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外伝
外伝7 鳳翔こと荒塊丸 彼は如何にして女装して愛染学院に通うようになったのか
しおりを挟む▶︎解説者視点
天文28年(西暦1559年)
信長の嫡子で美濃の帰蝶との間に生まれた荒塊丸は11歳になっていて、
4歳になる孫四郎と同じく3歳の貴平次の三人で、剣の稽古の最中。
この二名の苗字は斉藤。
マムシの道三の息子であり母の弟になるため、血縁上は叔父になる。
史実では道三が二人を溺愛する余り、後継者の斉藤義龍と険悪になり「長良川の戦い」において道三は討ち死に、彼らも殺されてしまうのだが。
この改変世界では二人を織田家で引き取っており、荒塊丸と一緒に暮らすうちに意気投合していた。
「参りました」
そう言って荒塊丸は頭を下げる。
目の前には剣豪と名高い塚原卜伝。
彼はお市の設立した愛染学院での武科の先生であるが、荒塊丸たちも時々剣の稽古をつけてもらっている。
「11歳にしてその太刀筋に動体視力、流石はかの織田信長の嫡男といったところか」
と卜伝先生からはお褒めの言葉を貰うが。
「いえっ、お市姉さんに比べたらまだまだです」
と本人の自己評価は低い。
お市は越後の龍の別名を持つ、あの長尾景虎様に直々に稽古を受けており、武器を持たない近接格闘では時に景虎様に勝ってしまう程の実力をつけていると聞く。
先日も近江の浅井賢政どのが無礼を働いたからと、身長差が倍ほどもあり太った巨体を軽く投げ飛ばしたらしい。
「でも荒様は頑張ってると思いますよ」
「そーそー、オレらなんか先生相手に完全に子供扱いだし」
と孫四郎に貴平次。
しかし学院では彼らと同じくらいの歳の子供、お市姉さんの妹のお犬や、明智十兵衛光秀殿の娘の珠子などの幼児組が、朝廷から支給された特殊な搭乗絡繰人形に乗って活躍している。
お市に至っては愛染明王生き写しの専用の巨大絡繰人形で戦場を駆け回っていて、今度は上洛するという話も聞いている。荒塊丸が置いていかれている様な感覚に、少し焦りも感じていた、そんな中。
「なら愛染学院に入ってしまえばいい」
という悪魔の囁きをして来たのは次郎法師。
お市の興した愛染学院の卒業生で、今はお市直属の親衛隊、通称愛染隊で副隊長を務め、人力絡繰人形守護猫にも搭乗している。
「あそこで優秀な成績を出せば自身もつくだろう?」
「あの次郎法師さん。
愛染学校って、確か女学校ですよ?」
問題はそこで、愛染学院は女性の地位向上を目的に作られた学園であり、男子禁制の女性だけの学校である。
「ああ、知ってるよ。
だから君には女になって貰うけど?」
「えっ?いやちょっと待って下さい」
狼狽する荒塊丸。
ようは女装して学院に通えという無茶振りである。
「学院の制服である巫女服も用意してあるぞ?」
「いやだから心の準備が……あーれー!」
かくして彼は鳳翔と名乗り、性別バレ防止に語尾にショウをつけてやがて愛染隊の一角に食い込むまでになる。
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