恋に臆病なままではいられない

pino

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二章

12.やっぱり光ちゃんだ

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 冬真と別れて一人でマンションに帰ってパソコンを開く。はぁ、やる事やらなきゃ。てか冬真は今使用期間になるのか?そこら辺光ちゃんってズボラだからな~。普通は働く前とかにちゃんと決めるもんじゃないの~?使用期間中は時給になるのかな。相場ってどれぐらいなんだろう。弟に頼む場合は5時間とかで5千円のお小遣い渡してるんだけど、それじゃマズいのかな?うーん、冬真の給料については要相談だなぁ。
 それと一応履歴書も書いてもらおうかな。一応ね。別に学歴とか関係ないけど、雇う側として知っておきたいもんな。趣味とか特技とかさ。
 趣味か~、冬真の趣味って何だろう?第一印象とかだとアクティブなイメージだったけど、結構落ち着いてるとこあるんだよな。ベタに読者とか?あ、意外と買い物とか食べ歩きとかかな。だとしたら嬉しいな♪俺は買い物も食べ歩きも好きだから一緒に楽しめるじゃん♪料理はやらないかな?一緒に出来たら楽しそうだけど、食材を無駄にするのは避けたいからな。
 って俺ってば何冬真の事考えてニヤけてんの!これは仕事だ仕事!従業員の事を知るのも上の者の仕事なのー!


「……初め、冬真は光ちゃんとどんな会話したんだろう?」


 初めと言うのは冬真が店の前で寝ていた時の事だ。俺が店に到着した頃には既にご飯食べてたから、その間に光ちゃんと話して働く事もこのマンションに住む事も決まっていた。一体どんな会話だったのか、もしかしたら光ちゃんになら寮を追い出された理由を話してるかもな。
 俺はスマホを取り出して光ちゃんに電話を掛けてみる。時間は15時過ぎ。この時間なら起きてバイクいじってるか友達と飲みに行ってるかだろう。


『おう雪、どうしたー?』

「あ、冬真のカラーの件ありがとうね~」

『別に俺がやる訳じゃねぇし構わねぇよ』

「ところでさ~、冬真とどんな会話をして雇う事にしたの?」

『どんなって、酷く弱ってたから話聞いてやってたんだよ。聞いてる内に職を失ったとか言い出したからちょうどいいやって声掛けたんだ』

「そのちょうどいいやって何?どうして突然人を雇う気になったの?」

『うーん、半分は店の為。半分はお前の為だよ』

「俺の為?」


 意外な答えが返って来て驚いた。
 一体どう言う事なんだ?俺は新しい人材が欲しいとかねだった事なんてないけど?


『ほらそらが実家戻っただろ?でもまだ戻ったばっかだしどうなるか分からねぇじゃん。お前も離れちまったら気が気じゃねぇんじゃねぇかと思ってよ』


 空と言うのは俺の弟の名前だ。お互い子供の頃から知ってるから、空にとっても光ちゃんは兄貴みたいな存在だ。


「それと新しい人を雇うのがどう関係あるの?」

『人が増えればお前が空に費やす時間も出来るかなってさ』

「光ちゃん……」 


 まさか光ちゃんが俺の事をそこまで考えてくれていたなんて。ううん。光ちゃんはいつでも俺や空の事を見ていて想ってくれているんだよ。知ってるんだ。俺はそれに甘えて好き勝手言ってるだけ。ありがとう光ちゃん。


『今冬真は見習いだから、一人立ち出来るようになったら平日はお前と交互に店に出て貰おうと思ってんだ。月、火、水をローテーションでさ、週末は3人でもいいだろ』

「えっ!そう言う事!?」

『そ!あ、俺が休みたい時は副店長のお前に任せるからよ♪』


 なるほど、俺の休みを増やすって訳か。でもそれって給料に響いて来たりしない?冬真が育てば任せる事は可能だけど、俺がいない間にトラブルあったらどうするの?ズボラな光ちゃんでやり繰り出来るならいいけど、うーん、いろいろ不安は残るなぁ。


『それとさ、そろそろいいんじゃねぇかと思ってよ♪』

「何が?」

『お前も何年も1人でいるの寂しいだろって話♡』

「余計なお世話ですっ!」

『まぁそう言うなって。ワタルが出てってから随分経ってんだし、そろそろ次の恋愛してみるのも有りだろ。恋愛じゃないにしろ、同い年なんだし友達として仲良くなるのもいいんじゃねぇの?ほら、俺には話せない若者同士の話もあるだろ~』

「恋愛って!まさか冬真に何か聞いたの!?」


 俺はふと冬真と飲んだ日の事を思い出して、慌てて聞くと、光ちゃんは知っているのか知らないのか曖昧な事を言っていた。


『さぁな。でも昨日のお前らはいい雰囲気に見えたぜ?たった2日しか過ごしてねぇのに、一晩で何があったんだかね~♪若いって良いね~♪』

「からかうな!話は終わりだ!お疲れ様っ!」


 俺は焦って電話を切る。
 冬真が話したのだとしたらマズいぞ!この先ずっと光ちゃんにからかわれ続けるのなんてゴメンだ!別に冬真とそう言う仲だってバレるのは構わない。問題なのは、俺が酔って全裸になって誘ったって事だよ!もし光ちゃんにバレて、そんでもって弟の空にでも知られでもしたら……

 そして咄嗟に流しちゃったけど、久しぶりにワタルの名前が出たな。東郷ワタルとうごうわたる。俺の元同居人で、元彼の男だ。

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