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天正13年
第九十一話 新政権と五木村事変
しおりを挟むとにもかくにも、豊臣政権は地震対策や大臣の数々の不手際を露呈した事で、窮地に立たされ失脚した。
という事で私、織田お市の甥である織田長雲が政権に再び返り咲き、と思われたのだったが。
此処に来てまさかの伏兵の登場、何とアイドルとしての知名度を武器にクロード徳川が政界に立候補、当選してしまった。
そのまま豊臣党から分裂した野党の支持と、民自党の一部議員も相乗りの形で遂には総理大臣になってしまったのだ。
まあ彼も親になって、世の中を良くしたいと政治に興味を持ったのかと思いきや、さにあらず。
「一夫多妻制が承認されれば、もう浮気を責められる事もない!」
と、かなり私的かつ不純な理由だった!
とは言え、織田一夫多妻の件を除けば概ね我々と政策に大差がないため民自党は徳川と連立政権を組む事が決まった。
そして新たな政権の初仕事は、九州肥後、改め熊本県内の五木村で起きた事変。
最近こちらで不死族の勢いが活発化していると言う情報が入っている 。
五木村、及びその村に隣接する山間の地域、五家庄には少々ややこしい歴史があり、それは鎌倉時代の前、源平合戦の頃まで遡る 。
源氏と平家の権力争いで敗れた平家残党は落人となり各地に逃げ延び、その一つが山間の五家庄で、
それを監視する目的で五木村 には鎌倉幕府から武将が送られ、そのまま定着した。
この地域に伝わる「五木の子守唄」という民謡があり、子守唄と言う題名だが実際は守子唄。
どう違うのかと言うと子守唄は主に子供を寝かしつける為の歌だが、守子唄は子守をする子が自分の不幸な境遇を、自らを慰めるために歌った歌である。
おどま
かんじん
かんじん
あん人たちゃ
よかしゅ
よかしゃ
よかおび
よかきもん
「私は乞食、
あの人達は良い暮らし」
要約するとそんな感じの歌である。
いずれにせよ此処は外界との接触がほとんどなく、隠れて何かの悪巧みをするにはもってこいの場所だったため発覚が遅れたのだった。
さてそんな五木村へは私の他に新たな防衛大臣となった織田長雲、謎の弾正仮面こと兄上信長の他に、
「お久しぶりです、愛染様!」
「やれやれ、不死退治のプロとして、私までが、こーんな田舎にまで駆り出されるとはね」
隣の大分県から年頃の娘になった立花誾千代ちゃんと、相変わらず無駄に尊大な態度を取るキリシタン陰陽師のマノエルが助っ人に来ていたのだった。
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