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二章
19.料理の特訓
しおりを挟む火曜日、俺は昼近くに起きた。今週から俺の週休2日制が始まった。光ちゃんとちゃんと話し合った結果、俺は火曜、冬真は月曜、そして定休日の木曜日を除いた水曜日から日曜日までは全員出勤となった。
眠い目を擦ってリビングに行くと、既に起きていた冬真がキッチンで何かをやっていた。この匂いはカレーだな♪料理の特訓でもしてるのかとそーっと覗いて見ると、卵を混ぜている冬真がいた。
「おはよう冬真~。ご飯作ってるのー?」
「おはようございます♪はい♪今日は卵焼きです!もうすぐ出来ますので一緒に食べましょう♪」
「わー♪楽しみ~顔洗ってくるね~」
冬真を正式に店に迎えてから俺がキッチンも出来るようにと料理を教え始めたんだ。とりあえず酒のつまみから教えた。どれも簡単ですぐに出来るような物から教えて、少しずつ出来るようになってもらおうと思ってたんだけど、昼間はこうして自分で調べて特訓してるみたい。昨日も俺が仕事から帰って来たらカレーを作って待っていてくれたんだ。光ちゃんの賄い食べた後だったけど、嬉しくて普通に食べちゃった♪少し濃かったけど、お酒に合うから俺は好きだった。
俺が脱衣所からリビングへ戻ると、テーブルの上に食事の準備が出来ていた。昨日作ってくれたカレーと、軽く焼けた市販のロールパン。そして初挑戦の卵焼き。見事な朝食に俺は感動していた。
「冬真やるじゃん♪パンを選んだ所が良いね♪」
「俺パン派なんです♪カレーは濃かったのでスープカレーにしてみました♪」
「すごーい♪ねぇ食べていい~?」
「はい♪」
「いただきまーす♪まずは卵焼きから~♪」
自分で調べて作ったであろう卵焼き。見た目は一生懸命くるくるしようと頑張ったのが分かるような歪な細長い筒状。焦げている感じが初めてって感じがして可愛いくて俺は機嫌良く一口サイズに切ってパクッと口に入れる。
甘っ!どんなけ砂糖入れたのってぐらいに甘かった。そりゃ焦げるよ。でも、初めて自分で作った卵焼きを食べる俺を見る冬真の顔を見たら……
「甘い卵焼きだぁ♡美味しい♡でもちょっと砂糖使いすぎかな?次はもう少し減らしてみて?それと、少しだけ醤油を使うと甘さが引き立つよ~」
「そうなんですね!俺の家では甘い卵焼きが普通でした。次は醤油も使ってみます!」
「いいね~、俺には実家の味とか無いから羨ましいよ」
俺には物心ついた頃から育児放棄気味だった母親にご飯を作ってもらった記憶なんて無いんだ。だから実家の味を知っていて、それを再現しようとする冬真が新鮮に感じた。
「雪さんはずっと弟さんと2人だったんですか?」
「一応母親って名目の人はいたよ。でもあの人は俺達の事なんて一切見なかったよ。だから光ちゃんちで食べたご飯がお袋の味かな~」
「光児さんてとても面倒見がいいですもんね。親御さんも暖かい人なんだろうなって想像出来ます」
「めちゃくちゃ暖かい人達だよ♪光ちゃんにそっくりなんだから!光ちゃんて兄弟多いんだけど、その兄弟達も面白い人達ばかりでさ~♪」
俺がする話を楽しそうにニコニコ笑いながら聞いている冬真。冬真は弟に拒絶されたって言ってたけど、とても辛かっただろうな。
俺も自分の弟に当時付き合っていたワタルの事は言えなかったもんな。頼りにしてる兄の恋人が男だって知ったらショックを受けるかと思って隠していたんだ。そしたらいつの間にか弟の空も男と付き合っていて、結局ワタルと別れた後に全部話したんだけどね。
正直空が同性と付き合う事は反対だった。自分の経験と比べる訳じゃないけど、俺の知る限り空は異性が恋愛対象だ。中学までは取っ替え引っ替え遊び呆けてたのが気付いたら一人の同性と付き合って夢中になっていた。弟には幸せになってもらいたい。傷付く前に別れて欲しかったんだ。
実際空が傷付いてるのを何度か見てきた。空の恋人にも会った。初めは別れさせる気でいたからいつものように冷たく攻撃的に接していた。そして穏便に別れてもらおうと。空から聞く限り頭が弱い男らしかったから上手く別れさせる事が出来ると思っていたんだ。でも、二人の想い合う気持ちは俺の想像の遥か上だったようで、今でも二人は恋人同士らしい。
俺は世間体って言うより自分の考えで反対したけど、拒絶まではしようとは思わない。
俺は話を変えるように自然と話しを続けた。
「そう言えば今日は光ちゃんと二人で出勤だけど、何かあったらすぐに連絡してよ。心配だからすぐ行けるようにはしておくから」
「ありがとうございます。でもそれだと雪さんの休みの意味がなくなりますよ?」
「元々無かった休みだし、予定も無いから平気だよ。家にいても新メニューとか仕事の事やるだろうし」
「あは、そんなに俺に会いたいんですか?」
「上から言うね~。そうだよ♡この一週間ずっと一緒だったんだし、離れるとか寂しいじゃん」
「雪さん可愛いです♡」
「あ、光ちゃんには言うなよ?俺いじりが激しくなるから」
「了解です♡」
それから二人で片付けをして、冬真の出勤までずっと二人で笑い合って過ごしていた。
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