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第一章 離宮の住人
閑話 ノラード5
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リーシャは、すごく優しい。
もっと食べたいと思っていても言えずにいた僕に気づいてくれて、さり気なく足りない量を聞き出してくれた。
作る量がすごく増えて大変だと思うのに、嫌そうな顔をするどころか、僕が満足している姿を見て嬉しそうにしている。
それに、おやつに甘いお菓子まで作ってくれる。
リーシャの手にかかれば、なんだって出来てしまうのだ。
だから、僕は一番好きなお菓子を簡単に当てられてしまうし、美味しい食べ物もあっという間に出来上がる。
魔力がないと言っていたのに、僕なんかよりよっぽど魔法使いみたいだと思った。
ずっと外へ出るのが怖かったけれど、リーシャと一緒なら怖くなかった。
リーシャは、僕が魔力を暴走させても平気だという、不思議な体質だ。でも、だから怖くないんじゃなくて、リーシャがいるだけで僕の心があったかくなるからだ。リーシャと一緒なら、何も怖くない気がした。
僕も、リーシャに何かしてあげたい。
してもらうばっかりじゃなくて、リーシャが僕にしてくれたのと同じだけ、ううん、それ以上に喜んでもらいたい。
でも、なかなか上手くいかない。
リーシャが可愛いと言ったリスを捕まえてあげようかと思ったけど断られてしまったし、そもそも僕にできることは魔法しかない。それだって、本で読んだだけの独学だ。
……やっぱり、魔塔へ行っておくべきだったのかな。
あの時は母上を放って行けないと思っていたけれど、こうしてここに閉じ籠もっているしかないのなら、僕はこれから先もずっと、何もできない奴のままだろう。
……そんなのは嫌だ。
面倒をかけてばかりで何もできない奴のそばに、リーシャがずっといてくれると思うのか?
リーシャは、僕のお世話係をしているのは仕事だからだと言ったじゃないか。
……仕事だったら、いつ辞めてもおかしくないんじゃないか?
そのことに気づいて、サッと血の気が引く。
リーシャは十五歳だと言っていた。
今は僕のお世話係をしているけれど、貴族令嬢ならすでに誰かと婚約しているかもしれない。そして、花嫁修業のために、いつ仕事を辞めてもおかしくないのだ。
リーシャが僕の知らない男の人と寄り添う姿を想像する。
胸の奥からドロドロした感情が溢れてきて、苦しくて腹が立って、相手の男の人を殴り飛ばしてやりたくなった。
……嫌だ。リーシャの隣に、僕じゃない誰かが立つなんて!
そうだ。僕は、ずっとリーシャと一緒にいたい。
でもそれは、お世話をしてほしいからじゃない。
……僕は、リーシャの隣に立ちたいんだ。
聞くのにすごく勇気が必要だったけど、リーシャは今のところ婚約者や恋人はいないらしい。本当に良かった。
「これからも、誰とも婚約しちゃ駄目だよ。リーシャは、ずっと僕と一緒にいるんだからね」
そう言うと、リーシャは笑って承諾してくれた。僕が本気なんだって、考えてもいないような反応だ。
本気だって言いたい。
僕と結婚してほしいって意味だよって。
でも、僕は今のところ、リーシャに面倒をかけてばかりなのだ。リーシャから見れば、僕は幼い庇護対象でしかないことはちゃんとわかってる。今そんなことを言ったって、リーシャを困らせてしまうだけだ。
リーシャには、僕が大きくなるまで待っていてもらわなくちゃ。
僕はまだリーシャより小さいけど、美味しくない野菜だってきちんと食べているから、将来は絶対に大きくなれるはずだ。
……そうしたら、絶対に僕がリーシャと結婚するんだ!
