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45 覚悟
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「…やだよ……」
アルミナは消え入りそうな声で言った。
「そんなこと言わないでよ……」
「変に期待持たせるのも悪いと思うから、はっきり言っとくよーー今後、俺とおまえの未来が交わることはない。もしもこれ以上ちょっかいを出してくるなら、国ごとツブす」
ケントは感情のこもらない声で言った。
「本当はこれでツブしに行くつもりだったけど、アルミナとのケリが着いたから、戦争はやめとく」
「…う…うっ……」
うちひしがれたアルミナだったが、まだ完全に諦めたわけではなかった。一縷の望みにすがって食い下がる。
「あたしが浮気したのがいけなかったの!?」
「…もうやめよう。これ以上話しても不毛なだけだ」
うんざりした口調でケントは言った。追及したところで建設的な話にならないのはわかりきっている。
だが、アルミナは更に食らいついてくる。
「納得できないわ。ケントだって二人と結婚しようとしてるじゃない!」
それを聞いた瞬間、一応表面上は穏やかだったケントの雰囲気が一変した。
「何だと?」
「!?」
肌に突き刺さるような怒気をまともに受けて、アルミナはビクッと肩を震わせた。
続けて怒鳴りあげようとしたケントだったが、頭に血が上り過ぎてしまって言葉が出てこない。
代わりにフローリアとアリサがアルミナの前に進み出た。
「な、何よ……?」
「アルミナさん、あなた、本当に何もわかっていないのね」
つい先ほどまでの攻撃的な口調ではなく、幼児に言い聞かせるような調子でフローリアは言う。
その後をアリサが引き継ぐ。
「アルミナ、何でわたしたちが自分からケントにプロポーズしたかわかる?」
「ふん、自分たちじゃケントにプロポーズしてもらえないと思ったんでしょ」
「そうね。その通りよ」
憎まれ口が正鵠を射ていることには苦笑するしかない。
「でも、念のために言っとくけど、理由はアルミナが考えてるのとは全然違うわよ」
「何だって言うのよ」
「ケントは真面目だからね。わたしたちのどっちかを選ぶってことができなかったんだと思うの。それが煮詰まっていって、どっちも選ばないってなっちゃうのが怖かったから、二人で話し合って、二人ともにもらってもらおうって考えたのよ」
大体合ってるでしょ、とアリサはケントに微笑んだ。
そこまでわかってもらえているなら、ケントには他に何も言うことはなかった。こんな二人に愛してもらった自分の幸運をかみしめるだけだ。
「そこまで真剣に悩んだ自分と、あなたの尻軽な行動を一緒にされたんじゃ、怒るのがあたりまえだと思わない? むしろこれで怒らなかったら、愛想尽かすレベルのヘタレよね」
フローリアの言葉はアルミナよりもケントの心に響いた。結婚の約束をしたからといって、無条件に甘やかすつもりはない。逆に精進を怠るようなら見限ることだってあるからね、という宣言にしか聞こえなかった。
そりゃそうだよな。こんなに素敵な二人を嫁にもらうんだ。一瞬だってヘタレてる暇なんてありゃしねえ。全力で二人を幸せにして見せる。
誓いを新たにするケントであった。
アルミナは消え入りそうな声で言った。
「そんなこと言わないでよ……」
「変に期待持たせるのも悪いと思うから、はっきり言っとくよーー今後、俺とおまえの未来が交わることはない。もしもこれ以上ちょっかいを出してくるなら、国ごとツブす」
ケントは感情のこもらない声で言った。
「本当はこれでツブしに行くつもりだったけど、アルミナとのケリが着いたから、戦争はやめとく」
「…う…うっ……」
うちひしがれたアルミナだったが、まだ完全に諦めたわけではなかった。一縷の望みにすがって食い下がる。
「あたしが浮気したのがいけなかったの!?」
「…もうやめよう。これ以上話しても不毛なだけだ」
うんざりした口調でケントは言った。追及したところで建設的な話にならないのはわかりきっている。
だが、アルミナは更に食らいついてくる。
「納得できないわ。ケントだって二人と結婚しようとしてるじゃない!」
それを聞いた瞬間、一応表面上は穏やかだったケントの雰囲気が一変した。
「何だと?」
「!?」
肌に突き刺さるような怒気をまともに受けて、アルミナはビクッと肩を震わせた。
続けて怒鳴りあげようとしたケントだったが、頭に血が上り過ぎてしまって言葉が出てこない。
代わりにフローリアとアリサがアルミナの前に進み出た。
「な、何よ……?」
「アルミナさん、あなた、本当に何もわかっていないのね」
つい先ほどまでの攻撃的な口調ではなく、幼児に言い聞かせるような調子でフローリアは言う。
その後をアリサが引き継ぐ。
「アルミナ、何でわたしたちが自分からケントにプロポーズしたかわかる?」
「ふん、自分たちじゃケントにプロポーズしてもらえないと思ったんでしょ」
「そうね。その通りよ」
憎まれ口が正鵠を射ていることには苦笑するしかない。
「でも、念のために言っとくけど、理由はアルミナが考えてるのとは全然違うわよ」
「何だって言うのよ」
「ケントは真面目だからね。わたしたちのどっちかを選ぶってことができなかったんだと思うの。それが煮詰まっていって、どっちも選ばないってなっちゃうのが怖かったから、二人で話し合って、二人ともにもらってもらおうって考えたのよ」
大体合ってるでしょ、とアリサはケントに微笑んだ。
そこまでわかってもらえているなら、ケントには他に何も言うことはなかった。こんな二人に愛してもらった自分の幸運をかみしめるだけだ。
「そこまで真剣に悩んだ自分と、あなたの尻軽な行動を一緒にされたんじゃ、怒るのがあたりまえだと思わない? むしろこれで怒らなかったら、愛想尽かすレベルのヘタレよね」
フローリアの言葉はアルミナよりもケントの心に響いた。結婚の約束をしたからといって、無条件に甘やかすつもりはない。逆に精進を怠るようなら見限ることだってあるからね、という宣言にしか聞こえなかった。
そりゃそうだよな。こんなに素敵な二人を嫁にもらうんだ。一瞬だってヘタレてる暇なんてありゃしねえ。全力で二人を幸せにして見せる。
誓いを新たにするケントであった。
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