13 / 76
二章
12.やっぱり光ちゃんだ
しおりを挟む冬真と別れて一人でマンションに帰ってパソコンを開く。はぁ、やる事やらなきゃ。てか冬真は今使用期間になるのか?そこら辺光ちゃんってズボラだからな~。普通は働く前とかにちゃんと決めるもんじゃないの~?使用期間中は時給になるのかな。相場ってどれぐらいなんだろう。弟に頼む場合は5時間とかで5千円のお小遣い渡してるんだけど、それじゃマズいのかな?うーん、冬真の給料については要相談だなぁ。
それと一応履歴書も書いてもらおうかな。一応ね。別に学歴とか関係ないけど、雇う側として知っておきたいもんな。趣味とか特技とかさ。
趣味か~、冬真の趣味って何だろう?第一印象とかだとアクティブなイメージだったけど、結構落ち着いてるとこあるんだよな。ベタに読者とか?あ、意外と買い物とか食べ歩きとかかな。だとしたら嬉しいな♪俺は買い物も食べ歩きも好きだから一緒に楽しめるじゃん♪料理はやらないかな?一緒に出来たら楽しそうだけど、食材を無駄にするのは避けたいからな。
って俺ってば何冬真の事考えてニヤけてんの!これは仕事だ仕事!従業員の事を知るのも上の者の仕事なのー!
「……初め、冬真は光ちゃんとどんな会話したんだろう?」
初めと言うのは冬真が店の前で寝ていた時の事だ。俺が店に到着した頃には既にご飯食べてたから、その間に光ちゃんと話して働く事もこのマンションに住む事も決まっていた。一体どんな会話だったのか、もしかしたら光ちゃんになら寮を追い出された理由を話してるかもな。
俺はスマホを取り出して光ちゃんに電話を掛けてみる。時間は15時過ぎ。この時間なら起きてバイクいじってるか友達と飲みに行ってるかだろう。
『おう雪、どうしたー?』
「あ、冬真のカラーの件ありがとうね~」
『別に俺がやる訳じゃねぇし構わねぇよ』
「ところでさ~、冬真とどんな会話をして雇う事にしたの?」
『どんなって、酷く弱ってたから話聞いてやってたんだよ。聞いてる内に職を失ったとか言い出したからちょうどいいやって声掛けたんだ』
「そのちょうどいいやって何?どうして突然人を雇う気になったの?」
『うーん、半分は店の為。半分はお前の為だよ』
「俺の為?」
意外な答えが返って来て驚いた。
一体どう言う事なんだ?俺は新しい人材が欲しいとかねだった事なんてないけど?
『ほら空が実家戻っただろ?でもまだ戻ったばっかだしどうなるか分からねぇじゃん。お前も離れちまったら気が気じゃねぇんじゃねぇかと思ってよ』
空と言うのは俺の弟の名前だ。お互い子供の頃から知ってるから、空にとっても光ちゃんは兄貴みたいな存在だ。
「それと新しい人を雇うのがどう関係あるの?」
『人が増えればお前が空に費やす時間も出来るかなってさ』
「光ちゃん……」
まさか光ちゃんが俺の事をそこまで考えてくれていたなんて。ううん。光ちゃんはいつでも俺や空の事を見ていて想ってくれているんだよ。知ってるんだ。俺はそれに甘えて好き勝手言ってるだけ。ありがとう光ちゃん。
『今冬真は見習いだから、一人立ち出来るようになったら平日はお前と交互に店に出て貰おうと思ってんだ。月、火、水をローテーションでさ、週末は3人でもいいだろ』
「えっ!そう言う事!?」
『そ!あ、俺が休みたい時は副店長のお前に任せるからよ♪』
なるほど、俺の休みを増やすって訳か。でもそれって給料に響いて来たりしない?冬真が育てば任せる事は可能だけど、俺がいない間にトラブルあったらどうするの?ズボラな光ちゃんでやり繰り出来るならいいけど、うーん、いろいろ不安は残るなぁ。
『それとさ、そろそろいいんじゃねぇかと思ってよ♪』
「何が?」
『お前も何年も1人でいるの寂しいだろって話♡』
「余計なお世話ですっ!」
『まぁそう言うなって。ワタルが出てってから随分経ってんだし、そろそろ次の恋愛してみるのも有りだろ。恋愛じゃないにしろ、同い年なんだし友達として仲良くなるのもいいんじゃねぇの?ほら、俺には話せない若者同士の話もあるだろ~』
「恋愛って!まさか冬真に何か聞いたの!?」
俺はふと冬真と飲んだ日の事を思い出して、慌てて聞くと、光ちゃんは知っているのか知らないのか曖昧な事を言っていた。
『さぁな。でも昨日のお前らはいい雰囲気に見えたぜ?たった2日しか過ごしてねぇのに、一晩で何があったんだかね~♪若いって良いね~♪』
「からかうな!話は終わりだ!お疲れ様っ!」
俺は焦って電話を切る。
冬真が話したのだとしたらマズいぞ!この先ずっと光ちゃんにからかわれ続けるのなんてゴメンだ!別に冬真とそう言う仲だってバレるのは構わない。問題なのは、俺が酔って全裸になって誘ったって事だよ!もし光ちゃんにバレて、そんでもって弟の空にでも知られでもしたら……
そして咄嗟に流しちゃったけど、久しぶりにワタルの名前が出たな。東郷ワタル。俺の元同居人で、元彼の男だ。
0
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
fall~獣のような男がぼくに歓びを教える
乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。
強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。
濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。
※エブリスタで連載していた作品です
忠犬だったはずの後輩が、独占欲を隠さなくなった
ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)
「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」
退職する直前に爪痕を残していった元後輩ワンコは、再会後独占欲を隠さなくて…
商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。
そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。
その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げた。
2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず…
後半甘々です。
すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる