174 / 203
終焉
血を吸う聖剣
しおりを挟む
「あ・・・なんてことを・・・」
ハルトは目を見張った。
女神ラビスの腕がカイの剣によって切り落とされた。
神聖にして絶対なる存在・・・決して不遜などあってはならない存在の者の手を、あろうことか切り落としてしまうなどとはと驚愕する。
しかし同時にそれとは違う戸惑いもあった。
神とは絶対の者。
自分達人間とは比較にならぬ圧倒的な存在であるはずなのに、まさかカイの剣が通じるなどと。
「へぇ、なるほどね。だからか」
カイは自分の剣を見つめると、不敵に笑った。
「おのれ・・・その剣、血を吸っているな?」
ラビスは忌々しそうにカイの持つ聖剣に目をやり、そして僅かに身じろ気をして見せた。
先ほどまで絶対的な自信に満ち溢れていた姿と違い、今はカイの剣を警戒しているようにハルトには見える。
「あぁ。そうしてからここに来るように、と頼まれてはいたんだが、どうやら合点がいった。女神様といえど、聖騎士や聖女の血を吸って力を得たこの聖剣はちっとばかり怖いらしいな?」
ラビスの腕を切ったことで、今度は彼女と入れ替わりでカイに自信がついたのか、カイの態度に僅かに余裕が見られるようになっていた。
「血を・・・吸う?」
ハルトだけが意味がわかっていない。二人は何を言っているのかと。
そんなハルトに対し、カイが親切にも教えてやった。
「俺の聖剣は、聖騎士や聖女、あと聖騎士じゃないが実力者であるアドルの血を吸って力を増幅しているんだよ。お前の自慢の武器が折られたのも、この聖剣が強くなったお陰だ」
「えっ・・・?」
ハルトは折られたラグナロクのことを思い出してハッとする。
打ち合いで呆気なく負けた名剣ラグナロクが折れた瞬間の光景がハルトの頭の中でリフレインした。
「俺がこの『サンクレアの心臓』に来るまでに、どうしてあれこれ策を使ってまでお前以外の脅威を排除し続けてきたと思う?全ては俺の聖剣に血を吸わせ、十分に力をつけさせるためにあったんだ。まぁ、本当の意味でこの意図に気付いたのは、俺もたった今なんだけどな」
カイとて全てはベルスに言われるがままに動いていたに過ぎなかった。
「イリスを助けるため」と言われれば、他に理由など聞くこともなくカイはそれに従った。
「まさか神殺しをしろってなるとはな。イリスを助けてもらわないと元は取れねぇぜ・・・ベルスさんよ」
じりじりとラビスに近づいていくカイ。
ベルスの指令の意味を理解した今でも、あくまで手を引くつもりなどなかった。
恋人を助けるためなら、神を手にかけることなどなんとも思うものでもなかったのだ。
ハルトは目を見張った。
女神ラビスの腕がカイの剣によって切り落とされた。
神聖にして絶対なる存在・・・決して不遜などあってはならない存在の者の手を、あろうことか切り落としてしまうなどとはと驚愕する。
しかし同時にそれとは違う戸惑いもあった。
神とは絶対の者。
自分達人間とは比較にならぬ圧倒的な存在であるはずなのに、まさかカイの剣が通じるなどと。
「へぇ、なるほどね。だからか」
カイは自分の剣を見つめると、不敵に笑った。
「おのれ・・・その剣、血を吸っているな?」
ラビスは忌々しそうにカイの持つ聖剣に目をやり、そして僅かに身じろ気をして見せた。
先ほどまで絶対的な自信に満ち溢れていた姿と違い、今はカイの剣を警戒しているようにハルトには見える。
「あぁ。そうしてからここに来るように、と頼まれてはいたんだが、どうやら合点がいった。女神様といえど、聖騎士や聖女の血を吸って力を得たこの聖剣はちっとばかり怖いらしいな?」
ラビスの腕を切ったことで、今度は彼女と入れ替わりでカイに自信がついたのか、カイの態度に僅かに余裕が見られるようになっていた。
「血を・・・吸う?」
ハルトだけが意味がわかっていない。二人は何を言っているのかと。
そんなハルトに対し、カイが親切にも教えてやった。
「俺の聖剣は、聖騎士や聖女、あと聖騎士じゃないが実力者であるアドルの血を吸って力を増幅しているんだよ。お前の自慢の武器が折られたのも、この聖剣が強くなったお陰だ」
「えっ・・・?」
ハルトは折られたラグナロクのことを思い出してハッとする。
打ち合いで呆気なく負けた名剣ラグナロクが折れた瞬間の光景がハルトの頭の中でリフレインした。
「俺がこの『サンクレアの心臓』に来るまでに、どうしてあれこれ策を使ってまでお前以外の脅威を排除し続けてきたと思う?全ては俺の聖剣に血を吸わせ、十分に力をつけさせるためにあったんだ。まぁ、本当の意味でこの意図に気付いたのは、俺もたった今なんだけどな」
カイとて全てはベルスに言われるがままに動いていたに過ぎなかった。
「イリスを助けるため」と言われれば、他に理由など聞くこともなくカイはそれに従った。
「まさか神殺しをしろってなるとはな。イリスを助けてもらわないと元は取れねぇぜ・・・ベルスさんよ」
じりじりとラビスに近づいていくカイ。
ベルスの指令の意味を理解した今でも、あくまで手を引くつもりなどなかった。
恋人を助けるためなら、神を手にかけることなどなんとも思うものでもなかったのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
60
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる