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四章
44.光ちゃんの好きな人2
しおりを挟む俺と光ちゃんは店の静まり返ったホールのテーブル席に座ってそのバイトの面接を受けると言う男を待つ事にした。本当に採用するつもりはない。光ちゃんがどんなに気に入っても何かしら理由を見つけて追い返そうと思っている。
「…………」
「よう雪よ」
「?」
俺が顔だけ向けて反応をすると、俺の隣に座る光ちゃんがテーブルに肘を付いてこちらを見ていた。
その表情は落ち着いていて、サングラス越しでも優しい目をしているのが分かった。俺の良く知る光ちゃんだった。
「最近のお前、いつもよりピリピリしてね?冬真といる時はあんなにデレデレしてる癖によ」
「仕方ないだろ、冬真の事が可愛いんだから」
「俺は可愛いくないと?」
「光ちゃんのどこに可愛い要素があるんだよ」
「この髭とかぁ?」
顎髭を触りながらふざけている光ちゃんに、俺は少し苛立ってしまった。
最近の俺って言うか、光ちゃんが悪いんじゃないか。光ちゃんが俺に隠し事をするような言動を取るから、聞いてもはぐらかされて終わるから、それが寂しく思うんだ。
俺が何も答えずに俯くと、光ちゃんは俺の頭を撫でて来た。久しぶりに撫でられてちょっと照れてしまった。
「な、なに?」
「俺もお前に頼り過ぎてるのかなってさ、少し反省してんだ」
「いきなりどうしたの?」
「glowは俺がやりたくて始めた店だ。それに手伝うと言って付いて来てくれたのがお前だった。長い付き合いってのもあって俺は嬉しかったんだぜ。弟のような存在のお前とこの店をやっていける事がよ」
本当にいきなりどうしたんだ?突然昔話を始めた光ちゃんに、訳が分からなくて聞いてるだけしか出来なかった。
「まだ15、6だったのに一生懸命やってくれたな。ありがとうな雪」
「光ちゃん?何が言いたいの?」
「頑張り屋な雪には何でも押し付けちまって悪いと思ってんだよ。本当にすまない。これからも副店長としてやってって欲しいんだ。頼めるか?」
「勿論だよ。でも何で改めてそんな事を聞くんだ?」
「んー、実はよ~。まだ決まった訳じゃねぇんだけど、2号店を出そうかと思っててな?」
「はぁ!?何それ!初耳!」
「これはいつ実現するか分からなかったからお前には話した事がなかったんだ。いや、実現するなんて思ってなかった。俺はずっとこのglow一店舗を細々とやっていければいいって思ってたんだ。だけど状況が変わってな」
「ちょ、ちょっと待ってよ!意味分からな過ぎだからっ」
「何て言やぁいいんだろうなぁ?うーん、あ!まず昨日少し話しただろ?俺に好きな奴がいるとかどうとかって、覚えてるか?」
話が飛び過ぎててもう何の話をしているのかサッパリだった。
そりゃ覚えてるよ。だってそれが俺の悩みの種だったんだもん!
「覚えてるよ。でも昨日ははぐらかしたじゃん」
「いや、俺はこういう話って自分の事だと苦手なんだよ。なんつーの?恥ずいだろ」
恥ずかしいのか光ちゃんは頭を掻きながらガハハと笑った。何だよそれ、ただ照れで俺に話せなかったって事?人の話はちゃんと聞く癖に、光ちゃんてば変な所子供っぽいんだから。
でも、恥ずかしがる光ちゃんを見ていたらずっと胸にあった不安が無くなった気がした。
「もう~!光ちゃんの照れた姿なんて誰も喜ばないんだから辞めてよな~?恥ずかしがらないで俺にも聞かせてよ♪光ちゃんの恋バナ聞きたい♪」
「そ、そうだよな俺の照れた姿なんてって、お前毒吐きやがったな!まぁその通りだけどよ!てか恋バナとか言うな!俺はもう25だぞっ」
「分かったから、その25歳の好きな人教えて♪」
「雪にはいつかは話すつもりだったんだよ。その好きな奴の名前は良平ってんだけど、この店を立ち上げてからまだ間もない頃に会った男なんだけだどな?」
「そんな人がいたの?どうして俺に話してくれなかったの?」
「それは……そいつがホストだからだよ」
「ホスッ!?ホストォ!?」
あり得ない!光ちゃんに限って何でホストなんかを好きなんだよ!
俺は驚きと怒りの入り混じった顔で光ちゃんを見てしまった。それを見て苦笑いする光ちゃん。
いやいや笑い事じゃないだろ。光ちゃんには悪いけどその恋を応援なんて出来ないよ!
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