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41 対決1

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 騒ぎを聞きつけて外に出てきたフローリアとアリサは共に厳しい表情をしていた。

「ケントから離れなさい」

 言われたアルミナの雰囲気がスッと変わった。

「あんたが泥棒猫ね」

 好戦的な目でアルミナはフローリアを睨みつける。

「わたしとケントの間に割って入ろうったって、そうはいかないわよ」

 それを聞いたフローリアは鼻で笑った。

「やってることが三流だと、言うことまで三流になるのね。もっと気の利いた台詞じゃないと、喧嘩を買う気にもなれないわ」

 アルミナの威嚇などものともしない、更に獰猛な笑みを見せるフローリア。その表情を見て、ケントはフローリアが皇女将軍と呼ばれるほどの武人であることを思い出した。

「…くっ……」

 戦場で鍛えられた威をまともに受けて怯みかけたアルミナだったが、かろうじて踏みとどまった。

「ふん、あんたがどれほどご立派か知らないけどね、あんたがケントの何を知ってるって言うんだい。わたしとケントはお互い誰よりも深いところまで知り合った仲なんだからね。あんたの出る幕なんかどこにもないんだよ!」

「そうよね。あんたがとんでもないアバズレだってことまで教えちゃったもんね」

 アリサもそこに参戦した。

「誰かと思えばアリサじゃない。まさかあんたもケントを狙ってるわけ?   身分を考えなさいよ」

 あからさまな嘲笑を向けられても、アリサは怯まない。

「身分以前に、人としてどうなのよ、あんたは」

 真っ向から叩きつけられた言葉に、アルミナの表情が険しくなる。

「…誰に向かって口きいてるつもり?」

「誰にでも股を開く淫乱女、でしょ?」

 女としての侮蔑に満ちた口調と表情。ついでに深甚なる怒りが込められた言葉に、アルミナは一気に追い詰められる。

「あんたに何がわかるのよ」

「わかるわけないじゃない。元々婚約者だったのに、その座を自分から捨てたのはあんたでしょ。そんなバカが何考えてるかなんて、理解できると思う方がどうかしてるわ」

 アリサの追撃に容赦は欠片もない。ケントの苦悩を間近で見ていたために、元凶たるアルミナを追求する機会を得て、その舌鋒は鋭さを増していく。

「あんたとケントの関係に未来なんてないの。他ならぬあんた自身がそれを捨てたの。出る幕がないのはあんたの方よ!」

 ビシッ、と指を突きつけられ、アルミナは一歩退いた。

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