは化け狐の妖怪変化ぞ!」
 と言うなり、敵の七尋女房そっくりの姿になった。

 これには相手も一瞬怯んだが、すぐに得意の首を伸ばして攻撃して来る。
 それに対して吉乃も同じく首を伸ばし、まるで蛇の格闘のようにお互いの首を巻き付けて……

 しかし数分後、勝負がついた。
 相手の首お化けが痙攣を始め、やがて気を失って人間の、本来の幼女の姿に戻ったからだ。
 吉乃、これは一体?

「ふふん、同じように化けたが一点だけ違うのは、体の表面に痺れ毒を塗布してあったのじゃ」
 ああ毒、それで麻痺して動けなくなったという事か。

「ぐっ、ぐぬぬ」

 おっと相手の城主が悔しそうにしている。毛利の娘に実の娘まで倒されて、もう手札がないのかな?

 じゃあ悪いけどそろそろお暇させてもらう……と思ったその刹那。

 空が暗くなり、強力な殺意。
 そして漆黒の空間に、巨大な二つの目が出現したのだった。
 
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