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反逆

聖騎士クリスとの殺し合い

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「っ!!」


カイとクリスは同時に動き出した。
クリスは身の丈以上の大剣を軽々しく持ち上げ、信じられないほどの瞬足でカイに迫る。


「あら」


が、カイが一直線に向かい、剣を向けるのはクリスではなかった。クリスの後ろにいる聖女アルマに向けてであった。


「!?」


不意を突かれたためか、成すすべもなく呆然として動けないアルマ。そこへカイが頭上から剣を振り降ろす。


バチィン


剣がアルマを捉えたと思った瞬間、カイの剣が見えない何かに弾かれる。


「ちっ」


カイは舌打ちをして、アルマから距離を取る。
カイの剣を弾いたのは、アルマの周囲に展開された魔法障壁であった。ありとあらゆる魔法攻撃や物理攻撃すら遮断する、魔法で作られた鉄壁の防護壁である。


「あらあら♪だめですわねカイ。今はワタクシと最中ですのに、他の女性に色目を向けるだなんて、許されない行為ですわよ?」


悪戯っぽく笑いながら、クリスはアルマの前に立ちはだかる。


「悪いね。俺、ちょっと浮気性なところがあってさ」


クリスのパートナーである聖女アルマは、クリスの怪我を回復させてしまう。以前ハルトに負わせたような致命傷ならば全快は簡単ではないが、多少の切り傷などはほとんど時間を取らせることはない。アルマが健在のままクリスと戦うのはカイにとって圧倒的に不利であるため、カイは最初にアルマを仕留めようとしたのであった。
だが、その狙いを読んでいたクリスはアルマに自身を聖女の魔法の障壁を張って防御しておけと予め指示していたのである。


「別に構いませんわ。浮気は殿方の甲斐性だとワタクシは思ってますもの。けど、今だけはワタクシを見てくださいね?」


クリスがそう言い終えるか終えないかの一瞬のことだった。まるでコマ落としのようなスピードでクリスが再び踏み込み、剣を横なぎに振り回す。


「っ!」


カイは地面スレスレまで体を落とし、クリスの大剣を躱したかと思うと、その体勢から逆袈裟斬りでクリスの体を捉える。


「っっ!!」


カイの剣がクリスの体を切り裂いた・・・が、浅い。クリスは流血しているが、アルマの回復魔法があれば十秒足らずで回復してしまう傷だった。
だからカイは攻撃の手を緩めなかった。返す刀で再びクリスに斬りかかる。


「フフッ」


カイの斬撃はまたもクリスの肌を切り裂くも、まだ浅い。
浅くとも剣で斬られている状況であるにもかかわらず、クリスは興奮冷めやらぬと言わんばかりに口角を上げていた。
楽しくて楽しくて仕方がないと言わんばかりだった。


(変態め)


カイは心の中で詰りながらも、なお攻撃の手を緩めない。
回復手を先に始末できないのであれば、回復出来ないほどまで細切れにしてやれば良い・・・クリスは大剣を素早く扱うが、それでもカイの剣には勝らない。懐にまで入った今となっては、カイが圧倒的に有利であるはずだった。



「!?」


だが、事態は意外な展開を見せた。
カイも予測しなかったことが目の前で起きたのである。
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