リーシャにも僕を好きになってほしい。
リーシャが頼りに思ってくれる男になりたい。
僕にできることを手伝ったり、リーシャに言われた通り母上に教えてもらっていたマナーを実践したりと頑張っているけれど、こんなことだけでいいのかという焦りが、ずっと胸の中に巣食っている。
そんな時、リーシャが第一王子に絡まれる事件が起こった。
もっと食べたいと思っていても言えずにいた僕に気づいてくれて、さり気なく足りない量を聞き出してくれた。
作る量がすごく増えて大変だと思うのに、嫌そうな顔をするどころか、僕が満足している姿を見て嬉しそうにしている。
それに、おやつに甘いお菓子まで作ってくれる。
リーシャの手にかかれば、なんだって出来てしまうのだ。
だから、僕は一番好きなお菓子を簡単に当てられてしまうし、美味しい食べ物もあっという間に出来上がる。
魔力がないと言っていたのに、僕なんかよりよっぽど魔法使いみたいだと思った。
ずっと外へ出るのが怖かったけれど、リーシャと一緒なら怖くなかった。
リーシャは、僕が魔力を暴走させても平気だという、不思議な体質だ。でも、だから怖くないんじゃなくて、リーシャがいるだけで僕の心があったかくなるからだ。リーシャと一緒なら、何も怖くない気がした。
僕も、リーシャに何かしてあげたい。
してもらうばっかりじゃなくて、リーシャが僕にしてくれたのと同じだけ、ううん、それ以上に喜んでもらいたい。
でも、なかなか上手くいかない。
リーシャが可愛いと言ったリスを捕まえてあげようかと思ったけど断られてしまったし、そもそも僕にできることは魔法しかない。それだって、本で読んだだけの独学だ。
……やっぱり、魔塔へ行っておくべきだったのかな。
あの時は母上を放って行けないと思っていたけれど、こうしてここに閉じ籠もっているしかないのなら、僕はこれから先もずっと、何もできない奴のままだろう。
……そんなのは嫌だ。
面倒をかけてばかりで何もできない奴のそばに、リーシャがずっといてくれると思うのか?
リーシャは、僕のお世話係をしているのは仕事だからだと言ったじゃないか。
……仕事だったら、いつ辞めてもおかしくないんじゃないか?
そのことに気づいて、サッと血の気が引く。
リーシャは十五歳だと言っていた。
今は僕のお世話係をしているけれど、貴族令嬢ならすでに誰かと婚約しているかもしれない。そして、花嫁修業のために、いつ仕事を辞めてもおかしくないのだ。
リーシャが僕の知らない男の人と寄り添う姿を想像する。
胸の奥からドロドロした感情が溢れてきて、苦しくて腹が立って、相手の男の人を殴り飛ばしてやりたくなった。
……嫌だ。リーシャの隣に、僕じゃない誰かが立つなんて!
そうだ。僕は、ずっとリーシャと一緒にいたい。
でもそれは、お世話をしてほしいからじゃない。
……僕は、リーシャの隣に立ちたいんだ。
聞くのにすごく勇気が必要だったけど、リーシャは今のところ婚約者や恋人はいないらしい。本当に良かった。
「これからも、誰とも婚約しちゃ駄目だよ。リーシャは、ずっと僕と一緒にいるんだからね」
そう言うと、リーシャは笑って承諾してくれた。僕が本気なんだって、考えてもいないような反応だ。
本気だって言いたい。
僕と結婚してほしいって意味だよって。
でも、僕は今のところ、リーシャに面倒をかけてばかりなのだ。リーシャから見れば、僕は幼い庇護対象でしかないことはちゃんとわかってる。今そんなことを言ったって、リーシャを困らせてしまうだけだ。
リーシャには、僕が大きくなるまで待っていてもらわなくちゃ。
僕はまだリーシャより小さいけど、美味しくない野菜だってきちんと食べているから、将来は絶対に大きくなれるはずだ。
……そうしたら、絶対に僕がリーシャと結婚するんだ!
リーシャにも僕を好きになってほしい。
リーシャが頼りに思ってくれる男になりたい。
僕にできることを手伝ったり、リーシャに言われた通り母上に教えてもらっていたマナーを実践したりと頑張っているけれど、こんなことだけでいいのかという焦りが、ずっと胸の中に巣食っている。
そんな時、リーシャが第一王子に絡まれる事件が起こった。
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