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第4部 魔王と勇者、家族のために戦う
第2話 魔王と勇者、妹を救出しに向かう
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俺は勇美に言う。
「まず、明らかなのは、このメッセージを送ってきた相手は向こうの世界の人間だということだ。最低でも、向こうの世界の事情に通じていることは間違いない」
「そんなことは分っている!」
ふむ、勇美はかなり焦っているようだな。
妹が浚われたのだから当然だが。
「だから、落ち着けと何度言えば分かるんだ」
「なぜこの状況で落ち着けるんだ。ひかりがっ」
「落ち着くことが、ひかりを救出する第一歩だからだ。思い込みで暴走するのはお前の悪い癖だぞ」
「うっ。すまん」
少しは頭が冷えたらしい。
俺はつづける。
「誘拐犯は俺とお前の正体も知っている」
勇者シレーヌと魔王ベネスに当てたメッセージをこの鏡に送ったのだから当然だろう。
「そして、少なくとも通信の魔法を使えるようだ」
「そんなことは見れば分る」
まあそうだろうな。
「さらに言えば、誘拐犯はそれを隠そうとしていない」
「たしかにそうだな。それで?」
「つまるところ、この誘拐は金銭目的などではない。むしろ、俺とお前……いや、勇者と魔王を呼び出すための行動とだということだ」
「ひかりはそのために利用されたのか!?」
悔しそうにする勇美。
そうだろうな。だが、そう考えるとさらに疑問が出てくる。
「なんだ?」
「俺とお前を呼びつけたいだけならば、なにもひかりを誘拐する必要などないということだ」
「むっ、それはたしかに」
俺たちの正体に気づいていて、俺たちを呼び出したいと言うだけならば、学校帰りに声をかければ良いだけだ。
廃工場とに連れて行くにしても、誘拐なんて手段を使わずにも他に方法がいくらでもあるだろう。
たとえば『元の世界に戻る方法を教えよう』とか言われれば、怪しみつつも俺も勇美もついて行ったかもしれない。
少なくとも、転生のことを知っているとなれば、捨て置くことはできない。
「しかし、それがどうしたんだ?」
「おそらく、このメッセージの主は、俺かお前に……あるいはその両方に思うところがあるんだろうな」
「思うところだと? もってまわった言い方をせずにハッキリ言え」
「……ハッキリとは俺もわからん。だが、想像するに恨みか」
「恨み?」
「勇者と魔王への恨み。それを強く感じるメッセージということだ」
「私たちへの恨み……それが動機でひかりを……」
勇美が両手を握りしめた。
その表情は悔しさに満ちていた。
「私に恨みがあるならば、なぜ私を襲わない!! ひかりは無関係だろうがっ!!」
「俺に言われても困る。いずれにせよ、俺たちがやるべきことは変わらん」
「……なんだ?」
「とうぜん、指定された場所へ向かうことだ」
「罠ではないのか? 今の私たちはただの小学生だぞ。私たちだけで助けられるか疑問だ」
「だったらどうした? 妹が浚われたんだぞ」
「……たしかに、そうだな」
今の俺たちに、魔王や勇者としての力は無い。
だが、それがどうした。
ひかりを助けない理由になどならない!
俺たちは1階に降りて、あかりに「もう1度近所を探してくる」と告げた。
「ちょっと待ちなさい」
「だいじょうぶだから、お母さんは家にいて」
俺はにっこり笑って言った。
大丈夫、ひかりだけは俺たちが絶対に救う。
だから、心配しないでくれ。
俺と勇美は街外れの廃工場へと向かった。
ひかり、絶対にたすけてやるからな。
俺たちは本物の影陽と勇美じゃない。
だが、ひかりは間違いなくあかりと日隠の娘だ。
必ずこの家に連れ帰る。
たとえ、俺たちの身に何があったとしても!!
