手のひら

私の手は濡れている

それも真っ赤に濡れている

でも、これは自分の赤ではない

けど、他の人の赤でもない

いや、もしかしたらそうなのかもしれない

赤色に染まっている手のひらはどことなく優しく、そして儚い

誰のために手を赤色に染めたのだろうか?

他の人は知る由もなかった

それもそのはず、私のしていることは他の人には分からない

赤色に染まった手であの人に手を伸ばそうとしたが、届かない距離

近いはずなのに遠い

もう触れられぬあの人の手のひら

暖かい手のひらだった

その温もりだけが私の支えだった

そう、あの人温もりだけが・・・

でも、もう届かない・・・

一夜一夜、涙を流しては隠し、流して隠しをただ虚しく繰り返していた

祈るように願う願いが叶うはずもなく

そうして、時が経ち、ついには終わりを迎える

叶うならあの人の手のひらに触れて温もりを感じたかった

ただ、一言だけつぶやくことしかできなかった

「愛している」

最期の最期でその言葉しか出て来なかった

私はただ深い眠りに堕ちていく・・・

私の手のひらは赤色に染まっている

ただ、優しく、そして儚い

あの人の手のひらの温もりを感じて、私は深い眠りに堕ちていった

目を覚ますとそこには・・・。

〜完〜
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