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一章
10.似合う色
しおりを挟む次の日の木曜日、予定通り冬真が使う物を買い物に来ていた。家具家電は揃ってるから主に服だ。普段着と仕事用のワイシャツとパンツぐらいはある程度揃えて欲しかった。
俺がいつも見てるスーツ屋でワイシャツとパンツを見ていた時だった。俺がこの際だから新しくベストも買おうかと迷っていると、冬真が鏡で自分を見て髪を気にしているのが目に入った。今日は髪を下ろしていて軽くセットしている程度。身に付けているアクセサリーも少なめだった。それでも俺が貸した服を着ているんだけど、冬真が着てるとチャラく見えるのが不思議だ。
「何、髪でも切るの?」
「あ、雪さん。髪色なんですけど、黒に戻そうかなって」
「何で?」
「……気分転換、ですかね?」
少し考えるようにした後に照れながらそう言う冬真。俺は改めて冬真を上から下まで見て昨日見た冬真の運転免許証の写真を思い出す。あんな感じになるのか……
悪くないな。
「いいね♪冬真、黒にして来い♪光ちゃんの知り合いで良い美容師いるから連絡してみるよ」
「本当ですか?ありがとうございます♪雪さんがそう言うなら黒くして来ます♪」
迷っている所に俺が背中を押すと嬉しそうに返事をする冬真。そんな輝くような笑顔で従順な事を言われたら俺の兄心が疼くじゃないか。俺の弟の幼い頃を思い出した。あいつも俺に対してこうだった時もあったんだよなぁ。冬真は同い年なのに、敬語を使って来るし、俺の言う事を良く聞くからか年下だと錯覚してしまう時がある。悪い気はしないけどな。
ホスト時代の行きつけの美容室があるだろうけど、寮に行きたくないぐらいだから俺も世話になっている美容師を紹介しようと光ちゃんにメッセージを入れておく事にした。俺の弟がずっと伸ばしてた長い髪を突然切りたいと言った時に急だったにも関わらず当日に対応してくれた事があったから、運が良ければ早い内にやってもらえるだろう。
「ワイシャツだけど、グレーなんかどうだ?黒髪にしても重くなり過ぎないし、ちょっと大人っぽくてお洒落じゃない?」
「かっこいいですね。雪さんが言うならグレーにします♪」
「よし決まり♪3着ぐらい買って置けば大丈夫でしょ。あとはベストとパンツと靴下とかかな。靴も履きやすいの選ぼうか」
「はい♪あの、この後お昼ご飯食べますよね?ご馳走させて下さい。付き合ってくれたお礼がしたいです」
「そう?じゃあ甘えちゃおうかな♪」
俺が快く答えると、冬真は嬉しそうに笑った。
てか冬真ってお金持ってるのかな。昨日財布を渡された時に長財布を手に持ったけど、そんなに厚みが無かったように見えるけど。さすがに中までは見なかったから冬真のお金事情は分からない。ホストだったならそれなりに持っているんじゃないかな?いや、収入は人にもよるのかな。もしかしたら冬真は全然お金持ってない可能性もある。今回のワイシャツとかは就職祝いとして俺が払おうと思っているけど、給料日までは俺が面倒見てやらなきゃだな。
「冬真、いくらかお金持ってる?」
「はい。さっきコンビニで下ろして来ました」
「あ、ATMね。いつの間にそんな事したの」
「雪さんがトイレ入ってる間です」
「さすがホスト!無駄な瞬間を見せないとか気配り上手~」
「もうホストじゃないです」
ここで冬真が少し不機嫌そうになった。ふーん、前職の事を言われてそんな風になるなんて、ただホストって言われるのが嫌なのか、今の仕事に対してちゃんと向き合っているからか、どちらにせよもう冬真の事をホストって言うのは辞めようか。
もし後者だったなら俺は嬉しいかも♪
結局ここでの支払いは冬真が自分で済ませた。
まぁ就職祝いは正式に社員になってからでも遅くはないしね。なるべく甘えさせないようにしなくちゃいけないから自分で出来る範囲はしてもらおう。
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