廃工場の前に立ち、勇美が俺に言った。
「ここだな?」
「ああ。メッセージの住所はここだ。間違いない」
元々なんの工場だったか。
いずれにせよ、10年以上前に潰れたらしい。
入り口の門はさび付いていたが、それでも2人で押すと開けることができた。
「気をつけろよ。どこに罠があるかもわからん」
「ああ。察知魔法が使えればよかったのだが」
非常事態だし、さすがにそろそろ教えてやるか。
「使えるぞ」
「なに? この世界では魔法は使えないだろう」
「この世界でも魔法は使える」
勇美は驚きの表情を浮かべた。
「ばかな。転生初日に……」
「そりゃ、巨大爆破呪文は無理だろうさ。小学生にそんな魔力は無い。だが『光』は発動した。とっくに実験済だ。昼間からなんどか『察知魔法』も使っている」
勇美は驚きの顔を浮かべた。
「ならば何故黙っていた?」
「今はそれどころじゃない。いいから使ってみろ」
「……わかった」
勇美はぶつぶつと呪文を唱え、『察知魔法』を使った。
「どうだ?」
「昔ほど正確にはわからん。だが、あの建物の奥に反応がある」
ふむ、上出来だ。
廃工場の中に反応があるならば、ひかりで間違いないだろう。
「だが、どういうことだ?」
「黙っていたのは悪かったよ。病院の中でいきなり巨大爆破呪文を使うような危険人物に魔法が使えると教える気にはなれなくてな」
俺が言い訳をすると、勇美が「違う」と首を横に振る。
「なに?」
「ひかりの横に、別の反応があるのだ」
「誘拐犯か?」
「そうかもしれないが、察知魔法は知り合い以外には反応しない」
たしかにそうだ。
誘拐犯は俺たちが……少なくとも勇美が知っている相手なのか?
たまたま通りすがっただけの相手の可能性もあるが……
いずれにしても、ひかりの居場所はわかった。
勇美が心配そうに言った。
「ひかりは無事だろうか」
「察知魔法は死者には反応しないはずだ」
「それはそうだが……」
「ならばひかりは生きている。助けに行こう」
「ああ、そうだな。絶対にひかりを助け出して、家に連れ帰る」
俺たちはうなずき合って、ひかりが捕らわれているらしき建物へと歩みを進めた。
「まず、明らかなのは、このメッセージを送ってきた相手は向こうの世界の人間だということだ。最低でも、向こうの世界の事情に通じていることは間違いない」
「そんなことは分っている!」
ふむ、勇美はかなり焦っているようだな。
妹が浚われたのだから当然だが。
「だから、落ち着けと何度言えば分かるんだ」
「なぜこの状況で落ち着けるんだ。ひかりがっ」
「落ち着くことが、ひかりを救出する第一歩だからだ。思い込みで暴走するのはお前の悪い癖だぞ」
「うっ。すまん」
少しは頭が冷えたらしい。
俺はつづける。
「誘拐犯は俺とお前の正体も知っている」
勇者シレーヌと魔王ベネスに当てたメッセージをこの鏡に送ったのだから当然だろう。
「そして、少なくとも通信の魔法を使えるようだ」
「そんなことは見れば分る」
まあそうだろうな。
「さらに言えば、誘拐犯はそれを隠そうとしていない」
「たしかにそうだな。それで?」
「つまるところ、この誘拐は金銭目的などではない。むしろ、俺とお前……いや、勇者と魔王を呼び出すための行動とだということだ」
「ひかりはそのために利用されたのか!?」
悔しそうにする勇美。
そうだろうな。だが、そう考えるとさらに疑問が出てくる。
「なんだ?」
「俺とお前を呼びつけたいだけならば、なにもひかりを誘拐する必要などないということだ」
「むっ、それはたしかに」
俺たちの正体に気づいていて、俺たちを呼び出したいと言うだけならば、学校帰りに声をかければ良いだけだ。
廃工場とに連れて行くにしても、誘拐なんて手段を使わずにも他に方法がいくらでもあるだろう。
たとえば『元の世界に戻る方法を教えよう』とか言われれば、怪しみつつも俺も勇美もついて行ったかもしれない。
少なくとも、転生のことを知っているとなれば、捨て置くことはできない。
「しかし、それがどうしたんだ?」
「おそらく、このメッセージの主は、俺かお前に……あるいはその両方に思うところがあるんだろうな」
「思うところだと? もってまわった言い方をせずにハッキリ言え」
「……ハッキリとは俺もわからん。だが、想像するに恨みか」
「恨み?」
「勇者と魔王への恨み。それを強く感じるメッセージということだ」
「私たちへの恨み……それが動機でひかりを……」
勇美が両手を握りしめた。
その表情は悔しさに満ちていた。
「私に恨みがあるならば、なぜ私を襲わない!! ひかりは無関係だろうがっ!!」
「俺に言われても困る。いずれにせよ、俺たちがやるべきことは変わらん」
「……なんだ?」
「とうぜん、指定された場所へ向かうことだ」
「罠ではないのか? 今の私たちはただの小学生だぞ。私たちだけで助けられるか疑問だ」
「だったらどうした? 妹が浚われたんだぞ」
「……たしかに、そうだな」
今の俺たちに、魔王や勇者としての力は無い。
だが、それがどうした。
ひかりを助けない理由になどならない!
