恋に臆病なままではいられない

pino

文字の大きさ
45 / 76
四章

44.光ちゃんの好きな人2

しおりを挟む

 俺と光ちゃんは店の静まり返ったホールのテーブル席に座ってそのバイトの面接を受けると言う男を待つ事にした。本当に採用するつもりはない。光ちゃんがどんなに気に入っても何かしら理由を見つけて追い返そうと思っている。


「…………」

「よう雪よ」

「?」


 俺が顔だけ向けて反応をすると、俺の隣に座る光ちゃんがテーブルに肘を付いてこちらを見ていた。
 その表情は落ち着いていて、サングラス越しでも優しい目をしているのが分かった。俺の良く知る光ちゃんだった。


「最近のお前、いつもよりピリピリしてね?冬真といる時はあんなにデレデレしてる癖によ」

「仕方ないだろ、冬真の事が可愛いんだから」

「俺は可愛いくないと?」

「光ちゃんのどこに可愛い要素があるんだよ」

「この髭とかぁ?」


 顎髭を触りながらふざけている光ちゃんに、俺は少し苛立ってしまった。
 最近の俺って言うか、光ちゃんが悪いんじゃないか。光ちゃんが俺に隠し事をするような言動を取るから、聞いてもはぐらかされて終わるから、それが寂しく思うんだ。

 俺が何も答えずに俯くと、光ちゃんは俺の頭を撫でて来た。久しぶりに撫でられてちょっと照れてしまった。


「な、なに?」

「俺もお前に頼り過ぎてるのかなってさ、少し反省してんだ」

「いきなりどうしたの?」

「glowは俺がやりたくて始めた店だ。それに手伝うと言って付いて来てくれたのがお前だった。長い付き合いってのもあって俺は嬉しかったんだぜ。弟のような存在のお前とこの店をやっていける事がよ」


 本当にいきなりどうしたんだ?突然昔話を始めた光ちゃんに、訳が分からなくて聞いてるだけしか出来なかった。


「まだ15、6だったのに一生懸命やってくれたな。ありがとうな雪」

「光ちゃん?何が言いたいの?」

「頑張り屋な雪には何でも押し付けちまって悪いと思ってんだよ。本当にすまない。これからも副店長としてやってって欲しいんだ。頼めるか?」

「勿論だよ。でも何で改めてそんな事を聞くんだ?」

「んー、実はよ~。まだ決まった訳じゃねぇんだけど、2号店を出そうかと思っててな?」

「はぁ!?何それ!初耳!」

「これはいつ実現するか分からなかったからお前には話した事がなかったんだ。いや、実現するなんて思ってなかった。俺はずっとこのglow一店舗を細々とやっていければいいって思ってたんだ。だけど状況が変わってな」

「ちょ、ちょっと待ってよ!意味分からな過ぎだからっ」

「何て言やぁいいんだろうなぁ?うーん、あ!まず昨日少し話しただろ?俺に好きな奴がいるとかどうとかって、覚えてるか?」


 話が飛び過ぎててもう何の話をしているのかサッパリだった。
 そりゃ覚えてるよ。だってそれが俺の悩みの種だったんだもん!


「覚えてるよ。でも昨日ははぐらかしたじゃん」

「いや、俺はこういう話って自分の事だと苦手なんだよ。なんつーの?恥ずいだろ」


 恥ずかしいのか光ちゃんは頭を掻きながらガハハと笑った。何だよそれ、ただ照れで俺に話せなかったって事?人の話はちゃんと聞く癖に、光ちゃんてば変な所子供っぽいんだから。
 でも、恥ずかしがる光ちゃんを見ていたらずっと胸にあった不安が無くなった気がした。


「もう~!光ちゃんの照れた姿なんて誰も喜ばないんだから辞めてよな~?恥ずかしがらないで俺にも聞かせてよ♪光ちゃんの恋バナ聞きたい♪」

「そ、そうだよな俺の照れた姿なんてって、お前毒吐きやがったな!まぁその通りだけどよ!てか恋バナとか言うな!俺はもう25だぞっ」

「分かったから、その25歳の好きな人教えて♪」

「雪にはいつかは話すつもりだったんだよ。その好きな奴の名前は良平ってんだけど、この店を立ち上げてからまだ間もない頃に会った男なんだけだどな?」

「そんな人がいたの?どうして俺に話してくれなかったの?」

「それは……そいつがホストだからだよ」

「ホスッ!?ホストォ!?」


 あり得ない!光ちゃんに限って何でホストなんかを好きなんだよ!
 俺は驚きと怒りの入り混じった顔で光ちゃんを見てしまった。それを見て苦笑いする光ちゃん。
 いやいや笑い事じゃないだろ。光ちゃんには悪いけどその恋を応援なんて出来ないよ!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

定時後、指先が覚えている

こさ
BL
職場で長く反目し合ってきた二人。 それでも定時後の時間だけは、少しずつ重なっていく。 触れるはずのなかった指先。 逸らさなかった視線。 何も始まっていないのに、 もう偶然とは呼べなくなった距離。 静かなオフィスでゆっくりと近づいていく、 等身大の社会人BL。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

処理中です...