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53 ハイオークの肉

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 襲撃をかけてきたのは、ハイオークの群れだった。

 オークの上位種であるハイオークは、その戦闘力において普通のオークとは一線を画した存在である。

 何と言っても一番の違いはその知性である。知恵が働くが故に道具を使ったり作戦を駆使してきたりするのだ。

 それほど高度なものではないとは言え、もともと身体能力的には人間を遥かに上回る魔物なのだ。その脅威は推して知るべしである。

「一対一でやりあうなよ!」

 ゴライオの声が飛ぶ。

 冒険者たちは三人一組でハイオークにあたる。ケントはフローリアとセイラと共にチームを組んだ。

「俺が引きつけるから、隙を見て攻撃してくれ!」

 ケントは正面からハイオークに突っ込んでいく。

「ケント!?」

 無謀と思えるアタックにフローリアが悲鳴をあげた。冒険者としては並レベルでしかないケントには荷が重いミッションだと思ったのだ。

 だが、ケントは巧みな回避でハイオークの注意を引きつける。ケントに振り回される格好になったハイオークの背中ががら空きになった。

 その隙を逃さず、フローリアとセイラの斬撃がハイオークを切り裂いた。

「ナイス!   もういっちょいこう!」

 同じようなやり方で更に三体のハイオークを屠ったところで戦闘は終結した。ケントたち、冒険者側の完勝である。

 残敵がいないのを確認して、冒険者たちは矛を収めた。

「もっと苦戦するかと思ったけど、即興のコンビネーションとは思えない動きだったな」

 ゴライオが感心する。ちなみに、ゴライオ自身は単騎で三体を仕留めている。つくづく人間離れしていると衆目の意見は一致した。

「王子、ハイオークの肉って美味いんですか?」

 冒険者の一人が訊いた。

「さて?   扱ったことがないからよくわからんけど、不味いってことはなさそうな気がする」

 オークが普通に美味いのだから、ハイオークなら更に美味いのではないかーーそんな単純な図式が一同の頭に浮かんでいた。

「試してみてもいいけど、飯食ったばかりで大丈夫?」

「今戦ったからな。全然問題ない」

 皆揃ってーーフローリアとセイラも含めーー頷いたので、ケントは苦笑しつつ、解体と調理に取り掛かった。



 待つことしばしーー



「いい匂いが……」

「匂いだけで飯食えそう」

 いやが上にも期待を高める匂いが漂い始め、皆の腹の虫が悲鳴の合唱を奏でる。

 フライパンを振るケントの横に陣取ったフローリアは期待に目を輝かせている。はじめは離れたところにいたのだか、調理が進むにつれ、自ら意識せぬままにケントとの距離を縮めてきていたのだ。

「ーーよし、完成」

 できあがったのは生姜焼き。オークと比較するために、あえてシンプルな料理にしたのだ。

「順番に取りに来て」

 ケントがそう言う前に整然とした行列ができあがっていた。下手な争いを起こしたら食いっぱぐれるのはわかりきっていたので、荒くれ者の冒険者とは思えないほどおとなしく並んでいる。

 言うまでもなく、列の先頭はフローリアであった。

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