恋に臆病なままではいられない

pino

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一章 

8.恥ずかしい失態

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 気付くと俺はベッドにいた。あ、俺冬真とお酒飲んでて酔っ払っちゃったんだ。どうやってベッドまで来たのか覚えてないや。
 ぼんやりする頭で直前までの記憶を辿るけど、冬真と楽しくお酒を飲んで話をしていた記憶しかない。まさか記憶が飛ぶ程とは……
 水が飲みたくなって起き上がろうとして、寝返りを打つと、生暖かい何かに触れた。ギョッとしてその生暖かい何かを確認して更にギョッとした。
 なんと、隣に冬真が寝てたんだ!どうして冬真が俺のベッドで寝ているのか分からず混乱していると、更に更にギョッとする事に気付いた。

 な、何で俺全裸なのー!?


「おい!冬真!起きろ!」


 これには冬真を起こして確認しないと気が済まなかった。冬真はちゃんと俺が貸した部屋着を着ていた。何で俺だけ?え、俺酔って服脱いじゃった?もしかして冬真がここにいるのも俺が無理言って一緒に寝てくれてるの?それに、この下半身の違和感は……
 一気に血の気が引くのが分かった。
 もしこんな失態を光ちゃんにでもバラされたら俺は今後酒を飲むのを躊躇うし、もう店で威張る事が出来なくなる!それだけは避けたかった。


「ん……雪さん?」

「あ、冬真!」

「あ……」

「あ?」


 冬真が目を覚ましたから顔を覗き込むと、俺を見て顔を赤くして隠れるように布団を深く被った。
 なんだよその反応はぁ!?ますます何があったのか気になるじゃん!


「おい冬真!一体何があった!それと寒い!俺全裸!」

「ごめんなさいっ!俺、雪さんに何も着せずにっ」


 まだ春先だから深夜にもなると肌寒かった。俺が布団を取られて震えているとバッと起き上がって布団を巻き付けてくれた。
 その時の冬真の顔は気まずそうで、俺とは目を合わせようとしなかった。


「あ、雪さん体調は大丈夫ですか?」

「体調……少し頭が痛いかも。あ、水が飲みたいんだ」

「今持って来ます!服着て待ってて下さい!」

「あ、うん」

 
 バタバタと部屋から出て行く冬真に、俺はよっぽど酷い事をしたのかと内心焦っていた。
 職場の後輩になる男に出会った初日で失態を晒すとか最悪じゃん。冬真があんな顔するとかどんか変態な事しちゃったの俺……
 俺はベッドから手を伸ばして床に散らばる部屋着を取って何とか身に付けて一生懸命冬真と飲んだ後の事を思い出そうとする。
 あ、そうだ、俺飲み過ぎて自分じゃ歩けなくなったんだ。確か片付けも冬真がやってくれるとかなんとか言ってたような?そして俺はそのままリビングで寝ようとして……それから?


「雪さん、水持って来ました!」

「あ、サンキュー」

 
 少し思い出して来た所でミネラルウォーターの蓋を開けながら冬真が戻って来た。すぐに俺の側に来て差し出して来る。
 目が合うと、恥ずかしそうに逸らされた。
 だから俺何したの!?


「冬真、正直に言ってな?俺、お前に何した?」

「それは……」

「それは?」


 ますます恥ずかしそうに頬を赤らめて言いにくそうに口籠った。これで俺が何かをしたのは確定したな。やっちまったと落胆してると、冬真は床に両膝と両手を付けて頭を下げた。俗に言う土下座ってやつだ。
 俺は冬真の突然の奇行に驚いて水を吹き出しそうになった。


「雪さんすみませんでした!」

「な、何で冬真が謝るんだ?」

「それは……雪さんに手を出してしまったからです」

「俺に手を出した?」

「え、もしかして覚えてないんですか?」


 ここで冬真が頭を上げて目を丸くして見て来た。
 冬真が俺に手を出したってどう言う事だよ?
 てかその言い方だと、まるで冬真が俺を襲ったような言い方に聞こえるじゃないか。


「うん。自分では歩けないってなったとこまでは覚えてるんだけど、ごめん。何があったのか教えてくれない?」

「それじゃあ知らぬが仏って言葉もありますし……」

「話さないなら不採用にするけど」

「話します!あの、これを聞いても不採用にはしないで下さいね?」

「分かったから早く」


 俺が脅すと冬真は床に正座をしたまま話し始めた。


「まず、ここまで雪さんを運んだのは俺です。雪さんの記憶通りそのままリビングで寝ようとしていたので、立入禁止なのにごめんなさい」

「それはいいよ。それで、何で俺は全裸だったの?」

「ベッドまで運んだら、雪さんに添い寝して欲しいって頼まれたんです。酔ってたしいいのかなと思ったんですけど、断れなくてそこで俺もベッドに入りました」

「マジかよ。で、いつ全裸になったんだ?」

「添い寝中、ずっと雪さんは俺に抱き付いていたんです。そしたら俺……反応しちゃって……それに気付いた雪さんに誘われて……全裸になったのはそこでです。自分で脱いでました」

「…………」


 話を聞いて段々と蘇る曖昧な記憶に俺は言葉を失った。
 確かに酔っ払って気持ち良かったのは思い出した。ベッドで心地良い温もりがあったのも薄っすら覚えている。その後は、えっと……
「雪さん、可愛いです」
 ふとそんなセリフが頭をよぎった。今のは冬真が言った言葉か?思い出して顔が熱くなった。


「あ、嘘……俺……」

「雪さん、本当にごめんなさいっ!もうしません!雪さんの言う事でも酔ってる時の言葉には従いませんから……だから許して下さい」

「いやいや、それが本当なら俺が悪いでしょ……」

「雪さん……」

「冬真、ごめんね。あんなけ偉そうな事言っておいてこんな失態晒すなんて……」


 恥ずかしくて情けなくて、自分の顔に手を当てて隠すようにして謝ると、冬真がベッドに上がって来たのかギシッと軋む音がした。チラッと見ると、目の前に冬真がいて真剣な顔をして俺を見ていた。あれ、冬真ってこんなにかっこよかったっけ?
 俺は恥ずかし過ぎておかしくなりそうになり、布団を被って誤魔化すと、冬真が布団ごと俺を抱きしめた。


「失態だなんて思ってません。俺は自分の意思で雪さんの事を抱きました」

「や、やめろよっ!ますます恥ずかしいじゃん!」

「顔が見たいです。ダメですか?」

「今はダメ……こんな顔見せられないっ」

「分かりました。いつか見せてもらえるようになるまで頑張ります♡」


 俺をギューっとしてくる冬真。
 もう、どんな顔して顔合わせたらいいのか分からないよ。
 
 とにかく、誰かと飲む時は二度と飲み過ぎないようにしようと心に決めた。
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