俺たちは1階に降りて、あかりに「もう1度近所を探してくる」と告げた。
「ちょっと待ちなさい」
「だいじょうぶだから、お母さんは家にいて」
俺はにっこり笑って言った。
大丈夫、ひかりだけは俺たちが絶対に救う。
だから、心配しないでくれ。
俺と勇美は街外れの廃工場へと向かった。
ひかり、絶対にたすけてやるからな。
俺たちは本物の影陽と勇美じゃない。
だが、ひかりは間違いなくあかりと日隠の娘だ。
必ずこの家に連れ帰る。
たとえ、俺たちの身に何があったとしても!!
廃工場の前に立ち、勇美が俺に言った。
「ここだな?」
「ああ。メッセージの住所はここだ。間違いない」
元々なんの工場だったか。
いずれにせよ、10年以上前に潰れたらしい。
入り口の門はさび付いていたが、それでも2人で押すと開けることができた。
「気をつけろよ。どこに罠があるかもわからん」
「ああ。察知魔法が使えればよかったのだが」
非常事態だし、さすがにそろそろ教えてやるか。
「使えるぞ」
「なに? この世界では魔法は使えないだろう」
「この世界でも魔法は使える」
勇美は驚きの表情を浮かべた。
「ばかな。転生初日に……」
「そりゃ、巨大爆破呪文は無理だろうさ。小学生にそんな魔力は無い。だが『光』は発動した。とっくに実験済だ。昼間からなんどか『察知魔法』も使っている」
勇美は驚きの顔を浮かべた。
「ならば何故黙っていた?」
「今はそれどころじゃない。いいから使ってみろ」
「……わかった」
勇美はぶつぶつと呪文を唱え、『察知魔法』を使った。
「どうだ?」
「昔ほど正確にはわからん。だが、あの建物の奥に反応がある」
ふむ、上出来だ。
廃工場の中に反応があるならば、ひかりで間違いないだろう。
「だが、どういうことだ?」
「黙っていたのは悪かったよ。病院の中でいきなり巨大爆破呪文を使うような危険人物に魔法が使えると教える気にはなれなくてな」
俺が言い訳をすると、勇美が「違う」と首を横に振る。
「なに?」
「ひかりの横に、別の反応があるのだ」
「誘拐犯か?」
「そうかもしれないが、察知魔法は知り合い以外には反応しない」
たしかにそうだ。
誘拐犯は俺たちが……少なくとも勇美が知っている相手なのか?
たまたま通りすがっただけの相手の可能性もあるが……
いずれにしても、ひかりの居場所はわかった。
勇美が心配そうに言った。
「ひかりは無事だろうか」
「察知魔法は死者には反応しないはずだ」
「それはそうだが……」
「ならばひかりは生きている。助けに行こう」
「ああ、そうだな。絶対にひかりを助け出して、家に連れ帰る」
俺たちはうなずき合って、ひかりが捕らわれているらしき建物へと歩みを進めた。
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