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五章
53.協力してやっていこう
しおりを挟む仕事が終わりマンションに帰った後、俺は着替えもせずにリビングのソファに死んだように倒れ込んだ。
いつもの倍以上疲れたぞ。ワタルの覚えの悪さもだけど、そもそも新人なんて今までいなかったし、仕事を誰かに教えるなんて無かったから慣れない事をして疲れた感じもあった。
冬真は優秀だからすぐに覚えてくれたって言うか、特に細かく教えなくても自然と出来てた?
弟の空が手伝ってくれる時もお酒と料理の提供ぐらいだからすぐに覚えてくれたし。
人に何かを教えるのって大変なんだな……
「雪、お疲れ様。お風呂沸かしたからね」
「冬真~」
ソファの上で天井を見ながらぼんやり考えていたら、冬真が覗き込んで来てニコッと笑った。
俺は甘えるように冬真の顔に手を伸ばしてそのまま引き寄せてキスをする。
あー、癒されるなぁ♪
「ねぇ冬真、今日一緒にお風呂入ろうよ♡」
「ごめん。ワタルくんに教えて欲しい事があるって言われてて」
「ワタルに?何を?」
まさか断られるとは思わなくて、少しムッとして聞くと、冬真は苦笑いを浮かべながら教えてくれた。
「カクテルやお酒の事だよ。どのお酒にはどのつままが合うのかとか知りたいって。ほら明日は光児さんが休みだろ?だから少しでも雪の役に立ちたいから協力して欲しいって頼まれたんだ」
「えー、ワタルがそんな事言ったんだ……」
冬真が嘘をつくとは思えないから俺はそのまま信じる事にした。
ワタルの奴、俺の前ではヘラヘラしてふざけてんなと思ってたけど、冬真にはそんな風に真面目な顔してんだ。
俺が腕を離すと、ソファにもたれるように床に座った。
「ワタルくんは雪だから甘えちゃうんだと思うよ。雪の事が好きだから、一緒にいられて嬉しいからはしゃいでる。そんな風に見えるよ」
「だからって仕事中はダメだろ。はぁ、やっぱり俺が悪かったのか……」
「そうじゃなくて、うーん……ワタルくんは雪を寂しくさせないように気を使っているんだよ。俺よりも雪と光児さんの事を知っているからこそ、雪の気持ちも分かっててあんな風におちゃらけてるんじゃないかな?それは俺には出来ない事だから、ワタルくんは凄いなって思うよ。雪の事もね」
「凄いのは冬真だよ。今日ワタルにいろいろ教えて思ったけど、冬真って何でも出来るんだなって思った。前職が近い物があるとは言え、手が掛からなかったもんな~って。それに、俺って人に物を教えるの向いてないなって思った」
照れ臭くなったから「へへ」とふざけて言うと、冬真が振り向いて笑顔で頭を撫でてくれた。
「俺も一生懸命ですよ。どうしても雪に認めてもらいたくて必死だったんだから。ちょっと提案なんだけど、こうしない?明日からは俺がワタルくんに付いてみるよ。雪に出来ない事は俺がやってみる。俺が出来ない事は雪やワタルくんがやってみる。そうして協力して行けばお互いの欠点や良い所も分かるし、上手く回るかもって思ったんだ」
「冬真がワタルの指導役……」
俺には甘えが出ちゃうのなら他の人ならって事か。実際冬真に仕事の事を聞こうとしてるんだから悪くないかもな。
「出しゃばった事言ってごめんね?雪が反対ならいいから。でも、もう少し俺の事を頼って欲しいと思ってるよ」
「ううん。いいかもなって思った♪冬真ありがとう♪一緒に考えてくれて嬉しい♡」
「雪♡」
ソファの上から冬真の首元に抱き付くと、顔をこちらに向けてキスをしてくれた。
あー、冬真とお風呂入りたかったなぁ♡
でもワタルもやる気あるみたいだし、冬真の事を頼ってるみたいだし、それはちょっと嬉しいかもな。
仕方ないから今日の所はワタルに冬真を譲るか~。
俺は疲れを取る為に今日は一人でお風呂に入り、湯船に入浴剤でも入れてゆっくり浸かる事にした。
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