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反逆

大混乱

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サンクレア法王城で起きた爆破では怪我人こそ奇跡的に見つかっていないものの、サンクレアの象徴の一つである城がテロされたことで、神都は混乱を極めていた。



「アドル騎士団長!」


カイによる音響ジャックが終わり、混乱の収拾に騎士団が翻弄され始めてからややしてハルトがアドルの元にやってくる。
正装に身を包んだまま額に汗をかき、息を切らしている様子を見て、かなり慌てながらこの場に来たことがわかる。


「おぉ、ハルト。婚約の儀が中止になって残念だったな」


アドルはお道化た調子でそう言うが、ハルトは当然ニコリともしなかった。


「一体どうしたことなんですか!?カイの言っていたことは本当なんですか!!?」


普段温厚な彼からは想像も出来ないほどの凄まじい気迫でアドルに迫る。相当に怒りを感じているのが手に取るようにわかった。
どうやらユーライやクリスのことをハルトに内緒にしていたことを怒っているようだとアドルは察する。


「ユーライ国で前国王軍が攻勢に出たことも・・・クリスのことも・・・全部本当なんですか!?」


鬼気迫るハルトの迫力を前にしても、アドルは平静を保ったままだった。
ふぅと溜め息をつき、そして口を開く。


「報告だけは上がっていた。だが、真偽のほどはまだ確認が取れていなかった。不正確な情報のままでお前に伝えることもないと判断したのだ。間違っている可能性のある情報を無暗に拡散しても、混乱を引き起こすだけだからな。これも以前俺が口を酸っぱくして教えたことだ」


「っ!だからと言って・・・」


アドルの説明にハルトは納得していない様子ではあるが、トーンを落とす。


「ユーライ王軍が反撃に出たことは報告が上がっているが、その後の詳しい状況まではまだ上がってきたおらん。クリスに関してだって同じだ。それこそカイのかく乱である可能性がある」


アドルは嘘をついた。
実際のところはユーライの占領地はほぼ奪還されそうであるし、クリスが音信不通なのは間違いない。クリスは普段から自由気ままで連絡がつかない時があったが、聖女アルマだけは連絡が取られるのがこれまでだった。それが今はないので、クリス達が討たれたというのは恐らく事実なのだろうとアドルは考えていた。
だがそれを今のハルトに話してやることはなかった。直情型のハルトにそれを話したところでややこしくなるだけであるからだ。


「今は神都の混乱を鎮めるのが先だ。ハルト、それはお前の役目でもあるんだぞ」


「えっ?」


アドルはハルトの肩をポンと叩く。


「というより、今の状況ではお前にしかできないことだ」
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